外国人雇用の強い味方!雇用時に受け取れる助成金や申請方法について解説

コラム

人材確保を目的として、事業主が利用することのできる助成金をご存知でしょうか。日本においては、事業と雇用の安定化を目的とし、事業主を支援する様々な助成金が用意されています。

中でも、外国人労働者にとって働きやすい環境を整えるための助成金「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」が2020年度に新設され、注目を集めています。

この制度は「外国人を雇用したい」「外国人労働者のための環境を改善したい」と考えている事業主にとって、朗報と言えるでしょう。本記事では、この助成金について詳しく紹介します。

外国人を雇用してもらえる助成金とは

人材を雇用する事業者が受けることができる助成金は様々あります。例えば、何らかの事情で事業を縮小せざるを得なくなった際に雇用を確保するための「雇用調整助成金」や就職困難者の雇用をサポートするための「特定求職者雇用開発助成金」、様々な理由から安定的な就職が困難な人材の雇用促進を目指した「トライアル雇用助成金」等です。

これらは条件を満たせば外国人労働者も対象になる一方で、外国人労働者の雇用に特化した助成金というものはありませんでした。

日本で働く外国人労働者が必要とするサポートは、日本人労働者とは全く異なるものも多くあります。そのようなサポート環境を整えるために利用できる「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」の制度が開始されたことは、大きなニュースと言えます。

助成金の種類

ここで紹介する助成金は「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」です。人材確保等支援助成金は、雇用管理改善等の取り組みを通じて従業員の職場定着を高め、人材不足の解消を目指すための助成金とされています。

「外国人労働者就労環境整備助成コース」は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着を促進するために新設されました。

助成金の対象

助成の対象は、外国人労働者のための就労環境の整備に伴い生じた経費となっています。具体的に挙げると、支給対象となる経費は次の5つです。

① 通訳費
② 翻訳機器導入費
③ 翻訳料
④ 弁護士、社会保険労務士等への委託料
⑤ 社内標識等の設置・改修費

これらの費用のうち、事業主から外部機関等に対して支払ったもので、社会通念上・市場価格に対して適正であるものが対象です。また、助成金を受けるためには次の要件を満たす必要があります。

・外国人労働者を雇用する事業主であること
・就労環境整備のため、(1)と(2)の施策を実施し、加えて(3)〜(5)のいずれかの施策を新たに導入し、外国人労働者全員に対して実施すること

【必須】

(1)雇用労務責任者の専任

条件:
・雇用労務責任者を事業所ごとに選任し、外国人労働者に周知すること
・計画期間中、すべての外国人労働者が3ヶ月間に1回以上、雇用労務責任者との面談を行うこと、その結果を書面で作成すること
・労働基準法等法令に違反する扱いを受けた場合、外国人労働者が相談できる関係行政機関等の案内を書面で配布すること

(2)就業規則等の社内規程社内きの多言語化

条件:
・就業規則等社内規程を多言語化し、計画期間中に雇用するすべての外国人労働者に周知すること
・対象事業所における就業規則等の全てを多言語化すること

【いずれか1つ以上】

(3)苦情・相談体制の整備

条件:
・全ての外国人労働者の苦情や相談に応じる体制を新たに定め、その内容を就業規則または労働協約により周知すること
・外国人労働者の母国語または使用するその他の言語により苦情・相談ができること
・支給申請日にこの措置を継続運用していること

(4)一時帰国のための休暇制度

 条件:
・全ての外国人労働者が、一時帰国を希望した場合に有給休暇(年次有給休暇とは別)を取得できる制度を新たに定め、就業規則もしくは労働協約に盛り込むこと
・連続した5日以上の有給休暇を1年間に1回以上取得できること
・支給申請日にこの措置を継続運用していること

(5)社内マニュアル・標識類等の多言語化

条件:
・社内マニュアルや標識等を多言語化し、計画期間中に雇用する全ての外国人労働者に周知すること
・就労環境整備計画期間終了後、一定期間経過後に外国人労働者の離職率を算出。10%以下であること。

これらの条件に該当する「外国人労働者」の定義については、次の全てに該当する労働者のことを指すとされています。

・「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活等に関する法律」で規定される「外国人雇用状況届出」の対象となる者であること
・事業主と労働契約を取り交わした、直接雇用の労働者であること
・雇用保険の被保険者であること
・社会保険の被保険者であること(社会保険の適用事業所に雇用されている場合で、社会保険の要件を満たす場合)

ポイントは、これらの施策を「新たに」導入するということと、「外国人労働者全員に対して」実施するということです。すでに実施しているものは対象になりません。また、施策の対象が計画期間内に退職予定の外国人労働者に限られている、等の条件がある場合も対象にならないため注意が必要です。

① 通訳費の場合

働いている外国人が言語的ハードルを抱えている場合、通訳が必要となることがあります。この、外国人労働者がスムーズに就労するために必要となった通訳サポートの費用が支給対象となります。

② 翻訳機器導入費の場合

労働の様々な場面において、言語的サポートの必要性が生じる可能性があります。労働者が日本語では理解しにくい内容を伝えるため、翻訳機器を導入した場合に、その費用が支給対象となります。事業主が、雇用労務責任者と外国人労働者の面談に必要な機器を購入した場合に限り、10万円を上限に支給されます。

③ 翻訳料の場合

企業や事業所によっては、労働に関わる書類や標識が膨大に存在していることもあるでしょう。これらの製作物も、日本語のみであれば理解に不足が生じてしまう可能性が想定されます。これらの書類の翻訳を外部機関等へ委託した場合、その費用も支給対象となります。社内マニュアルや標識類等の翻訳に関わる費用も含まれます。

④ 弁護士、社会保険労務士等への委託料の場合

外国人労働者を雇用するためには、日本人労働者とは異なる法規や制度について確認・対応する必要も生じてきます。これらに関して適切な対応を行うため、弁護士や社会保険労務士等への業務を依頼した場合の費用も対象です。ただし、外国人労働者の就労環境整備措置に関わる依頼分だけが対象となります。

⑤ 社内標識等の設置・改修費の場合

社内に掲示する標識等も、そこで働く労働者全員が正しく認識できる必要があります。これらの標識を多言語で新たに設置したり、既存のものを改修したりするための費用も対象となります。

支給額

支給される金額は、「生産性要件」を満たすか否かにより次のように設定されています。

区分支給額(上限額)
生産性要件を満たしていない場合支給対象経費の1/2(上限額57万円)
生産性要件を満たす場合支給対象経費の2/3(上限額72万円)

生産性は下記計算式で求められ、3年度前に比べて6%以上、もしくは1%以上(金融機関から一定以上の事業性評価を得ている場合)伸びていることが生産性要件となります。

生産性=付加価値 ÷ 雇用保険被保険者数

※ 付加価値=営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃貸料+租税公課

支給限度日数

助成金の支給を受けるためには、実施前に就労環境整備計画を策定し、提出する必要があります。この計画に含まれている期間内に措置が実施され、その上で支払いが完了している経費だけが支給対象となります。計画期間は3ヶ月以上1年以内です。

計画開始日は最初に就労環境整備措置を導入する月の初日となり、実際に措置を導入した実際の日とは異なるため注意が必要です。ちなみに、計画は計画開始日からさかのぼって6ヶ月〜1ヶ月前の日の前日までに提出している必要があります。

申請方法について

「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」の支給申請書等の提出時に注意しなければならない点はこちらです。

助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の支給を受けようとする事業主(以下「支給申請事業主」という。)は、評価時離職率算定期間の末日の翌日から起算して2か月以内に、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)支給申請書(様式第 a-6 号)(以下「支給申請書(様式第 a-6 号)」という。)を作成し、0502 の添付書類を添えて管轄労働局長に対して支給申請を行わなければならない。

引用:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)支給要領(令和3年4月1日現在)

添付書類について

支給申請書(様式第 a-6 号)だけでなく、次のイからタに掲げる書類を添えて提出します。また、生産性要件を満たす場合の支給額の適用を受けたい場合は、次のレに定める書類を併せて添付します。

イ  事業所確認票(様式第 a-2 号)
ロ  外国人労働者名簿(様式第 a-1 号別紙 3)
ハ  対象事業所における評価時離職率算定期間の外国人労働者(※)及び日本人労働者である雇用保険一般被保険者の離職理由等がわかる書類(離職証明書(写)等)
  ※ 離職した外国人労働者の在留資格が「特定技能1号」、「技能実習」、「医療」((注)准看護師の場合に限る。)、「特定活動(外国人建設就労者受入事業)」、「特定活動(外国人造船就労者受入事業)」、「特定活動(国家戦略特区農業支援外国人受入事業)」、「特定活動(国家戦略特区家事支援外国人受入事業)」、「特定活動(総合特区特定伝統料理海外普及事業)」又は「特定活動(日本の食文化海外普及人材育成事業)」であって在留期間の上限を満了したことに伴い帰国した場合は、在留資格を証明する書面(例示様式①)も添付すること。
ニ  導入した「雇用労務責任者の選任」及び「就業規則等の社内規程の多言語化」の概要票(様式第 a-6 号別紙 1)(以下「概要票(様式第 a-6 号別紙 1)」という。)
ホ  導入した「苦情・相談体制の整備」、「一時帰国のための休暇制度」及び「社内マニュアル・標識類等の多言語化」の概要票(様式第 a-6 号別紙 2)(以下「概要票(様式第 a-6 号別紙2)」という。)
ヘ  外国人労働者の労働条件通知書又は雇用契約書(日本語による最新のもの全員分)
ト  外国人労働者の出勤簿等出勤状態が確認できる書類(就労環境整備措置の導入日の1か月前から評価時離職率算定期間の末日までに係る全ての月分)
チ  雇用労務責任者による面談結果一覧表(様式第 a-6 号別紙 3)(以下「面談結果一覧表(様式第 a-6 号別紙 3)」という。)
リ  関係行政機関の案内書面(雇用労務責任者が外国人労働者との面談において配付したもの)
ヌ  多言語化した全ての就業規則等の社内規程(0302 ハ又はニの就労環境整備措置を導入した場合の労働協約又は就業規則については、当該変更内容を反映したものに限る。)
ル  多言語化する前の全ての就業規則等の社内規程(就労環境整備計画書(様式第 a-1 号)の添付書類として提出した就業規則等の社内規程に変更があった場合に限る。)
ヲ  外部機関等に支払った経費を証明する書類(領収書(写)、契約書(写)、納品書(写)等)※ 外部機関等に支払った経費を証明する書類は、就労環境整備措置の導入・実施に要した費用の合計額の他、内訳が明確に記載されているものとする。
ワ  人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)「支払額」算定書(様式第a-1 号 別紙 4)
カ  導入した就労環境整備措置を実施したことが確認できる次のいずれかの書類
   (イ) 苦情・相談体制の整備
   変更した日本語の労働協約又は就業規則(※)
   ※ 就業規則は労働基準監督署等の受理印のあるものとするが、常時 10 人未満の労働者を使用する事業主に限り、労働者全員に周知されたことが確認できる書面(例示様式②)が添付されたものを認める。なお、苦情・相談体制の導入後に労働協約又は就業規則を変更している場合は支給申請日時点の最新の労働協約又は就業規則も併せて提出させること。
   (ロ) 一時帰国のための休暇制度
   a 外国人労働者が帰国したことを証明する書類(航空券の半券の写し等)
   b 外国人労働者の賃金台帳等賃金の支払い状況が確認できる書類(一時帰国のための休暇が有給休暇であったことを確認できる月分)
   c 変更した日本語の労働協約又は就業規則(※)
    ※ 就業規則は労働基準監督署等の受理印のあるものとするが、常時 10 人未満の労働者を使用する事業主に限り、労働者全員に周知されたことが確認できる書面(例示様式②)が添付されたものを認める。なお、一時帰国のための休暇制度の導入後に労働協約又は就業規則を変更している場合は支給申請日時点の最新の労働協約又は就業規則も併せて提出させること。
   (ハ) 社内マニュアル・標識類等の多言語化
   多言語化した全ての社内マニュアル等の写し(事業所内の標識類の多言語化の場合は掲示等されている実物を撮影した写真)
ヨ  支給要件確認申立書(共通要領様式第 1 号)
タ  事業所が社会保険の適用事業所であることが分かる書類(社会保険料納入証明書(写)、社会保険料納入確認書(写)等)及び当該事業所の労働者が社会保険の被保険者であることが分かる書類(賃金台帳(写)など、社会保険料の支払いが分かる書類)(社会保険の要件を満たす場合に限る。)
レ  「第1 共通要領」の 0402 ロに定める書類及び算定の根拠となる証拠書類(損益計算書、総勘定元帳等)
ソ  その他管轄労働局長が必要と認める書類

引用:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)支給要領(令和3年4月1日現在)

注意

外国人労働者の就労環境整備を目的とした助成金は他にはないため、ニーズがマッチする事業者にとっては強い味方となってくれます。

しかし、申請にあたって注意するべきポイントが1つあります。支給対象となる5つの経費を紹介しましたが、これらのいずれもが、「外部機関等に委託するものに限る」という要件が含まれています。

例えば、外国人労働者がスムーズに働くことができるよう、自社スタッフが標識を翻訳した場合等には申請することができません。良かれと思って、通訳や翻訳者といったサポートスタッフを自社で雇用した場合、彼らの業務に関わる費用は助成対象とならないということです。

この点を勘違いしてしまい、助成対象が大きく減少することがないように注意したいところです。

まとめ

これまで、日本で働く外国人労働者のための助成金はなく、事業主は日本人労働者と共通の制度を利用するしかありませんでした。しかし、今回紹介した助成対象措置からもわかる通り、外国人労働者だからこそ必要となるサポートや環境整備は確かに存在しています。

外国人労働者の就労環境に特化した独自の助成金が始まったことは、大変画期的なことです。外国人労働者が、外国人だからこそ必要となるサポートを受けることができる機会を増やすことにつながるでしょう。

外国人労働者を雇用する事業主にとって大きな助けとなることでしょう。その結果、日本における外国人労働者の安定雇用につなげられる可能性もあります。新たに始まった助成金を上手に活用することで、すべての労働者にとって働きやすい環境づくりの実現が一歩近づくことでしょう。

「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」についての詳細は、下記サイトからご確認ください。

厚生労働省 人材確保等支援助成金(外国人就労者就労環境整備助成コース)

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