少子高齢化に伴う日本の人材不足の問題を解決するため、2019年4月より【特定技能】という新しい在留資格が新設されました。人手不足に陥っている業種に限って活用が認められた資格ですが、海外人材を雇用するとなると、日本人の採用とはコストやフローが異なったり、配慮しなければならない問題も数多くあります。この記事では、現状の受け入れ数やその他情報を踏まえて今後の制度活用について解説します。
現状の特定技能外国人受け入れ数
2019年4月1日から新設された在留資格【特定技能】。通算5年が上限とされる【特定技能1号】について、制度施行当初から2023年までの5年で34万人以上の受け入れを目標とされていたところ、2024年4月からの5年間での受け入れ見込数を820,000人とすると発表があり、大幅に人数枠が増えております。
また、令和5年12月末時点の特定技能1号在留外国人数は、全国で計20万8,425人となっており、大幅な人口増となっています。
入国制限が緩和されたことに伴い、入国待ちをしていた海外人材が来日しているとはいえ、新型コロナウイルス感染症拡大の水際対策の影響をひとつの大きな要因として、特定技能の活用は思うように進んでこなかったというのが現状です。特定技能制度は技能実習のように受け入れ数に上限が設けられていません(建設業と介護業は除く)が、どの業界にも満遍なく人材が行き渡っておらず充足度は異なります。
今後、日本国内で資格切り替えをするケースについて
2020年の3月から水際対策が強化されたことで、海外人材は新規入国が困難となりました。ところが、目標値へ届くことはなくとも特定技能外国人数は右肩上がりで増え続けています。その理由は、技能実習から移行するケース、国内在住外国人の方が特定技能へ資格変更するケースが増えた、ということを示しています。国交がコロナ禍以前に戻りつつある今、増加のペースがどのようになっていくか注目されています。
国籍別の受け入れ数について
技能実習生の受け入れ数として最も多いベトナムが特定技能も多く、次いでインドネシアやフィリピンという結果です。
ベトナムの経済成長に伴い、日本との賃金格差が縮まっていくことが予想される将来、特定技能人材の送り出し数が減っていく可能性もあるでしょう。受け入れる企業側は、ベトナム国籍の人材以外の、インドネシアやフィリピン、ミャンマーなど様々な国籍の人材を受け入れることを考えた方がベターでしょう。ただし、特定技能外国人の定着という観点から考えると、同じ国籍である程度の人数が一緒に働く環境の方が、コミュニケーションなどもしやすく、働きやすさへと繋がります。
【特定技能】制度はどの国の人材を採用できるのか? ↓↓
業種・分野別の受け入れ数
産業別にみてみると、飲食料品製造業が圧倒的に受け入れ数が多く、次いで製造業、農業という結果が出ています。これは技能実習からの変更が多いため、もともと技能実習の人口が多い業種が特定技能でも多くなっているためです。
一方で宿泊業や外食業といったインバウンドが関わる産業は現在は受け入れ数が少ないですが、今後は活性化して人材が不足するであろう業界であるため、積極的に人手を確保していく必要があるでしょう。
特定技能2号、業界・分野の拡大について
2019年4月の創設時には、【建設】と【造船・舶用工業】だけであった【特定技能 2号】ですが、2023年6月9日の閣議決定にて、【介護】を除く計11分野が【特定技能 2号】に追加をされました。
※【介護】は【在留資格 介護】があるため、今回【特定技能 2号】への非追加。
特定技能2号とは、「熟練した技能を必要とする業務」を行う外国人向けの在留資格です。要するに、特定技能1号よりもレベルの高い技能を用いる外国人が対象です。
特定技能1号と2号の違い
特定技能2号を取得するには、特定技能1号を持っている外国人が、業種ごとの所管省庁が定める試験に合格する必要があります。受け入れる企業や登録支援機関などのサポートは対象外となるものの、条件を満たせば配偶者と子供の帯同が認められます。また、3年、1年または6か月ごとの更新を行えば、無期限で日本に滞在し続けることが可能です。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
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職種 | 12分野(介護業、ビルクリーニング業、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業) | 11分野(ビルクリーニング業、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業) |
在留期間 | 上限5年(1年、6か月、または4か月ごとに更新が必要) | 上限なし (3年、1年、または6か月ごとに更新が必要) |
技能水準 | 自社の産業分野において、最低限の知識または経験が必要な業務をこなすことができる | 自社の産業分野において熟練した技能が必要な業務をこなすことができる |
日本語レベル | 日本語能力試験で確認 (技能実習2号の修了者は試験免除) | 日本語能力試験での確認不要 |
支援の有無 | 必要有り | 必要無し |
家族帯同 | 原則不可 | 要件を満たせば可能(配偶者や子など) |
特定技能1号・2号に関する詳しい記事はこちら ↓↓
参考:
「特定技能2号」大幅拡大 熟練外国人の長期雇用に道 政府方針 – 産経新聞
政府「特定技能2号」拡大検討 在留期限なし – 産経新聞
業界・分野の即戦力として活躍できる
特定技能2号へ移行することができるのは、特定技能1号として経験を積んでいる方が対象です。海外人材は各業界や分野の知識や経験を活かすことができますし、受け入れる企業側は即戦力を得ることが可能です。永続的に就労でき、在留資格の申請業務にかかる時間や手間を省けることもポイントです。特定技能2号の分野が増えることで、様々な業界の人材不足を解消することにつながると予想されます。
ところが、特定技能外国人の採用や手続きは複雑であることも懸念されています。自社でカバーできない企業も多く、登録支援機関に委託をするケースも多くあります。特定技能外国人の採用・雇用は、知識や経験が豊富なプロに相談するとスムーズでしょう。
まとめ
特定技能外国人の数は、新型コロナウイルスの影響によるロックダウンなどが落ち着いた以降、年々増えており、さらなる分野の追加や関連制度の変化など、様々な動きを見せています。
今後も業界全体の変化が大きく予想される中、とはいえ、特定技能雇用・支援には煩雑な申請書類作成、慣れない支援業務、支援業務の委託費が高額になりやすいことなど、気をつけなくてはならない点も多くあります。特定技能採用は、特定技能の支援業務管理プラットフォーム[Linkus]がお手伝いいたします。ぜひご相談ください。