北九州市外国人材就業サポートセンター主催ウェビナー<人材不足の時代を乗り越える!外国人材雇用動向 選ばれる企業になるには>

セミナー・説明会

2022年11月11日(金)に開催された、北九州市外国人材就業サポートセンター主催のウェビナー<人材不足の時代を乗り越える!外国人材雇用動向 選ばれる企業になるには>。高度外国人材、技能実習、特定技能、それぞれの在留資格に応じた現在の状況や受け入れる企業側の注意点など、多くの実例に精通した専門家が集いました。

崇城大学 就職課 課長補佐 前田 和則氏、協同組合福岡情報ビジネス 武藤 洋平 氏、BEENOS HR Link株式会社 代表取締役社長 岡﨑 陽介 氏、3団体それぞれの代表者が、<人材不足の時代を乗り越える!>というテーマについて解説しています。

[北九州市外国人材就業サポートセンター]北九州市内の外国人材の動向について

北九州市内の外国人材の動向については、北九州市外国人材就業サポートセンター 早水氏が解説しました。

外国人材が日本で就業するための在留資格

大学や大学院、専門学校などを卒業した留学生が技術・人文知識・国際業務で働くために取得するケースが多いのが【高度人材】です。【技能実習】は1年、3年、5年と限られた期間で実施されます。監理団体を通じて受け入れることが一般的です。【特定技能】は【技能実習】を3年以上修了した方、あるいは留学生等で指定された試験に合格した方が対象です。

北九州地区の外国人雇用の状況

留学生から【特定技能】に在留資格を切り替えて働く方の人数は着実に増えています。同時に、外食や飲食料品製造を行う企業や、介護施設からの相談も増えています。コロナ禍の入国制限の影響で技能実習生は人数が横ばいですが、2022年4月から新規入国が可能となったため、2023年は一気に増加すると考えられます。コロナ禍で帰国できなかった方が【特定活動】で在日期間を延長していたケースもあります。

産業別の労働者人口

北九州は製造業が盛んであるため、他都市と比べて製造業で働く外国人材が多い傾向にあります。また、建設業や卸売・小売業でも多くの外国人材が働いています。近年の特徴として、介護施設での需要が増えており、【高度人材】【技能実習】【特定技能】など在留資格の選択肢が多いため、採用・雇用の方法も施設によって様々です。

市内企業の外国人材活用状況

市内企業の外国人材活用は、まだまだ進んでいないのが現状です。しかし、人手不足の声が多く上がっており、外国人雇用に興味を示す企業が増えています。外国人材を雇用していない企業は受け入れ体制が整っておらず、言語に関してコミュニケーションの不安を感じているようです。

外国人材就業サポートセンターは、セミナーを通して企業側に外国人材雇用に関する知識・理解を深めてもらい、外国人材雇用のきっかけとなるような啓発活動を続けています。セミナー以外にも企業からの外国人材雇用に関する専門相談、【高度人材】の紹介を無料で行っています。外国人材雇用に関して、ぜひご相談ください。

北九州市外国人材就業サポートセンター
北九州市ホームページです。

電話:093-533-8133
FAX:093-533-8134
メール:job@kitakyushuymca.org

[崇城大学]高度人材の動向 留学生の推移を、現在の状況と照らし合わせの今後の予測

崇城大学 就職課 課長補佐 前田 和則氏は<高度人材の動向 留学生の推移を、現在の状況と照らし合わせた今後の予測>について解説。大学に勤めている前田氏だからこそ分かる、リアルな留学生の状況について知ることができる機会となりました。

地域、行政、企業などそれぞれの立場で体制の整備が必要

まず解説したのは、外国人労働者の概要について。外国人採用・登用で得られるメリットを4つの視点から分析。企業側から、外国人材側から、細かく分析されており、外国人材の雇用を検討している企業にとっては価値のある知見だったのではないでしょうか。

次に崇城大学における外国人留学生受け入れ状況について。外国人留学生にも大学、専門学校、日本語学校、高校など様々な形態があり、国費(日本)や外国政府、私費など費用負担も学生によって違います。「学位が高い」「留学期間が長い」という留学生が、必ずしも日本語のレベルや日本への愛着が高いわけではない、ということは採用時に抑えておいた方がいいポイントでしょう。

崇城大学の卒業生の約5割が日本国内の企業に就職をしており、残りの約5割は大学院へ進学、または母国へ帰国して就職をしています。北九州市の精密機器製造会社へ就職をしたバングラディッシュ出身のAさん、東京の情報システムの会社へ就職したインドネシア出身のBさんなど、具体例を交えながら解説が進んでいきました。

続いてコロナによる外国人採用への影響について。日本語教育機関における外国人留学生の受け入れ数は、2019年の8万人越えから2021年は約4万人と半減しています。日本語学校を経てから日本国内の大学に入学する留学生が多いため、日本語教育機関の生徒数が減少すると大学に進学する外国人留学生も減少します。2022年4月からは新規入国が可能となったため、数年後には以前の数値に戻っていくのではないでしょうか。ただし、すぐには前の数値には戻らないため、外国人留学生の採用計画をしている企業はこの点についても注意が必要です。

最後に、外国人材の展望(今後の高等教育機関における留学生受入)についてです。2008年に日本政府は留学生30万人計画を打ち出し、2019年に31万人を突破・達成しました。文部科学省が掲げる20年後の高等教育機関に対する展望は「多様な学生を受け入れていく」であり、留学生に対する枠は増加傾向にあります。留学生はますます増えていくのではないでしょうか。留学生との共生に向けて、それぞれの立場(地域、行政、企業など)で体制の整備が必要です。

崇城大学 就職課
課長補佐 前田 和則氏

大学卒業後、福岡、佐賀の日本語学校で日本語教師として勤務する傍ら、大学院で日本人と外国人留学生の協働授業について研究を行う。崇城大学の職員へ転職後、再度大学院へ通い、大学における外国人留学生受入戦略について研究を行う。2018年より現在の部署に所属。また、2022年4月からは公益財団法人地方経済総合研究所の特別研究員を兼務。2022年度熊本県外国人活躍促進支援事業を受託し、企業向け異文化理解・やさしい日本語講座を10月〜12月(10回)にかけて開講予定。

[協同組合福岡情報ビジネス]技能実習生の受入について〜技能実習制度概要と受入状況

約20年の実績がある協同組合福岡情報ビジネスは福岡を中心に活動している組合で、技能実習生の受入は事業内容のひとつです。そこで事業統括室長を務める武藤 洋平 氏は、<技能実習生の受入について〜技能実習制度概要と受入状況>というテーマで解説しました。

外国人材の熱心さに感心する日本の企業は多い

まずは技能実習制度の概要、沿革、目的について。成り立ちや制度の変化、それに伴う組織や制度の変革について説明がなされました。続いては、受入企業から見た技能実習制度について。協同組合福岡情報ビジネスは、実習生の入国前に、受入企業側と送り出し側で入念な確認をすることで、受入ミスマッチが起きないよう調整しています。面接、体力テスト、筆記テスト、手先の器用さをチェックするテストも行われています。

例えば溶接工の会社であれば、実際に溶接の実技を行い適正であるかを確認しています。日本への入国前、外国人材に現地で全寮制の教育センターに入ってもらい、日本語や日本での生活習慣、勤務のための心得について学習してもらいます。同センターで行っている入国後講習の内容も語られました。彼らの熱心さに感心する日本の企業は多いようです。

コロナ禍の影響で受入予定数が大幅に減少し、対応や臨時で行わなければならないことも多く、関係機関も求職者も大変に苦労が多かったのは事実です。2022年3月からは入国制限が緩和され、これまで400名ほどの入国が完了しています(2022年11月時点)。しかし、円安の影響で辞退する合格者も少なくないのが最近の状況です。ちなみに受入られる技能実習生の人数は、常勤職員数によって異なるため、自社が何人受入られるのか確認が必須です。

続いて受入企業の声について。受入によって得られた効果と課題について、現場の声を紹介しました。「礼儀正しく明るい挨拶で、職場に活気がでた」「地方では社員募集をしても応募がないなど厳しい状況が続いているが、技能実習制度があったことで計画的に採用を進めることができた。そのため、事業継続や事業拡大ができた」といったプラスの側面と、「職場でのコミュニケーションには日本語が欠かせないが、技能実習生によって差が生じてしまう」「対象職種を拡大してほしい」といったマイナスの側面、どちらもあります。

協同組合福岡情報ビジネスは実習生が各企業に配属された後も、日本でより暮らしやすくなるようオンライン日本語教語講座の開講、母国を離れて働いている実習生に対して誕生日プレゼントのお渡しも行っています。コロナ禍ではマスク、クオカード、クリスマスケーキのプレゼント、動画写真コンテストも実施。

最後にJICA資料<2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた取り組み調査・研究報告書>(2022年3月)について。日本の目標GDPを達成するための外国人労働者数の受入必要数が出されています。日本の労働力人口は減少傾向にあり、2015年(6632万人)から2040年(5853万人)にかけては11.8%減という予測です。外国人労働数の状況は2011年(65万人)→2020年(172.4万人)にかけて1074万人増という結果です。外国人労働者が占める割合は確実に増えています。労働環境が良く治安のいい日本の技能実習は送り出し国側からの評価が高い制度であるため、積極的に活用していただきたいところです。

協同組合福岡情報ビジネス
事業統括室長 兼 国際事業部事業部長 武藤 洋平 氏

佐賀県出身、慶應義塾大学経済学部卒。2004年に国際事業部の前身である海外研究生受け入れ業務に携わる。中国留学(大連市)の経験もあり、立上げ当初から中国送出し機関とのパートナーシップの確立、その後はベトナム、フィリピン、インドネシアから技能実習制度への移行、2017年の技能実習方への対応、2019年の特定技能制度の開始において、受入企業への適正な運用を推進するよう取組む。

[Linkus]特定技能人材の動向と、受入企業が注意すべきポイント

業務管理プラットフォーム[Linkus]を運営するなかで、登録支援機関、受け入れ機関、求職者、送り出し機関など様々な関係者と話す機会があるBEENOS HR Link株式会社 代表取締役社長 岡﨑 陽介 氏。<特定技能人材の動向と、受入企業が注意すべきポイント>について説明しました。

支援業務を委託する場合も制度理解を

本題に入る前に、まずは特定技能の制度やその現状、コロナ禍中の状況について、技能実習との違いにも触れながら解説しました。特定技能で人材採用が可能な分野は、2022年に14業種から12業種に変更されたため、それについても言及しています。また、コロナ禍でありながらも特定技能外国人数が増えていること、その背景には技能実習や留学生から特定技能へ切り替えているケースがあることにも触れました。

加えて、特定技能外国人が従事できる業種や職種、どういった方(国籍等)が求職者として仕事を探しているのか、特定技能の雇用スキーム・流れ、具体的な支援内容に、話を広げさせていただき、最後に雇用側が注意すべき点や現場の声について触れさせていただいております。

外国人材を採用する際に企業側が注意すべき点についてですが、1つ目は「自社支援の希望が通らない」です。登録支援機関への委託は任意であり自社での支援を希望しても状況や体制によって入管から許可が降りないケースもあります。2つ目は「委託の前に制度理解はしっかり」です。自社で雇用する従業員に関わることなので、外部に支援業務を委託するとはいえ、制度について理解した上で委託をするようにしましょう。3つ目は「委託でも企業がやるべき内容がある」です。委託をしても雇用企業側でやるべき事はあります。委託先の「何も知らなくても大丈夫」という言葉にはご注意ください。

特定技能外国人雇用・管理を行ううえで、日々の業務だけでなく日本での生活をサポートする様々な準備・支援が義務付けられています。それらに対する[Linkus]の活用方法についてのご提案をさせていただきました。最後に、[Linkus]に登録をしている海外人材(求職者)の皆さんのご意見についてもお伝えしました。

Linkusの求職者を対象にアンケートを実施

現在、[Linkus]に求職者として登録している海外人材は約5,000名を超えています。その求職者を対象にアンケートを実施しました。その中には技能実習を修了(または修了予定)した方も含まれており、現在持っている在留資格は技能実習が圧倒的に多く、職種をみてみると介護の現場で既に働いている方は少ないのが現状です。

このアンケートでは、職場でのコミュニケーションについては、「仕事についてもプライベートについても話さない」が46%、「仕事についてのみ話す」14%、「仕事以外もよく話す」40%という結果になりました。60%がプライベートの話をしないというのは、少し寂しい結果に感じられます。登録支援機関や受け入れ企業は職場でのコミュニケーションを円滑にし、人材の定着について考えるのであれば、この辺りも配慮していただくことが必要ではないでしょうか。

住居については「家賃が高いと困る」という意見が多くみられました。技能実習生などは複数名でひとつの部屋に住んでいる場合も少なくないため、ひとり部屋が欲しいという方も多いです。

就職・転職時の希望する条件については少し意外ですが、「給与以外が重要」という回答が最も多い結果でした。単なる出稼ぎではなく、「自身の夢を叶えるために特定技能での就労を目指す」というような声も少なくないため、面接時に彼らの希望に関してしっかりとヒアリングをしながら、両者でマッチングを図っていくことが重要です。また、日本での生活で大変だと感じたことは、銀行や役所・携帯電話、水道、ガスなどの「様々な契約」でした。雇用時には職場だけでなく、生活についてサポートできる体制を整えておく必要があります。

BEENOS HR Link株式会社
代表取締役社長 岡﨑 陽介 氏

BEENOS HR Linkの代表取締役として、事業構築からサービス企画・営業などを統括。前職までは芸能事務所で プロモーション企画やメディア開発を行う。2015年BEENOSのグループ会社であるモノセンスに入社、コラボ商品企画やモノセンス内新規事業を担当。BeeCruiseに転籍し、[Linkus]を立ち上げ、2020年7 月にサービス提供を開始。2022年8月時点で、求職者アカウントは5,000名超。
・2020年12月 にBEENOS HR Link株式会社を設立し、代表取締役社長に就任
・2021年7月〜国際協力機構(JICA)課題アドバイザー

まとめ

今回のウェビナーでは、崇城大学、共同組合福岡情報ビジネス、BEENOS HR Link株式会社、3団体それぞれの代表者が、<人材不足の時代を乗り越える!>というテーマについて解説しました。特定技能外国人の受け入れ件数や、介護職員の必要数について、調べればグラフや数値を見ることはできます。しかし、それぞれの立場からの視点や、現場で得た感覚を交えた話を聞くことができるのは、なかなかない機会ではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました