コロナ禍での「特定技能」「技能実習」に対する特別措置について

在留資格

【監修】

ON行政書士事務所

長江 修

大手新聞社ニュースサイト制作や企業広報を経て行政書士資格を取得し、2017年に東京・上野にてON行政書士事務所を開業。「皆様の暮らしやビジネスの良きパートナー」であることをモットーに、【在留資格の書類作成・申請取次】をはじめ、【建設業許可】【古物商許可】などの各種行政手続き書類作成・申請代理を中心に展開。最近では【持続化給付金】【家賃支援給付金】などコロナ支援制度の対応も多い。また、経歴を活かし【ホームページ制作】など行政書士以外の業務も取り扱う。

2020年1月、中国・武漢を中心に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症。あっという間に世界各国に広がったこのウイルスについて、情報を耳にしない日はありません。日本国内でもその影響は多大であり、経済活動への打撃は計り知れない状態です。

各国が出入国を制限したり、様々な措置を講じているため、外国人人材の受け入れ先企業も対応に追われていることと思います。そこで、「技能実習」や「特定技能」の在留資格に絞り、在留資格自体や在留期間に関して、コロナ禍で取られている特別措置について解説します。(2021年2月21日時点の内容です。詳しい最新情報は、出入国在留監理庁のホームページ等でご確認ください)

新型コロナウイルス感染症の影響

新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、様々な対策が取られています。国によって日本への上陸を拒否したり、検疫を強化しているため、その内容を見てみましょう。

日本への上陸を拒否している国

現在、出入国管理及び難民認定法(入管法)第5条第1項14号に基づいて、以下の国・地域に滞在歴(日本上陸前14日以内)がある外国人は、当分の間「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されています。ただし、給油や乗り継ぎ目的で経由した場合は例外です。(経由地で入国する場合は除く)

◆アジア
インド、インドネシア、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ブータン、マレーシア、ミャンマー、モルディブ

◆欧州
アイスランド、アイルランド、アゼルバイジャン、アルバニア、アルメニア、アンドラ、イタリア、英国、ウクライナ、ウズベキスタン、エストニア、オーストリア、オランダ、カザフスタン、北マケドニア、キプロス、ギリシャ、キルギス、クロアチア、コソボ、サンマリノ、ジョージア、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、タジキスタン、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、バチカン、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベラルーシ、ベルギー、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ポルトガル、マルタ、モナコ、モルドバ、モンテネグロ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルーマニア、ルクセンブルク、ロシア

令和3年2月19日時点 
※北米、中南米、中東、アフリカはここでは記載を割愛。

上記の中でフィリピン、バングラデシュ、ミャンマー、パキスタン、インドネシア、ネパールは、技能実習制度の主な送り出し国であり、特定技能外国人の主な受け入れ対象国です。

検疫の強化

令和3年1月8日の決定に基づいて、出入国時の検疫はさらに強化されています。その内容は主に以下です。(令和3年2月19日時点)

・出国前72時間以内に実施したCOVID-19に関する検査による「陰性」であることの検査証明の提出
・日本入国時の検査も実施
・検疫所長の指定する場所(自宅等)で14日間待機
・入国時に14日間の公共交通機関不使用
・位置情報の保存
・保健所等から位置情報の提示を求められた場合にはこれに応じること

参考:
外務省「新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について」

上記以外にも要件が細かく設定されており、上陸が許可された国からの日本国への入国であっても平時より大変な状況です。

継続が困難となった特定技能外国人や技能実習生への対応

現在、新型コロナウイルス感染症の影響で解雇された特定技能外国人や、実習が継続困難となった技能実習生に対して、特別な措置が取られています。日本国内で仕事ができるよう、出入国在留管理庁が関係省庁と連携し、特定産業分野での再就職の支援をする他、一定の要件下で「特定活動」という在留資格を許可しています。Linkus(リンクス)では、特定活動から特定技能への在留資格変更も対応可能です。ぜひご活用ください。

◆対象者:
新型コロナウイルス感染症の影響により解雇等され,実習が継続困難となった技能実習生,特定技能外国人の他、就労目的の在留資格で就労していたが解雇された外国人、就労予定だったが採用内定取消になった又は教育機関の所定の課程を修了した外国人留学生。(※詳細については最寄りの地方出入国在留管理局に問い合わせが必要です)

特定活動とは

外国人が日本でくらすためには在留資格の取得が必須です。「外交」「芸術」「経営・管理」「技術・人文知識・国際業務」「技能」「特定技能」「技能実習」などがそれに該当します。しかし、外国人が日本で行う活動の中には、既存の在留資格に当てはまらない内容もあります。そのような場合に設定されているのが「特定活動」です。

「特定活動」の例を挙げると、外交官等の家事使用人、ワーキング・ホリデー、インターンシップ、アマチュアスポーツ選手などで、法務大臣が個々の外国人に対して個別に指定する活動です。在留期間は3ヶ月〜5年で、法務大臣が個々に指定する5年を超えない期間とされています。

在留資格変更許可申請の手続きについて

実習が継続困難となった技能実習生だけでなく、「特定技能」として在留中、新型コロナウイルス感染症の影響で解雇等された外国人の方もいらっしゃいます。もともと従事していた特定産業分野とは別の分野で就労を希望する場合で、技能試験の合格が必要なケースもあるでしょう。その際、「特定活動(最大1年・就労可)」への在留資格変更許可申請を行うことができます。

新たな受け入れ企業(この場合も特定技能制度に該当する14分野に限る)との雇用契約が成立した後、所定の書類を揃えて外国人の居住地を管轄する地方出入国在留管理局(支局や出張所を含む)に在留資格「特定活動」への在留資格変更許可申請をします。

◆必要書類:
・在留資格変更許可申請書
・受け入れ企業が作成した説明書
・雇用契約に関する書面(雇用契約書、雇用条件書の写し)
・受け入れ企業が作成した賃金の支払に関する書面
・従前の監理団体等が作成した技能実習生の現況に関する説明書

  ※技能実習を修了し,帰国が困難となった方のみ提出が必要

書面や記載例はこちらのページから閲覧・ダウンロードができます。また、Linkus(リンクス)では、特定活動から特定技能への在留資格変更も対応可能です。ぜひご活用ください。

技能実習生への具体的な対応措置

技能実習生の場合、状況によって受けられる措置が違います。技能実習を終えて母国に帰りたい状態なのか、受検ができず次の段階へ移行できない状態なのかなど、それぞれについて見ていきましょう。

母国への帰国が困難な方

母国への帰国が困難な方の場合、「特定活動(6か月・就労可)」または「特定活動(6か月・就労不可)」への在留資格変更が可能です。(※「特定活動(6か月・就労可)」は,従前と同一の業務(注)で就労を希望する場合に限る)

万が一、従前と同一の業務での受け入れ先が見つからない場合、「従前と同一の業務に関係する業務(技能実習で従事した職種・作業が属する『移行対象職種・作業一覧』の各表内の職種・作業(「7 その他」を除く。))」で就労することも可能とされています。さらに、帰国できない事情が継続している場合は、更新を受けられる措置も取られています。

受検ができず次段階の技能実習へ移行できない方

新型コロナウイルス感染症による影響で技能検定等の受検ができないケースも多くあります。受検ができず次の段階の技能実習に移行できない場合、受検ができるようになるまでの間、「特定活動(4か月・就労可)」への在留資格変更が可能です。ただし、この措置は従前と同一の受入れ機関および業務で就労を希望する方に限られていますのでご注意ください。

新たな実習先が見つからない場合

新型コロナウイルス感染症による影響で実習先であった受け入れ企業の経営が悪化してしまうケースも報告されています。経営難によって技能実習の継続が難しくなった場合、一定の条件を満たす場合に限り、特定産業分野(14分野)で就労が認められる「特定活動(最大1年・就労可)」への在留資格変更が可能です。この場合の一定の条件とは、特定技能外国人の業務に必要な技能を身に付けることを希望するなどです。この措置は、予定されていた技能実習を修了した技能実習生で、母国への帰国が困難な方も対象とされています。

【技能実習2号修了者】「特定技能1号」移行準備が整っていない方

移行準備期間中、「特定活動(4か月・就労可)」への在留資格変更が可能であり、技能実習3号を修了される方もこの対象です。移行のための準備が整っている場合は、特定技能1号への在留資格変更をしましょう。

【技能実習2号修了者】「技能実習3号」へ移行希望される方

「優良な監理団体および実習実施者の下であれば、技能実習3号への在留資格変更が可能」とされています。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響は、世界各国の経済活動に大きな影響を与えています。国内外問わず、従事する内容が変わった方、働き方が変わった方も多くいらっしゃることでしょう。日本の人材不足を解消するための貴重な労働力である特定技能外国人や、日本の技術を習得しに来日している技能実習生も例外ではありません。

母国へ帰りたくても帰れない、技能検定等を受検したくてもできない、受け入れ企業が倒産・経営悪化してしまって解雇されてしまった等、様々な困難も立ちはだかることと思います。特定活動から特定技能への在留資格変更も、Linkus(リンクス)で対応が可能です。ぜひご活用ください。特別措置に関して最新の情報を得ながら、雇用される外国人人材も企業側もベストな状態を模索していくことが大切です。

(2021年2月21日時点の内容です。詳しい最新情報は、出入国在留監理庁のホームページ等でご確認ください)


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