人材事業ではなく教育事業としての特定技能支援〜現場主義を貫くLivCo社に聞く〜 「株式会社LivCo」

インタビュー

日本語学校の運営など外国人材の教育に力を入れている株式会社LivCo。外国人材の紹介から支援、そして住居の提供まで一貫して手厚いサポートを提供されている株式会社LivCoの代表取締役 佐々翔太郎様に具体的な取り組みや強みについて詳しくお伺いしました。

当たり前のことを当たり前にやりきる大切さ

ーー貴社の事業内容と登録支援機関としての活動概要を教えてください。

LivCoは、現在創業4年目の会社です。主な事業内容は、ミャンマー、ベトナム、インドネシアの特定技能人材の紹介、登録支援、そしてこれらの国籍の外国人材に特化した賃貸仲介です。さらに、インドネシアでは日本語学校「LPK LivCo Indonesia」の運営や、メディア運営も行っています。

ーー特定技能制度における登録支援機関としての活動で最も大事にされていることを教えてください。

登録支援業務で最も意識しているのは、「当たり前のことを当たり前にやりきる」、そして「スピード感を持ってお客様に接し、向き合う」ことです。3ヶ月に1回の定期面談や、入社への同行、書類手続やビザ申請など特定技能業界は煩雑な業務が多く、これらをスムーズにこなすことが難しいという声も聴きます。弊社としてはこのような現状を真正面から捉え、綿密なオペレーションフローの設計、並びにその細かい業務フローに沿ったスタッフ採用要件の設計・実行、そしてスタッフ教育に力を入れミスが起きづらい仕組みを整えています。そうした点を評価いただき、他社から弊社に切り替えていただいた受け入れ企業様も数多くいらっしゃいます。

社内体制としては、外国人材と日本人材の二枚体制を敷いています。外国人就労者からの相談は外国人スタッフが受け、その内容を日本人スタッフが現場の責任者や人事に伝えます。どんなに日本語が上手な外国人スタッフでも、外国人とのコミュニケーションになれていない現場の店長さんや施設長さんと認識齟齬が起きることが過去に多々あったんです。逆に日本人のみで担当すると外国人就労者側からハードルを感じられてしまいなかなかリアルな相談をしてもらえない。さらに、介護福祉士や特定技能2号取得に向けた日本語クラスの開講や、現場の貼り紙やメニューなどの翻訳代行 、現場の監督者向けに文化の違いなどを伝える入社時の外国人雇用研修なども実施しています。

ーー特に御社の強みであると感じられている部分を教えてください。

当社の最大の強みは、現地での日本語学校運営と、それに伴う一気通貫のサポート体制、そして徹底した現場目線です。

 現地で日本語学校を運営しているため、6ヶ月間の全寮制生活を通じて、教師陣が学生一人ひとりの性格や特性を細かく把握しています。もちろん生徒の親御さんとも信頼関係を構築しています。この深い理解があるため、日本での問題発生時にも、信頼関係が構築された現地教師がオンラインで支援に入ることも可能です。現地での教育、紹介、支援、住居探し、SIMカードの代理販売など、全てを自社で一貫して行うことで、手厚いサポートを実現しています 。

弊社は、外国人材の方の離職要因をある程度把握しているため、入社前の段階でリスクを洗い出して対応するように努めています。例えば生活環境についてGoogleアースなどを使って「この勤務地は日常的に利用するスーパーまで歩いて何キロもあるけど大丈夫?」といった具体的な懸念点の説明をして、事前にすり合わせを行っています。こうした事前の懸念点の確認により、弊社での離職率は約15%前後と、業界平均の20〜30%よりも下回っています。このマッチング精度の高さは、東南アジアを熟知したスタッフ陣がいるからこそ実現できています 。
弊社は外国人材の紹介に特化していることから、外国人材に最適なオペレーションフローを構築しています 。 さらに、支援スタッフは「最強の営業」であると考えており、ロールプレイングを徹底的に行い、社内での人材育成に非常に時間をかけています。これにより、スタッフの質がサービスの質に直結し、外国人材からの信頼を得ることで、新たなご紹介をいただいたり、継続利用にもつながっています。

現場経験を生かした支援を実施

ーー受け入れ企業様から寄せられる、特に多い相談事項のトップ3を教えていただけますでしょうか?

入社1〜2ヶ月はビザや実務に関する相談が多いですが、徐々に「現場での指導をどうすれば良いか」「朝の仕事は何をさせたら良いか」といった、マネジメントや具体的なオペレーションに関する相談が増えてきます。私自身もスキマバイトサービスを使って飲食店で外国人と働いたり、スタッフも現場経験を積むことで、外国人材が実際の業務のどこで躓くかを把握し、企業にコンサルティング型のアサイン支援を提供しています 。そのほかでは現場での指導方法に近いですが、外国人材のマネジメント全般に関する相談や、どのような仕事を外国人材に任せるべきか、という配置に関する相談もいただきます。

ーー外国人材の方からよく受ける相談のトップ3を教えていただけますでしょうか?


一番は転職に関するご相談です。転職したい理由として一番多いのが人間関係の問題です。日本での就労前に、母国では家族や親戚としか深い付き合いがない、という求職者も多く、そうした方たちが日本に来て就労した時に、職場の同僚との関係構築をどのようにしたらいいのか分からず、人間関係に悩む、といった事が発生することがあります。
こうした問題を防ぐためにも、弊社は運営している日本語学校の中で体育や音楽の授業、部活動、文化祭などを実施し、現地にいる間に日本で就労するうえで必要となる人間関係の構築スキルや社交性を高める教育を行っています。そのほかでいただく相談としては一時帰国したい、脱退一時金に関するものがあります。


ーー特定技能外国人の方に対する異文化理解や心理的サポートなど、登録支援機関として意識されている部分はございますでしょうか?


正直、離職するかしないかは日本に来る前に80%決まっているのだと考えています。その特定技能外国人がどのようなマインドセットやスキルを持っていて、どんな基準や期待値で会社を選ぶのかが一番大事です。よって、現地の日本語学校でどのような指導をしているのかが最も重要です。


弊社が運営する日本語学校では日本の文化や働き方についてお伝えすることを大事にしています。特に「日本でやってはいけないこと」や「コミュニケーションの取り方」を徹底的に伝えています。また、日本語学校ではポイント制を導入しており、高得点者にはキャッシュバックがありますが、無断欠席(マイナス4ポイント)やポイ捨て(マイナス2ポイント)など、マイナス13ポイントで退学となる厳しいルールを設けています。最初は「自由な校風」として運営してましたが、ある日いきなり誰も授業に来なくなって日本にも誰も渡航できない時期がありました(笑)。現地のおおらかな教育環境で育った学生がそのまま日本で就労すると、感覚の違いから問題ばかり起きてしまう。ベトナムの成功している日本語学校もそうであるように、特定技能外国人の方々とっては厳しいと感じる教育が、日本で問題なく就労するためには必要です。弊社の日本語教師には「今嫌われなさい。日本渡航後に感謝のメッセージをもらえたら一人前」といつも言っています。生徒が日本に渡航し家族に仕送りができて幸せにしてあげることがゴールであり、教室の中で甘やかして生徒に好かれることがゴールではない。むしろ授業料をいただくということは必ずや日本に送り出してあげる責任がありますよね。


また、日本の職場は体力が必要なことが多いため、体力作りにも力を入れています。例えば飲食店では、海外現地ではお客様がいない場合はそのまま休憩していたりもしますが、日本だとお客様がいないからといって休憩するわけではありません。


そうしたギャップを埋める意味でも、栄養価の高い給食の提供、ランニングや筋トレなども行っています。さらに、チームでの連帯責任についても教えています。一見昭和的で厳しい教育ですが、企業からは非常に評判が良く、外国人材の方からも「あの時走ってよかった」と感謝を伝えられることも多いです。


私たちは、日本での「期待値調整」を最重要視しています。上述のように自由を尊重するだけでは誰も成長しないと考え、ルールを厳しくし、一人ひとりの弱さに向き合い、1on1の面談を徹底しています。日本の習慣についても細かく伝えることで、働きだしてからのギャップがないように努めています。


弊社は送り出し機関における外国人材の教育にも積極的に関わり、求職者が日本で働くための準備がきちんと整っている状態になるよう、マネジメントを徹底しています。「教育が全て」という信念のもと、日本に来る前の人材教育にコミットしています。

「教育が全て」という信念

ーー先進的な取り組みを進めていらっしゃる登録支援機関としての立場から、もし同業者へのアドバイスがあればお願いします。

登録支援業務は労働集約型での業務ですが、サステイナブルに続けるのであれば、いかに支援内容に付加価値をつけ、成長可能な事業構造にしていくかが重要です。ただでさえ外国人の紹介や支援には日本人の2,3倍以上工数がかかると思うのですが、支援料の低さを価値として提供する例が多いと感じています。一方でただ値段を上げるのではなく、しっかり付加価値をつけて業界全体で好循環を生む環境を創らなきゃいけない。


私たちは、そのために、コンサルティング型の支援に注力しています。現場のオペレーションまで踏み込んでアドバイスしたり、特定技能2号までの育成プランとして日本語授業を提供するなど、付加価値をつけて外国人材、企業にとって意味のある支援を提供しています。支援コストの安さだけを重視した安易な値下げは、結果的に利益率を下げ、社内スタッフの平均給与の低下、そして社員のレベル低下や顧客からのクレームにつながり、結果的に悪循環に陥ります。


もう一つは、徹底した効率化です。社員教育による対応力の向上に加え、LINEやメッセンジャー、社内CRMなどのツールを活用し、外国人就労者との関係構築を短時間で実現する仕組みを構築しています。


特に力を入れているのがAIの導入です。支援業務における書類作成などは煩雑でミスが起きやすく、スプレッドシートやExcelでの管理では限界があるため、社内でシステムを開発し、ミスが起きないようなタスク管理ツールのようなシステムを構築中です。また、日々のコミュニケーションもAI化を進め、ミャンマー語、ベトナム語、インドネシア語に対応したチャットbotを作成し、AIが対応し、難しい場合にのみ人間が介入するという体制を目指しています。


弊社は「教育が全て」という信念のもと、教育にとてつもなく力を入れています。この仕事の面白さは、教育に深く介入し、外国人材から「本当にありがとう」「日本に来て活躍できたのはLivCoのおかげ」といった感謝の言葉を直接言っていただけることです。こうした言葉をいただけることで仕事への意義を見出し、喜びを感じる源泉となっています。この仕事を楽しみながら、外国人材と受け入れ企業双方にとって最善の支援を提供し続けていきたいと考えています。

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