特定技能外国人の雇用契約書や雇用条件書など必要な書類手続きについて

特定技能

【監修】

ON行政書士事務所

長江 修

大手新聞社ニュースサイト制作や企業広報を経て行政書士資格を取得し、2017年に東京・上野にてON行政書士事務所を開業。「皆様の暮らしやビジネスの良きパートナー」であることをモットーに、【在留資格の書類作成・申請取次】をはじめ、【建設業許可】【古物商許可】などの各種行政手続き書類作成・申請代理を中心に展開。最近では【持続化給付金】【家賃支援給付金】などコロナ支援制度の対応も多い。また、経歴を活かし【ホームページ制作】など行政書士以外の業務も取り扱う。

在留資格「特定技能」の制度を利用して外国人を雇用する際には、外国人本人との雇用契約に加え、在留資格関係の申請、次に雇用状況についての届出が必要です。提出すべき書類は多岐にわたり、それぞれの手続きには細かな留意点が存在します。国が公表している運用指針などもかなり煩瑣な内容となっています。

まずは実際に外国人を雇用する際の流れに沿って必要な書類手続きを概観してみましょう。それから雇用契約書や雇用条件書など、個々の手続きについて少し踏み込んで解説していきます。

なお、特定技能には1号と2号の区別がありますが、ここでは幅広い利用が見込まれる1号の手続きについて解説することにし、2号については適宜注釈を加えるにとどめます(以下、とくに断らない限り「特定技能」は1号を指します)。特定技能2号は高度な専門性と熟練を有する外国人のための在留資格で、利用可能な分野は令和3年5月現在「建設」と「造船・舶用工業」に限られます。

参考URL:出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領 令和3年3月」4ページ

外国人雇用の流れ

特定技能外国人の雇用の流れを手続きの面から見ると、(1)雇用契約締結と受入れ準備、(2)在留資格関係の申請、(3)雇用後の届出という3つの段階に分けることができます。

雇用契約では基本的には日本人を雇用する場合と同様に日本国内の労働法が基準となりますが、さらにいくつか特別な規定を満たすことが求められます(後述)。特定技能外国人と雇用契約を結ぶ事業者(受入れ機関)は、外国人に入国後の生活全般に関する支援を提供する義務があり、そのための計画を事前に作成しておかなければなりません。さらに、労働条件などについて事前ガイダンスを実施する必要があります。(特定技能2号の場合は支援計画も事前ガイダンスも不要です)。

支援計画の実施を他に委託することも可能ですが、全部委託の場合のみ委託先が作成を支援することが可能であり、支援計画を作成するのは原則受入れ機関です。

外国人の受け入れ体制が定まったら、地方出入国在留管理局・同支局・同出張所(一部を除く)に在留資格関係の申請を行います。申請時には、外国人当人に関する書類(技能試験・日本語試験の合格証明書など)と受け入れ機関に関する書類(労務・税務関係書類や支援計画書など)を提出します。

申請が認められると、海外在留の外国人の場合は在留資格認定証明書が交付されますので、受け入れ機関は証明書を受領して外国人当人に送付します。外国人は所定の出入国手続きを経て来日し、就労に至ります。何らかの在留資格ですでに日本に在留している外国人を雇用する場合には、「特定技能」へ在留資格を変更が認められると、新たな在留カードが発行されます。

外国人の受け入れ後は、受け入れ実態や支援計画実施状況などについて定期的に報告し、雇用契約や支援計画に変更が生じた場合などには随時届出を行うことが義務づけられています。

ここからは、外国人雇用に必要な手続きについて、大きく雇用前と雇用後に分けて見ていきましょう。

雇用前に必要な手続きと留意事項

雇用前に必要となるのは、特定技能雇用契約、支援計画策定、支援委託契約(支援を委託する場合)、事前ガイダンス、在留資格関係の申請です。

特定技能雇用契約とは

特定技能雇用契約とは、特定技能外国人と受け入れる企業との間で結ばれる雇用契約のことを指します。記載しなければならない内容は、平成31年法務省令第五号の特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の第1条によって基準が定められています。基準に適合しないと入管の審査で再提出を求められ、契約し直しとなる可能性があるのでご注意ください。

また、契約締結に際して、特定技能外国人に内容をしっかりと理解してもらわなければいけません。その特定技能外国人本人が十分に理解できる言語(母国語または英語)で作成してください。なお、出入国在留管理庁のホームページには、雇用契約書や雇用条件書の雛形が参考様式として掲載されています。受入れ機関が通常使用しているものではなく、これを利用することをお薦めします(後述)。

契約の必要項目について

特定技能外国人との雇用契約では、業務内容、報酬、労働時間、差別的な待遇がないことだけでなく、帰国に関する内容も記載する必要があります。在留資格関係申請時には雇用条件書の写しの提出が求められます。

◆労働時間:
特定技能外国人の所定労働時間は、通常の日本人従業員と同等であること。
※所定労働時間とは就業規則で定められた労働時間(休憩時間は含めない)のこと。受入れ企業が就業規則を作成した場合は,当該就業規則に定められたものを指す。

◆報酬:
特定技能外国人の報酬は、同じ業務に従事する日本人と同等以上であること。技能実習生を受け入れている場合は,技能実習2号修了時の報酬額を上回ること。その分野に従事して3〜5年程度が経過した日本人の技能者に支払っている報酬額とも比較し、適切に設定すること。

◆業務内容:
実際に行う業務内容が、特定技能という在留資格で従事できる特定産業分野であること。さらに、その業務内容が、相当程度の知識や経験を必要とする技能を要する業務であること。

◆差別的な待遇がないこと:
日本国籍でないことを理由に、報酬額が左右されたり、福利厚生の内容が変わったり、教育訓練の実施を含むあらゆる待遇について、差別的な扱いを受けるべきではないこと。

◆有休について:
特定技能外国人が一時帰国を希望した場合、必要となる十分な有給休暇を取得してもらうこと。労働基準法において年次有給休暇を全て取得済みの特定技能外国人から,一時帰国したい旨の申し出申出があった際にも、有給休暇が取得できるよう配慮が望まれる。

参考URL:
出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領 令和3年3月」 別紙1の1と別紙2
特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令

特定技能雇用契約書の雛形

特定技能雇用契約書の参考様式はこちらで、下のURLからダウンロードが可能です。

出典:在留資格「特定技能」に関する参考様式(新様式)第1-5号 特定技能雇用契約書より

雇用条件書について

特定技能外国人を雇用する際、「特定技能雇用契約書」と一緒に「雇用条件書」を締結します。その参考様式はこちらで、下のURLからダウンロードが可能です。

出典:在留資格「特定技能」に関する参考様式(新様式)の第1-6号 雇用条件書(別紙「賃金の支払」を含む。)より。参考様式のダウンロードはこちら

なお、特定技能外国人採用で必要となる書類の作成は、上記の雇用契約書や雇用条件書を含めて70以上に上ります。膨大な書類の作成や資料のやりとりはLinkusで驚くほど簡単&スピーディーになります。ぜひご活用ください。

特定技能雇用契約以外に申請すべき項目について

◆支援計画策定・支援委託契約:
特定技能外国人が職業上の活動や日常的な社会生活を円滑に進められるように、受け入れ機関は総合的な支援を提供しなければなりません。

支援の内容については法律に規定があり、それに則った支援計画の作成と実施が求められます。在留資格関係申請時には支援計画書の提出が必要です。支援計画書には支援責任者・担当者の氏名や役職名に加えて次のような事項を記載します。

①事前ガイダンスの内容・方法
②入国時や帰国時の送迎
③住居の確保(連帯保証・社宅の提供など)、日常生活に必要な契約(銀行口座・携帯電話・ライフラインなど)に関する手続きの案内や補助
④生活オリエンテーション(日本での生活のルールやマナー、公共機関の利用法などについて)
⑤公的手続きへの同行、公的書類作成の補助
⑥日本語学習の機会の提供
⑦外国人が十分に理解できる言語での相談・苦情対応
⑧日本人との交流促進(地域住民との交流の場への案内、参加の補助など)
⑨受け入れ側の都合で雇用を解除する場合の転職支援(転職先探し、推薦状作成、求職活動のための有給付与など)
⑩外国人やその担当上司との定期的な面談(3か月に1回以上)、必要に応じた通報

支援計画の全部または一部の実施を他に委託することも可能です(ただし原則として再委託は禁止)。その場合、委託先についての事項を支援計画書に記載し、在留資格関係申請の際に委託契約書の写しを提出します。

委託する場合にも、適切な支援を提供する責任は受け入れ機関にあります。出入国在留管理庁に登録された支援機関(登録支援機関)に支援計画実施をすべて委託すれば、その責任を果たしていると見なされます。

◆事前ガイダンス:
事前ガイダンスでは、外国人の労働条件、活動内容、入国手続きの方法、支援の無償提供などについて説明します。また、特定技能契約に絡み保証金を徴収したり契約不履行に対する違約金を設定したりすることは禁止されているため、外国人当人やその家族がそうした契約を結んでいないこと(今後も結ばないこと)を確認します。

これらの内容を記した書類に説明者の氏名や外国人の署名を記した上で、事前ガイダンスの確認書として在留資格関係申請時に提出します。

参考URL:事前ガイダンスの確認書

◆在留資格関係の申請:
特定技能の在留資格認定証明書交付(海外在留外国人の場合)や在留資格変更許可(国内在留外国人の場合)を申請する際には、多量の書類を添付する必要があります。ここでは、事業者として初めて在留資格認定の申請をする場合に必要となる主な添付書類を紹介します。他のケースや各書類の詳細については法務省のサイト(※)を参照してください。

(※)法務省「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(在留資格「特定技能」の創設等) 申請手続き」

【外国人当人についての書類】
写真、身分証明書、履歴書、技能試験・日本語試験の合格証明書、健康診断個人票など

【雇用契約に関する書類】
雇用契約書・雇用条件書の写し
雇用の経緯に関する説明書(職業紹介事業者や取次機関の利用について)
報酬に関する説明書
支払い費用の同意書、徴収費用の説明書など

【受け入れ機関(特定技能所属機関)に関する書類】
特定技能所属機関概要書(事業者の基本情報、受け入れ実績、支援体制など)
登記事項証明書
住民票の写し(法人の場合は役員のもの)
決算文書の写し

【支援に関する書類】
1号特定技能外国人支援計画書
支援委託契約書の写し(支援計画実施のすべてを登録支援機関に委託する場合)
支援責任者と支援担当者の就任承諾書・誓約書・履歴書(登録支援機関に委託しない場合)

【労働者派遣業の場合】
労働者派遣事業許可証の写し
派遣計画書、労働者派遣契約書、派遣先の概要など

【下記の税金・保険料に関する確定申告書や納税証明書、納付証明書など(内訳省略)】
法人税、所得税
法人住民税 個人住民税
源泉所得税及び復興特別所得税
消費税及び地方消費税
相続税,贈与税
労働保険
社会保険
国民健康保険
国民年金

【受け入れ分野ごとに必要となる書類】
各種宣誓書、業法に基づく許可証など

参考URL:
在留資格認定証明書交付申請「特定技能」(これから日本に入国される外国人の方)
出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領 令和2年4月」 別紙2

雇用契約締結時に注意したいこと

特定技能雇用契約をするときに、上記のような内容を含むことはもちろんですが、それらを特定技能外国人にしっかりと理解してもらうことが重要です。同意が得られないまま契約を結ぶことのないように気をつけてください。契約締結後はしっかりと契約内容を守ることが大切です。

◆特定技能外国人が契約書の内容をしっかりと把握していること:
特定技能外国人に、雇用契約書の内容をしっかりと理解してもらってから署名をしてもらいます。日本語で理解ができない場合は、特定技能外国人が理解できる母国語で作成するのがいいでしょう。

◆特定技能外国人に契約書を渡すこと:
雇用契約書は2部作成します。1部は特定技能外国人が、もう1部は受け入れ企業が保管します。

◆特定技能外国人の健康管理:
特定技能外国人の健康状態を細やかに把握しておくことも大切です。加えて生活状況も把握しておきます。

雇用後に必要な手続きと留意事項

雇用後には、事由発生のたびに随時必要となる届出と定期的に行わなければならない届出が存在します。また、特定技能の在留資格には期限があり、雇用を継続するためには更新が必要です。

◆随時届出:
下記の場合、事由発生から14日以内に受け入れ機関の本店住所を管轄する地方出入国在留管理局・同支局(一部を除く)に届出をする義務あります。

①特定技能雇用契約を変更、終了、または新たに締結するとき
②支援計画を変更するとき
③支援委託契約を締結、変更、終了するとき
④外国人を引き続き雇用することが困難となる状況が発生したとき
・外国人の死亡、病気、怪我、行方不明、自己都合退職、重責解雇など
・受け入れ機関の経営上の都合、解散、基準不適合など
⑤出入国・労働に関する法令に照らして不正または著しく不当である行為を認知したとき
・外国人に対する暴行、脅迫、監禁、在留カード取り上げ、報酬不払い、私生活の不当な制限など
・虚偽文書の行使、保証金・違約金契約など

届出の不履行や虚偽の届出に対しては罰則が規定されています(①については30万円以下の罰金、②以下については10万円以下の科料)。(出入国管理及び難民認定法 第19条の18 第71条の4/第77条の2)

参考URL:
出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領 令和2年4月」 87ページ以下
法務省「届出手続」

◆在留期間更新の申請:
特定技能1号外国人に許可される在留期間(通常は1年)は3タイプ(1年、6か月、4か月)あり、通算5年に達するまでは更新の申請(在留期間更新許可申請)をすることができます。一方、特定技能2号にはより長い在留期間(3年、1年、6か月)が許可され、通算在留期間の上限は存在しません。更新申請では、在留資格認定申請時や在留資格変更申請時に提出した書類の一部を新しい内容で提出します。

まとめ

特定技能外国人の受け入れに際しては各段階で細かな手続きが求められ、提出する書類も膨大です。それだけでなく、契約相手となる外国人との間で来日前から雇用後まで随時さまざまなやり取りをしなければならず、支援委託をする場合には登録支援機関などとの調整も必要です。今回紹介した内容を念頭に置き、監督官庁の公式情報などで詳細を確認しながら、適切なやり方で受け入れを進めていっていただきたいと思います。

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