建築板金の技術を一生モノの職能にする「自立」と「共生」の現場―株式会社SEENO

人手不足が深刻化する建設業界において、外国人材を「単なる労働力」ではなく「共に成長するパートナー」として受け入れるにはどうすべきか。外国人スタッフの「自立」を促す独自の教育方針を実践し、高度な専門資格の合格者を輩出した「株式会社SEENO」に、 「特別扱いはしない」という言葉の裏にある、高い志を持った人材を育てるための目標設定の重要性や、日本人スタッフへの意識改革のプロセスを伺いました。代表の言葉から、多文化共生社会におけるこれからの組織のあり方を探ります。

特定技能は「人手不足の解消」ではなく「理念を共有する仲間」の受け入れ

――まずは、御社の事業内容について教えてください。

株式会社SEENOは、1962年に創業し、建築板金を専門に手掛けています。板金というのは薄い鉄板を加工した材料で、当社では主に屋根や外壁といった外から見える部分の板金を手掛けています。

――現在、外国人の従業員の方は何名ほどいらっしゃいますか?

現在は特定技能の外国人が2名います。今後さらに2名入る予定で、計4名になる見込みです。また、以前は、特定技能ではなく技能実習生として3名が在籍していた時期もありました。

技能実習生の受け入れはかなり前から行っていましたが、特定技能の雇用を開始したのは去年からです。

――特定技能の受け入れを始めたきっかけや背景を教えてください。

当社の場合は、「人手不足」ということではなく、理念を共有できる仲間を増やすという観点で特定技能の雇用に踏み切りました。技能実習生の場合は、どうしても「いずれは帰ってしまう」ことが前提になります。しかし、仕事に対してやお客様に対して等、当社の理念を共有できる人材を雇用したいと考えていました。特定技能という形をとることで、一生モノの技術を身につけることになりますし、会社としても仕組みを落とし込みやすいと考えたんです。 特定技能で就労している人たちは志が高い人が多いので、会社の理念を共有しやすい。私たちは「人手不足だから人数を揃える」という要因よりも、共に働く仲間として、理念を共有できる方を雇用したいと考えています。

 また、今後日本でも多文化共生が進んでいくことを前提に、自社でもそこに対応できる体制を作っていきたいという思いもありました。

――そうすると、特定技能の従業員の方には2号を目指してほしいという思いをお持ちなのでしょうか?

特定技能2号を目指してくれるのは理想ですが、それを強要するつもりはありません。それよりも大切にしているのは、日本で働く上での「自分の目的」です。例えば、今いる子たちは「いつか妹を日本に呼びたい」という目標を持っています。私たちが2号取得を強要することはしないですが、その目標をかなえるためには必然的に2号を目指しますよね。面接の時点で、お金のためだけではなく、自分の人生やキャリアを見据えた目標を持っているかどうかを見極めています。目標設定がしっかりしていれば、仕事への向き合い方も変わりますから。


「特別扱いはしない」ことが最大の支援。日常に溶け込む教育と自立の促進

――働く上での目的を非常に重視されているということですね。実際に特定技能制度の活用にあたり、手続きなどで苦労された点はありますか?

正直にお伝えすると、大変なところはありませんでした。技能実習の時のほうが書類や申請が非常に厳しかったので、それに比べれば特定技能は楽だという感覚です。

先ほど、弊社では、10年ほど前から特定技能の前に技能実習の受け入れを行っていたことをお話ししました。

その経験があったからこそ、スムーズに対応できています。また、当社の場合は人手不足を理由に雇用を進めていたわけではないので、「とにかく早く来てほしい」と焦っているわけではなく、入国までの待ち時間などもそれほど懸念にはなりませんでした。

――御社からは埼玉県で初の事例として、特定技能外国人従業員の方が建築板金技能士2級に合格されたことを発表されていました。こうした高度な技術を身に着けていくための具体的な教育体制や、日常的な支援について教えてください。

当社では、まず入社した特定技能の方たちと、既存の日本人従業員とが円滑にコミュニケーションができるような関係性づくりを重視しています。現場では危険な作業もありますし、まず信頼の醸成が大事だと考えています。具体的にはシンプルに一緒に食事にいったりですとか、そういったことで気兼ねなくコミュニケーションできるような関係性を作っています。

そこがベースにあるので「サポート」についても特別なことをするというよりは、日常のあらゆる場面に学びを散りばめています。例えば、特定技能の従業員も月1回の会議に参加して積極的に発言してもらうことで、価値観や言葉を自然に学べる場を意識的に作ったりしています。 生活面についても、ゴミの出し方などの最低限のルールは教えますが、基本的には縛りません。現在は日本人のスタッフも同じ寮に住んでいるので、自然と助け合える環境があります。

――ほかにコミュニケーション面で工夫されていることはありますか?

そうですね、工夫というか、当社は外国籍の従業員が日本で自立していけることを重視しています。そこで、日本人スタッフには「彼らに対して日本人と同じ対応をしてください」と伝えています。特別扱いをすることは、逆に彼らの成長の可能性を奪うことにもなりかねません。一人の自立した大人として接し、免許の取得なども含め、自分でできることを増やしていくよう促しています。

従業員の自立を促すうえでも、目標のセットは重視しています。先ほどの建築板金技能士の合格も、この試験に合格するとこういったキャリアを築いていけるという取得の目的を伝えたところから、試験に対するモチベーションも変わった手ごたえがありました。内発的な目標を持つように対話していくことは大事にしています。


日本人スタッフへの意識改革と、切磋琢磨し合える環境づくり

――外国籍の従業員に対して「自立」していけるような働きかけが印象的ですが、受け入れにあたって、社内の環境づくりで意識した点はありますか?

先ほどお話ししたことにも重なりますが、仕事以前のコミュニケーションを大切にすることです。食事などのプライベートな場を意識的に設け、打ち解ける努力をすることが、現場での安全や品質にもつながります。

そして何より重要なのが、外国籍従業員を雇用する前の日本人スタッフへの意識付けです。彼らを受け入れる前に、なぜ外国人を雇用するのかという目的を明確に伝えました。単なる「人数合わせ」だと思わせてしまうと、日本人スタッフの中にリスペクトがなくなってしまい、最悪の場合、摩擦やトラブルに発展してしまいます。

そうではなくて、目的をもって外国籍従業員を雇用し、一緒に働いていくことがこれからの会社の成長においても重要であることを繰り返し伝えました。

――特定技能外国人の雇用を開始して、日本人スタッフの方々に変化はありましたか?

そうですね、最初に雇用を開始するという話をしたときには反発もありました。私自身もプロではないので、「やってみなきゃわからない。課題が出たら改善していこう」と対話を重ねてきました。

 面白いエピソードがあって、昨年、日本人と外国人のスタッフが一緒に技術関連の試験を受けたのですが、外国人は受かって日本人が落ちるということが起きたんです。以前なら「外国人に負けるなんて」と落ち込んだかもしれませんが、今は「外国人」「日本人」という区別なく働いているので「同じ土俵のライバル」として切磋琢磨し合える空気ができています。国籍や年齢に関係なく、技術主義で高め合える環境が構築できているのは良い影響だと感じています。

――最後に、今後の展望と今後、特定技能外国人を雇用する企業へのアドバイスをお聞かせください。

将来的には、特定技能の従業員も1つの現場を任せられる「責任ある立ち位置」まで成長してほしいです。ビジネスパーソンとして一人立ちできるまでになってくれたら最高ですね。 特定技能制度を単なる労働力確保の手段とするのではなく、企業のブランディングや、多様な文化を受け入れられる強い組織作りの機会として有効活用していくことが大切だと思っています。

これから雇用する企業へのアドバイスですが、やはり雇用の前に一緒に働く日本人従業員への働きかけ、目的の共有は重要だと思います。人手不足で外国人でもいいから雇用する、ではなく、どういった目的をもって雇用するのか、なぜ重要なのか、きちんと現場で一緒に働く方たちに浸透させることは大事だと考えています。

技能実習も特定技能も、国が始めた制度ですが、その中でうまくいかなかったり、日本にマイナスな思いを抱えたりして帰国するような方も実際にいて、それは長期的に見て国にとってもマイナスです。そうならないための制度作りも重要ですし、また雇用する我々も視点として持っておくことが大事だと考えています。

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