
外国人雇用をテクノロジーで支援するBEENOS HR Link株式会社(以下「BEENOS HR Link」)は、 「外食の「特定技能」新規受付停止の今、取り組むべき外国人従業員の定着・育成戦略セミナー」というテーマのウェビナーを、2026年6月4日に開催しました。
このウェビナーでは、BEENOS HR Link代表の岡﨑陽介を聞き手に、全国にラーメンやレストラン店を展開する株式会社 INGS(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:青柳誠希、以下 INGS)取締役人事部長である磯野勇氏を講師に招き、特定技能外国人従業員の定着・キャリアアップにつながる教育や育成戦略を豊富な事例を元に解説いただきました。
特定技能「外食」の新規受入れ停止が続いている状況において(2026年6月時点)、外国籍従業員に長期的なキャリア形成に向き合ってもらうための取り組みのヒントになるお話しを抜粋し、全4部にわたってお届けします。
外部委託から「完全内製化」への転換期-なぜ「10名」のタイミングで自社支援に切り替えたのか?
【BEENOS HR Link 岡﨑(以下岡﨑)】
2022年に初めて特定技能の雇用が始まってから、現在に至るまでの「支援体制」には、どのような移り変わりがありましたか?
【INGS 磯野氏(以下、INGS 磯野)】
大きな転換期は2023年でした。当然、最初は右も左も分からない状態でしたので、支援業務は外部の登録支援機関に委託していました。
転機が訪れたのは、特定技能の方が「入社予定者も含めるとそろそろ10名になりそうだね」という時期です。当時、外国人採用とは別の領域でお世話になっていた会社(※現在はそのサービスは終了)に、外国人採用や登録業務の知見をお持ちの方がいらっしゃって。
その方から端的に「それ、自社でできますよ」とアドバイスをいただいたんです。
コスト面で考えても、10名委託すると毎月20万〜30万円ほどになります。「それなら、新しく1人採用して内製化に挑戦してみようか」と動き出しました。最初の1年間はその会社に伴走していただき、2年目以降は完全内製化へと移行しました。これが一番大きな変化ですね。
【岡﨑】
最初の1名の段階では外部へ委託し、10名を超えたタイミングで内製化へ切り替えた。この人数とタイミングは、振り返ってみていかがですか?
【INGS 磯野】
結果として、非常に良かったと思っています。内製化にあたって最初に採用した人事部メンバーは、インドネシア出身の男の子でした。彼は人事未経験で、当時は静岡のスーパーで働いており、「東京に出てきたい」という動機で弊社に来てくれたんです。
彼を中心に、外部の方に伴走してもらいながら内製化のフローを落とし込んでいきました。あの「10名」というタイミングで体制を作れたのは、今思えば大正解でしたね。
【岡﨑】
弊社(BEENOS HR Link)でも、「自社支援(内製化)に切り替えたいけれど、特定技能が何人になったタイミングが妥当なのか」というご相談をよくいただきます。
今のお話を伺って、まさに「10名前後」というのは、コスト面でも、業務切り替えのハードルの低さという意味でも、非常にベストな指標だと改めて感じました。多くの企業様に共通する絶妙なラインですね。
【INGS 磯野】
そうですね。これから拡大していく企業様であれば、計画的に行うのが良いと思います。あまりに人数が多すぎる状態からいきなり内製化しようとすると、定期面談などの支援業務が最初から重すぎて、人事のキャパシティを超えてしまい大変ですから。
90名以上の従業員を支える、現在の支援体制ー「1担当あたり30名」が、日常サポートと業務を兼務する限界値
【岡﨑】
10名の段階から内製化を進められ、2025年、2026年と特定技能の方の人数が順調に増えて、現在は90名を超えているそうですね。現在はどのような体制で支援されているのでしょうか。
【INGS 磯野】
基本的には「支援担当スタッフ1名につき、特定技能外国人30名」というバランスを上限として体制を組んでいます。
これはスタッフ本人たちともすり合わせをしながら決めた数字です。法律で定められている「年4回の定期面談」だけでなく、日々のライフサポート(市区町村での手続きの同行、病院への付き添い、日常的な相談など)がどうしても発生します。それらを丁寧にケアするためには、1人あたり30名を見るのが限界だなと。
【岡﨑】
なるほど。人件費とサポートの質のバランスを考えたとき、やはり「1人につき30名」がちょうどいい塩梅なのですね。
【INGS 磯野】
登録支援機関に委託する場合、費用は1人あたり月額1万円〜4万円と幅がありますが、安くても1万円前後、相場だと2〜3万円ほどかかりますよね。
自社で1人のスタッフを雇用し、30名をしっかり担当できれば、コスト面で見ても十分に妥当性があります。そのため、現状はこれ以上「1人あたりの担当上限」を引き上げようとは考えていません。
彼らは支援業務(面談や生活サポート)だけをやっているわけではないんです。次の採用活動や、ビザの申請・更新手続き、さらに社内の研修運営までマルチに担当してくれています。
もし「支援業務だけ」に特化するのであれば、おそらく1人で40〜50名と、もっと多くの人数を見られると思います。しかし、採用から育成、ビザ管理まで一気通貫でやってもらうとなると、やはり30名がベストだと考えています。
入社前オンボーディングと細やかな生活支援
【岡﨑】
採用活動、ビザ申請まで多岐にわたる業務を内製化された担当メンバーが担っているとのことですが、新規の採用窓口だけでなく、面接合格から実際にお店で働き始めるまでの「入社前の期間」のフォローもメインでやられているのでしょうか?
特定技能では、採用決定から入社までにかなり間が空いてしまうことが多く、モチベーション維持に悩む事業者様も多いです。
【INGS 磯野】
はい、彼らが担当しています。特別に毎日こまめに連絡を取っているわけではないのですが、入社前のオリエンテーションなどは彼らが主導しています。
直近の傾向として、特に国外からの入国までに時間がかかるケースが増えており、以前は3〜4ヶ月だったところが、今は半年近くかかる方も出てきています。そのため、入社前(入国前)の国内外のメンバーに対して、オンラインで1回あたり1時間半ほどのオリエンテーションを実施しています。
そこで会社が大事にしている価値観を伝えたり、日本語のレクチャーを行ったりして、私たちの支援メンバーもそのサポートに入っています。
【岡﨑】
それ以外の時間でも、例えば入国前の不安な要素があれば随時相談を受けるような体制ですか?
【INGS 磯野】
もちろんです。そして、入社前の準備で一番大きなウエイトを占めるのが「ハウジング(住居探し)」ですね。外国籍の方の住居を探すのは本当に大変で、国内にいる方であれば現地へ一緒に探すこともありますし、国外在住で本人が来られない場合は、私たちが契約作業を代理で進めます。
入社前に関しては、この住宅手配が一番重い業務になってくるかなと感じています。また、入居後のトラブルにも対応しています。内容によっては私が間に入る場合もあります。
【岡﨑】
近隣住民の方や同居人とのトラブルなど、本当に多様なパターンがありますよね。法律や支援業務のルールとして決まっている「定型業務」と、現場で突発的に起きる「イレギュラーなトラブル」は全くの別物です。支援担当の方々がどこまでの裁量とスピードでコントロールできるかによって、組織の安定感が変わってくると、お話を伺っていて強く感じました。

日本人従業員との壁をなくす「コミュニケーション」と「情報共有」役員・代表も参加する「マナーに縛られない懇親会」
【岡﨑】
2022年のスタート時は外国籍の方が少なかった状態から、ここまで人数が増えていく中で、元々店舗にいらっしゃった日本人従業員の方々との関係構築や調整などは、どのように進められましたか?
【INGS 磯野】
ここに関しては、弊社の場合は「営業部が本当に尽力してくれたこと」が大前提としてあります。
その上で、人事部と営業部が連携して行ったこととしては「懇親会(飲み会)」の定期開催です。最初は事業部の責任者、人事部など3名と、該当する外国人スタッフ2名の計5名といった、本当にアットホームな規模から始めました。
それが今では人数が増え、1回の開催に30人ほど集まるようになったので、開催する側としてはちょっと大変なんですけど(笑)。それでも、外国籍のメンバーが必ずどれか1回は参加できるようにローテーションを組んでいます。
あえて業務外のコミュニケーションの場を設けることで、外国人スタッフ側からも日本人のことを理解してもらい、日本人側からも外国人スタッフの人柄を理解してもらう。この相互理解の機会を継続していることが非常に大きいですね。
仕事の有無に関わらず「純粋に楽しいから参加できる」という、本当の意味での懇親会にできていると感じます。その場にいて「ピリッとするぞ」というような威圧感のある管理職はいません。マナーや礼儀の面で厳しく注意するようなことも、今のところは起こっていませんね。
【INGS 磯野】
また年に4回(3ヶ月に1回)、中途社員を対象にした「役員懇親会」というものも実施しており、そこには代表や僕ら部長陣、そして日本人も外国籍のメンバーも同じ空間に集まります。ただ、同じ店舗のメンバーを固めて呼ぶのではなく、あえてバラバラの店舗から集めているので、余計に店舗内の縦関係が見えにくく、フラットに交流できているのかもしれません。
なお、店舗単位での日本人従業員と特定技能の方との個別コミュニケーション(店舗独自のイベントなど)については、会社から予算を振るようなことはせず、各店舗の裁量に完全に任せています。
「良い話」も共有する。定期面談のオープン化
【INGS 磯野】
また、コミュニケーション以外の仕組みとして、「定期面談の記録のオープン化」を行っています。
人事の支援担当スタッフが店長や本人から定期面談で情報収集をするのですが、その面談記録を人事部内だけで留めず、営業部(マネージャーや責任者)もリアルタイムで見られるように共有しています。
最初は「何か問題が起きたとき(悪いこと)」だけを共有していたのですが、営業部側から「本人が褒められていた話や、活躍している良い話も聞きたい」という声が上がったんです。確かにその通りだなと思い、今は全ての内容を共有しています。
これによって、営業部の上の人間も現地(店舗)にわざわざ行かなくてもある程度の状況がすぐに把握できるようになりました。さらに、事業部によっては「外国人スタッフだけを集めて、現場のOJT研修を特別に実施する」といったフォローを営業部主導でやってくれるようにもなりました。
この営業部の主体的な協力体制には、本当に助けられています。
離職を防ぐ鍵は「一次情報の収集」と「圧倒的な対応スピード」 文化や「基準の高さ」による誤解を、研修で防ぐ
【岡﨑】
店舗内での日本人と外国籍の方のコミュニケーションにおいて、よくある悩みとして「自分の分からない言語(例えば、日本人同士の日本語、ネパール人同士のネパール語)で話しているのを見て、自分の悪口を言われているんじゃないかと不安になる」といった声があります。御社ではそうした誤解によるトラブルはありますか?
【INGS 磯野】
事前に対策をしていても、やはり問題は起こりますね。
ただ、前提として、日本人の店長や先輩が仕事に対して「厳しく」指導しているとき、それがハラスメント的な嫌がらせではなく、単純に「プロとしての業務基準(クオリティ)が高いからこその厳しさ」であるケースがほとんどです。
しかし、外国籍のスタッフからすると、文化や言葉の壁もあり「自分は嫌われているんじゃないか」「悪く思われているんじゃないか」と勘違いしてしまうことがあります。
そのため、そうした事象が起こるたびに、入社研修のコンテンツ(教科書)に事例として随時追加していくようにしています。「こういう指導をされることがあるけれど、それはあなたを嫌っているわけではなく、お店の基準が高いからなんだよ」ということを、最初の段階でしっかりと伝えています。
危険信号:不満を言っていたスタッフの「大丈夫です」の真意
【INGS 磯野】
それでも、どうしても人間関係の相性などで問題が起こることはあります。言葉で説明して理解してもらうのが難しい場合、弊社では店舗間の移動ができる余地があれば、物理的に別の店舗へ異動させることもあります。そこは状況に応じて随時対応していますね。
【岡﨑】
店舗間の異動も含めて、柔軟かつ迅速に一手を打つことが、離職防止に繋がっているのですね。
【INGS 磯野】
そうですね。そしてここで重要なのが、弊社の人事部の支援担当が『一次情報』を直接、生の声として取りに行けている点です。
何か不満や問題の兆候があったとき、弊社は事業部(営業)と人事部の壁が非常に薄いため、すぐに情報を共有して確認・対応に移ることができます。特定技能の雇用において、やっぱり対応が遅れた方は辞めてしまいます。
【岡﨑】
やはり「スピード」が何よりも重要ですか?
【INGS 磯野】
圧倒的にスピードですね。少しでも対応が遅れてしまうと、それまで現場で問題提起や「異動したい」と不満を漏らしていたスタッフの発言が、ある日突然「あ、もう大丈夫です」に変わるんです。
一見、問題が解決して落ち着いたように見えるのですが、この「大丈夫です」は「(もうこの会社を辞める決意が固まったので、何もしてくれなくて)大丈夫です」という意味なんです。
本人が希望を出してから、対応されずに時間が経過していくと、会社から心が離れていってしまうスピードがどんどん加速していきます。直近でも、連携のタイムラグが原因で、本人の心変わりを止められず離職に繋がってしまった苦い事例が2名ほどありました。
何かしらの経過報告(「今こう動いているからね」という進捗共有)だけでもマメにできていれば結果は変わっていたかもしれないなと。
事業部と人事部の迅速な密の連携、これこそが離職を防ぐ最大の鍵だと思います。
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INGS様に導入いただいている弊社の支援業務管理システム(Linkus)では、定型機能の他に各社特有の管理要素を機能化するカスタマイズも可能です。
雇用・管理人数や社内状況の変化に合わせて、管理システムの使い方も様々変化させる必要があります。弊社BEENOS HR Link株式会社では、管理体制構築の段階からサポートも可能です、お気軽にご相談ください。