
2026年1月1日に施行される行政書士法改正は、特定技能外国人の受け入れに関わる「登録支援機関」や「受け入れ企業」に大きな影響を及ぼします。これまでグレーゾーンとされていた申請書類などの作成を代行し、別名目で報酬を得る行為が、改正後は明確に違法となる可能性が高くなり、違反した場合には罰則や両罰規定の適用を受けるリスクがあります。
本記事では、行政書士法改正の概要と注意点を整理するとともに、企業と登録支援機関がどのように適法に連携すべきか、さらに[Linkus]活用によるリスクヘッジに関しても触れていきます。


行政書士法改正の背景
行政書士法が改正される背景には、外国人材の受け入れ拡大とともに、無資格者による在留資格申請書類の有償代行が横行していたという事実があります。そもそも、行政書士や弁護士以外の者が報酬を得て提出書類を作成することは、これまでも行政書士法上禁止されていました。
しかし、実務の現場では「コンサル料」「手数料」「支援パック」など、名目を変えて報酬を受け取るケースが横行しており、結果として実質的な有償代行が常態化していました。例えば、登録支援機関が「支援業務の一環」と称して申請書類を作成したり、企業が外部業者に報酬を支払って書類作成代行を依頼するなどの行為が典型例です。
今回の改正は、こうしたグレーゾーンを明確に線引きして是正することを目的としています。具体的には、「行政書士の使命を明確化し、資格を持たない者による有償での書類作成代行を明確に禁止する」という方針が打ち出されました。(今回の法改正はあくまでも“書類作成行為”に関する明文化であり、出入国在留管理庁への申請行為そのものに新たな制限を設けるものではありません。)
この改正により、外国人材の権利を守りつつ、より適正で透明性の高い手続き運用を実現することが期待されています。
改正で何が変わるのか
主な改正ポイント(2026年1月施行)は次の通りです。実質的に、登録支援機関の違反が指摘される可能性が高まったといっても過言ではありません。
- 行政書士の使命を明文化:外国人の権利利益の保護、適正手続の確保を目的とする。
- 業務制限の趣旨を明確化:無資格者による入管提出書類の作成を有償で行うことの禁止。
- 両罰規定の整備:違法行為に法人が関与した場合、作業者個人だけでなく企業も処罰対象。
- 行政書士の権限拡大:行政庁に対する不服申し立てなど範囲を拡大し、より幅広い支援が可能
今回の改正で特に重要なのは、無資格者による入管提出書類の作成が明確に違法となる点です。名目を変えて「コンサルティング料」や「事務手数料」として報酬を受け取ったとしても、実態が書類作成の代行であれば違反にあたります。また、登録支援機関が提供する「パッケージサービス」に書類作成代行を組み込んだ場合も同様に違法とされる可能性があります。
さらに、法人が関与した場合には法人も処罰対象となる両罰規定が整備されるため、支援担当者である登録支援機関のスタッフが行った行為であっても、登録支援機関の法人格も含めて罰せられることになります。これまで曖昧にされてきた領域が法改正によって一掃されるということです。
登録支援機関・受け入れ機関が直面するリスク
改正後は、以下のようなケースが行政書士法違反に該当する可能性が高くなります。違反が発覚すれば、登録支援機関は業務停止や登録取り消しといった厳しい行政処分を受けることがあり、企業側も少なからず影響を受けるリスクに直面します。とくに、これまで“支援業務の範囲内”と見なされてきた行為に対して監督の目が強まるため、登録支援機関に対して違反を指摘する頻度が一段と高まると考えておくべきです。
- 登録支援機関が「支援業務の一環」として申請書類を作成し、費用を受け取る
- 名目を「サポート料」や「事務手数料」に変えても実態が書類作成代行なら違法
- 受け入れ企業が外部業者に報酬を支払って書類作成を依頼する
現場で想定される事例
具体的には、まず「登録支援機関が書類作成のサポート料を請求する」というケースが考えられます。従来は「サポート料」を名目にして申請書類の作成・補助を行う事業者も存在しましたが、改正後はその実態次第で明確に違法行為とみなされる可能性が高くなります。
また、毎月の支援委託料に、申請書類の作成代行料を上乗せして12ヶ月に分散請求する、といった対応も実態が書類作成代行行為である以上は認められません。
こうしたケースで登録支援機関側に違反が疑われると、支援体制そのものの信頼が損なわれ、受け入れ企業へも波及的な不利益が起きるおそれが考えられます。受け入れ企業側も、改正を機に自社で対応できる支援体制の整備を検討することをおすすめします。
想定される誤解とグレーゾーン
企業の担当者からは「無償で作成するなら違法ではないのでは?」という声も聞かれます。しかし、無償であっても書類作成代行とみなされれば違法とされる可能性があります。(無償であれば直ちに違法ではありませんが、実態として“業として”行っていると判断されれば、違反に問われるリスクもあります。)想定される誤解とグレーゾーンの例は次の通りです。
「名目を変えればOK」
→ NG。手数料や相談料の名目でも有償で作成すれば違法。
「内部資料だから大丈夫」
→ NG。入管提出用に準拠したフォーマットを作れば申請書類とみなされる。
「セット料金に含めればいい」
→ NG。支援業務パッケージ内に書類作成代行を含めても違法。
「登録支援機関の社員が企業から直接報酬を受け取らなければセーフなのでは」という考え方もありますが、組織として有償で作成している以上、それも違法です。一方で、社内の担当者が申請を行うことは可能ですが、その場合は法務省から承認を得た「取次者」でなければなりません。また、外国人本人が自らの申請書を作成・提出することは合法です。※認定申請の場合は別。
適法な対応策とは
企業や登録支援機関はどう対応すべきでしょうか。第一に重要なのは、「支援」と「書類作成」を明確に切り分けることです。登録支援機関は生活支援や就労支援といった役割に徹し、在留資格に関わる申請書類の作成は、受け入れ企業側での対応を基本のスタンスとすることをおすすめします。それが難しい場合に、行政書士などに委ねることの検討も一つであると考えます。
◆受け入れ企業の対応
・社内の職員が自身で作成
・行政書士および弁護士に書類作成業務を委託
◆登録支援機関の対応
・「支援」と「書類作成」を明確に切り分ける
・業務フローの透明化
・法令遵守のための外部システム活用
リスクヘッジは特定技能制度に特化したプラットフォーム活用を
行政書士法改正を踏まえ、受け入れ企業や登録支援機関がこれまでと変わりなく業務を進めるためにおすすめなのが、特定技能制度に対応したプラットフォームの活用も有効です。たとえば[Linkus]のように、情報を一元管理し、外国人材、企業、登録支援機関が情報を連携できる仕組みを導入すれば、行政書士法改正後も安心して特定技能制度を活用できます。
- 情報入力を一元化:外国人材、企業、登録支援機関が同じシステム上で情報を共有管理し、自動で書類を生成。適法な書類作成が可能。
- 費用面でも安心:企業側に利用料は発生せず、法令どおりの運用が可能。
[Linkus]は「今までどおり特定技能を活用したいけど、違法リスクは避けたい」という企業担当者にとって使いやすい仕様となっています。
まとめ
2026年1月の行政書士法改正により、登録支援機関などがこれまで行ってきた書類作成代行は違法となり、違反すれば法人も罰則の対象となります。今回の改正は書類作成行為に関する明文化であり、申請そのものを制限するものではありませんが、登録支援機関にはこれまで以上に法令遵守の徹底が求められます。これを機に、受け入れ企業も自社での支援体制づくりを検討してみてはいかがでしょうか。外部任せにせず、適法で効率的な仕組みを整えることが、今後の安定運用とリスク回避につながります。
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