「まずは1人から」が大きな成長へ。柔軟な対応を可能にする支援体制で特定技能社員のポテンシャルを最大化する「株式会社INGS」

「まずは1人を採用してみる」という一歩から始まった、株式会社INGSの特定技能外国人雇用 。現在は社員全体の約25%、主軸であるラーメン事業部では30%を超える外国籍社員が活躍しています 。(2026年2月現在)

同社が短期間でこれほどの規模拡大を実現できた背景には、徹底した「現場主義」と「共生」の姿勢がありました。採用担当1人あたり特定技能1号社員30名という担当上限を設けて伴走する手厚い支援体制や「愛嬌」と「理念」を重んじる独自の採用基準。

取締役人事部長の磯野氏と外国人採用責任者のマルフ氏に、支援業務の内製化に踏み切った理由や、多角的な店舗展開を支える教育・キャリアパスのあり方について詳しく伺いました 。

「まずは1人から」が繋いだ縁。手探りで始まったINGSの外国人採用ストーリー

―― それでは、まずは御社の事業概要について教えてください。

磯野:株式会社INGSは直営店事業と、ライセンス・プロデュース事業というフランチャイズに近い形態による飲食事業を展開しています。現在直営店は一都三県を中心に79店舗あります。内訳としては、ラーメン事業部が42店舗、レストラン事業部が37店舗という形です。

プロデュース・ライセンス店舗に関しては、一都三県に限らず全国各地に展開しておりまして、ラーメン事業部とレストラン事業部の2本の柱を中心に事業展開しております。

―― 多角的にブランドを展開されていますが、特定技能の方が就労されているのは、その中で特定のジャンルでしょうか。それとも幅広く色々な店舗で働いていらっしゃる状況でしょうか。

磯野: 正確な数字でお伝えしますと、現在全体で特定技能の方が1号、2号合わせて97名おります。ラーメン事業部の比重が高く、ラーメンが66名、レストランに31名在籍しています。全社員数が378名ですので、全体バランスとしては大体25%前後ですが、ラーメン単体で見ると30%を少し超えている状況です。

―― ラーメン店で就労される方は、入職時からそれを希望されるのですか。

磯野: 弊社では外国籍・日本国籍を問わず、入社時にラーメン事業部かレストラン事業部かは原則100%選べます。その先のブランドに関しては、ご希望はお伺いしますが、変更になる可能性があるとお伝えしています。ただ、ほぼ希望通りに進めることが多いですね。

―― 幅広いブランドの中で柔軟に活躍されているのですね。特定技能の方の雇用を開始したきっかけや、背景についても教えてください。

磯野:弊社の場合は人手不足の解決策としてではなく、弊社への応募や紹介の中で外国籍の方がいらっしゃったので、「トライアルで1人採用してみましょう」という感じで始まったのがきっかけです。それが2022年ごろのことになります。

そうしてトライアル初期に採用した従業員が、現在副店長になって活躍しています。その方が活躍してくださったので、営業部でも積極的に採用活動を推進していこうという形になり、少しずつ人数が増えていきました。中長期的に割合をこれぐらい増やそうとか、登録支援業務を最初から内製化前提で始めたわけではありませんでした。

当時はまだ特定技能の外食の仕組みも始まってそんなに時が経っておらず、私も知識がなかったのですが、1人目の採用は国外ではなくネパール人の方の国内転職でした。そのため、日本人の方と近いスケジュール感で採用させていただきました。その後、実際に現場でご活躍いただけることが分かったので、そこから少しずつ採用数を拡大していきました。

2023年には特定技能に特化した採用担当をおいて、登録支援業務を内製化し、採用数の上限を設定して、本格的に採用体制を強化していきました。

――御社の場合は特定技能の雇用を開始する前は、外国籍の方はあまり社内にいなかったんですね。

磯野: 数名の学生アルバイトさんが出入りしていた程度ですね。

「採用担当1人に30名まで」が守る現場の体温。内製化で深まるコミュニケーションの質

―― 外国籍人材の雇用自体がゼロベースに近いところからのスタートだったのですね。手続き面やオンボーディングで、開始時に苦労した点や工夫した点はありますか。

磯野: 最初は支援業務を登録支援機関へ委託していたので、手続き関係でそこまで苦戦することはありませんでした。内、国外採用が始まった際に入社時期が読めないことや、内定が決まっていたけれど感染症が見つかって入社がなくなるということはありました。出店計画に合わせていく採用という観点では、少し苦戦したところです。

―― そのあたりは、どのように解消されたのでしょうか。

磯野: 遅れることを前提にスケジュールを設定しています。国籍や国内外でもスケジュールの読みは変わってきます。例えばこの国だと遅れる傾向にあるので、それを踏まえた想定スケジュールを立てるなど、柔軟に対応できる幅を残して仮決定をするようにしています。

―― 現在、支援業務の対応体制はどのようになっていますか。

磯野: 現在は4名のチームで対応しています。97名在籍しているので、支援業務の対応は完全に内製化しており、人事の中に私以外に4名の外国人採用専任のメンバーがおります。インドネシア出身の担当者が2名、ミャンマー出身の担当者が2名という形で採用・及び支援業務をしています。

―― 在留資格の更新だけでなく、日常的な生活支援や教育も含め、どのように対応されていますか。

磯野: 弊社では、採用担当者1名につき30名の特定技能社員を担当する「担当制」にしています。生活オリエンテーションや生活に関する問い合わせへの個別対応に加え、国籍ごとに連絡を取りやすいメッセージアプリを使い、共通の情報提供をその場で行う取り組みもしています。採用人数に合わせて、外国人採用担当を増やしていった形です。

―― 30名を1人の担当という上限は、どのように決められたのですか。

磯野: 実際に採用していった時に、何名ぐらいならいけるかを当社のメンバーに直接確認しました。「これ以上増えるとサポートの質が下がる」というラインが30名でした。少し無理をすれば35名ぐらいまでは不可能ではないですが、サポートの質を担保するためには今の上限設定が適切だと考えています。また、採用担当も増員後、すぐに支援担当を任せられるわけではなく現場研修などもあります。今90名に対して4名いるのは、今後の採用増加を見越して先んじて担当者を増やしたためです。

―― 現場で対応される方々が、30から35名がギリギリだという感覚なのですね。

磯野: そうです。定期面談も年4回行わなければなりません。オンラインでも良いですが、基本的には対面で実施しており、実際に対面で行うと見えるものが全然違います。弊社は登録支援業務を内製化していることを強みにして、密なコミュニケーションを取り、一次情報を取りに行けるので、あえて対面で実施しています。

日常的な連絡も非常に多いです。「シェアハウスで何かが起きた」「何をどこに買いに行けばいいか」といった質問や、病院への同行などもあります。質の高いサポートで対応しきれるのは、当社の中では30から35名ぐらいという判断です。

また、採用担当者は特定技能の30名だけでなく、店舗の店長やマネージャーとも連絡を取ります。店長から質問が来ることも含めると、実務的な連絡をやり取りする人数としては50人以上になります。

外国人採用担当者の専任を検討した当初は、「専任の担当者が1ヶ月を通してやることがあるのか」という議論もありましたが、登録支援業務を中心に研修の構築、空港送迎、引っ越しの立ち会い、病院同行、マニュアルや研修の翻訳・アップデートなど、現地に行く業務や翻訳作業を含めると、やることは意外とあります。

―― この30~35人の支援の対象には、特定技能2号取得者も含まれるのでしょうか。

磯野: 定期面談はしませんが、別途不定期に懇親会の開催を含めて連絡は取っています。また、1号の方が配属される店舗での定期面談時に、同じ店舗にいる2号の方とコミュニケーションを取ったりはしています。弊社の場合、登録支援業務を内製化している分、2号になるまでに継続的に深いコミュニケーションを取っているので、定期面談の実施が無くともエンゲージメントの低下にはつながらない印象です。

――生活面等での支援の他に、2号に合格するためのサポートについても教えてください。

磯野: 大きく分けて2つあります。1つは「資格取得支援制度」という既存の仕組みです。特定技能2号やJLPTのN2やN1の取得に関しては、合格したら一律3万円支給するという仕組みにしています。2号であれば、1回落ちても2回目ぐらいまではその手当の枠内で受験料を賄えますし、1回で受かればお祝いに使ってもらえるようにしています。

もう1つは、月2回、ラーメン事業部長と外国人採用メンバーを中心に、2号取得に向けた勉強会を開催しています。テキストの読み合わせや、わからない日本語の意味の説明、練習問題を作って解くといったシンプルな内容ですが、参加している従業員としていない従業員とでは顕著に合格率が違います。

―― 教育体制を整える際、どのタイミングで方針を決められたのですか。

磯野: 大前提として、現場である営業部がこの方針に共感していることがあります。会社や営業部の方針として「多様な人材の活躍を推進していきたい、活躍してくれるよね」という関係性が構築されていることが前提です。2号の仕組みが始まって割とすぐに、1人目の合格者が出る前から支援制度に取り入れました。合意が取れているからこそ決定が早かったです。

―― そうした、営業部の理解など、日本人従業員の方々に対しては、どのようにアプローチされましたか。

磯野: 私からアプローチをしているのは各責任者や役員のみです。それ以外の組織に対しての説明は、各部長からしてもらっています。人事部からお願いするよりも、所属長が方針をしっかり固めて落とし込む方が、現場の理解が深まると思っているからです。

もちろん、抵抗感を示す従業員も一部いましたが、会社・事業部の方針として「将来的な店舗展開スピードを考えると、外国籍人材の活躍は必須のピースである」という理由も伝えながら落とし込んでいます。

―― 文化的なギャップ、例えば宗教的な習慣などについてはどう調整されていますか。

磯野:個々の文化的背景や価値観については、現場と連携しながら可能な範囲で柔軟に対応しています。入社してくれた外国人材は、みんな日本語や仕事を覚えようと頑張ってくれているということもあり、できる限り要望は汲み取ってあげられるよう、店長やエリアマネージャーが配慮してくれています。

一方で、入社研修では「日本で働く、当社で働くとはどういうことか」ということもしっかり伝えています。挨拶、メモを取る、言葉、文化の違いによるエラーについて、厳しさも含めてかなりしっかり説明します。トラブルが発生するたびにエラーを抽出して次に活かす、ということを繰り返しています。

「国籍という天井」を壊す。愛嬌と理念を武器に、共に目指す500店舗の未来

―― 特定技能人材のキャリアパスや育成方針についてはどのように取り組んでいますか。

磯野: 弊社は国籍で区別・差別を一切していないので、全員共通で入社するからには店長やマネージャーなど管理者を目指していただいています。現在、特定技能人材の副店長が5名いて、今年中には店長を排出できそうな状況です。外国人材だからこのレベル、という天井は作らず、同じ基準をクリアした方は店長になっていただきたいと考えています。

―― 採用時に見ているポイントはありますか。

磯野: 2号を目指しているかどうかはあまり気にしていません。面接に来る方の9割以上は「2号を取りたい、5年で帰るつもりはない」と言いますが、いざ働いてみるとやはり帰国される方もいるので。

採用基準として最重要なのは「日本語のコミュニケーション力」であり、スピーキングとヒアリングを重視しています。やはりここができないと現場が一番ストレスを感じるからです。

次に大事なのが「愛嬌」です。表情や間違えた時のリアクションなど、日本語力と愛嬌があれば、飲食店での経験は問いません。

日本語が喋れなかったり伝わらなかったりする時に、気まずい顔をしたり暗くなったりすると、余計に周りから言われてしまう傾向があると思います。愛嬌があるとそこをカバーできる。N1を持っていてもコミュニケーション能力や愛嬌がない方は落ちることもありますし、逆に愛嬌が素晴らしければ日本語レベルが少し足りなくても合格を出すことがあります。

もう1点は、働く目的が明確であればあるほどいいです。「日本が好きだから」というだけだと動機としては少し弱い印象です。「守る家族がいる」「いつかお店を持ちたい」といった明確な理由がある方は色々な面で強い傾向です。

―― 御社では500店舗への拡大という長期目標を掲げていますが、それは特定技能の方の増加も見込んでの戦略でしょうか。

磯野: 中長期的に500店舗を目指す中で、逆算して外国籍従業員の割合を厳密に決めているわけではありませんが、到達するためには外国人採用と、何より直近の課題である「教育」が必須になってくるイメージです。

―― 管理職やリーダーの人数については、具体的な目標割合などはありますか。

磯野: 結論としてあまりありません。女性活躍などと同じで、「管理職をその枠の中から作ろう」とすると目的がずれてしまう気がします。あくまで同じ条件で評価し、当てはまる人材がいればどんどん上げていく方針です。「1人は店長を排出したいよね」という想いはありますが、何名・何割といった数字は決めていません。

―― 2022年から現在まで、外国籍従業員が大きく増えていますが、外国籍従業員のキャリアとして、次のステップをどのように考えていますか?

磯野: 店舗業務を切り分けた時に、事務作業や「日本人のマネジメント」はやはり時間がかかると感じています。そのため、まだ特定技能の方だけで一店舗を任せるまでには至っていません。

また、「理念の共感と伝達」がハードルになります。弊社ではアルバイトさんの社員登用を促進していますが、その動機は「憧れる店長がいる」という人に帰属することが多いです。日本の学生アルバイトさんがあこがれるような外国人の店長をどのように育成していくか。会社の理念や思いを語れる状態にしていくのは非常に高いハードルですが、今後の教育の重点ポイントだと考えています。

―― Linkusの活用について伺います。このサービスを知ったきっかけは何でしたか。

磯野: 交流会でご紹介いただいたのがきっかけです。当時は担当者のPCなどで履歴書や個人情報を、Excelで管理している状態だったので、属人化の排除と業務効率化、書類作成のニーズがマッチしたタイミングで導入を決めました。

―― 導入時点では、すでに内製化は進めていたのでしょうか。

磯野: はい。登録支援業務の内製化を決めた最初の1年間は他社の登録支援機関さんに伴走してもらいながら支援業務を落とし込んでもらいました。そのサポートが切れるタイミングで、完全に内部でやっていくためにシステムを検討し、導入させていただきました。

―― Linkusを使っていて、特に役に立っている機能はありますか。

マルフ: 主に2つあります。まず、プロセス別で分けられることです。「内定」「申請中」「在籍中」などのカテゴリーで分けられるのが便利です。もう一つは、書類作成における自動入力です。すでにフォーマットがあり、特定の箇所だけ入力すれば書類ができるので、作成時間を大幅に短縮できていると実感しています。

―― 特定技能の雇用を検討している企業へのアドバイスがあればお願いします。

磯野: まずは『内製化をするかしないか』などと考えず、とりあえず1人目を採用してみることだと思います。採用しないとわからないですし、会社によって馴染むかどうかは異なります。まずは国内在住者から、日本人と同じ感覚でスモールスタートしてみるのがポイントです。

そして最重要なのは、経営陣、営業部、人事部の共通理解です。人事部だけの目標ではうまくいきません。経営に関わるメンバーが「外国人採用を推進する意味」を合意できていないなら、やらない方がいいとすら思います。弊社はそこが合意できていたからこそ、うまくいっているのだと感じます。

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