
外国人が日本に入国する際に必要な在留資格は、目的に応じて様々な種類と申請方法があります。日本に入国するすべての外国人が対象となるため、その種類も申請方法も千差万別。ここでは、外国人を雇用する際に、まず検討する項目として挙がる在留資格について解説します。


在留資格について
在留資格とは、外国人が日本に在留するために必要な資格です。外国人が日本に来る目的は人によって様々で、それに応じた期間の申請を行い、日本国から取得します。例えば、観光目的のような短期滞在の場合、日本と友好的な関係にある国からの入国者であれば、空港の審査のみで滞在することができます。
しかし、これは短期の場合のみに限ります。外国人は目的がない状態で、日本に長期滞在することができません。この時に必要となるのが「滞在目的に応じた」在留資格です。ぜひ、こちらの記事もご参考にしてみてください。

ビザ(査証)と在留資格の違い
ビザ(査証)と在留資格を混同している方も多いかもしれませんが違うものです。ビザとは、外国人の母国にある日本大使館が、来日希望者の犯罪歴の有無などを審査し、「日本に入国できる」と認定した推薦状のことをいいます。ビザは日本に来る前に取得するもので、日本大使館が発行する公文書となりますので外務省の基準で審査が行われます。在留資格を取得する際にも必要です。
対して在留資格は、法務省管轄の出入国在留管理局が日本に居住するための審査を行った後に発行される文書です。
ビザがない状態でも来日が可能とされる短期滞在よりも、少し長い期間の滞在時に使用されるのが在留資格「短期滞在」です。必要になるケースは90日以内(やむをえない理由があれば1度に限って更新できるが最長180日)の滞在です。
一年以下の短期滞在であれば、短期滞在ビザと空港での入国審査で、日本での滞在が可能なケースも多いです。しかし、日本で留学や仕事をする場合は1年以上滞在することが予想されるため、ビザと合わせて在留資格が必要です。
在留資格一覧
法務省が掲げている「日本に滞在するための在留資格」は、2019年11月現在、29種類あります。これらは、留学や就労を目的とした日本在住が目的となる「活動類型資格」と、永住が認められた外国人の家族に代表される「地位等類型資格」に大きく分けられます。
活動類型資格は、外国人が母国でビザを発給された後、在留資格を取得する手順を踏んで発行される在留資格です。地位等類型資格は活動類型資格を取得した外国人の家族や、日本人と結婚した人など、受動的に日本滞在の資格が取得される人に与えられる在留資格です。
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在留資格は日本に来る外国人全てを対象としているため、様々な事例に対応できるよう多くの内容が簡略的に書かれております。以下では、一覧表の記載で分かりづらい部分や、よく使われる在留資格について解説します。
高度専門職
政府の外国人雇用の促進を目的とした在留資格で、学歴や職歴、収入などを審査し、審査の際に提出するポイントに応じて高度専門職1号(イ、ロ、ハ)、2号に分類される在留資格です。
この在留資格は、1号は5年という期限が設けられていますが、2号は無期限での在留が認められています。
技術・人文知識・国際業務
日本の大学を卒業し、日本企業で働く外国人の多くはこの在留資格を取得しています。大学生として来日している外国人は留学の在留資格をすでに取得しているので、大学卒業の書類などを出入国在留管理局に提出し、在留資格の切り替えを行います。
目的に応じて在留資格は切り替えるなどの申請を都度行う必要が出てくるので、外国人雇用の際には注意しましょう。
特定技能、技能実習
外国人の雇用として、よく出てくる在留資格が技能実習です。これは、日本で技能を身に着けたいと思っている外国人が日本の工場や農家などで就労し、一定期間で技能を身に着けるための実習を受けるための在留資格です。
特定技能は近年創設された技能実習の延長線上の在留資格で、技能を持った外国人人材が産業の人材不足に対応するため、一定期間、日本で就労することを許可する在留資格です。
技能実習は実習が目的の在留資格なのに対して、特定技能は就労が目的の在留資格という違いがあります。
短期滞在
ビザと在留資格の違いという項目で解説した短期滞在についても、厳密にいえば在留資格が存在します。どの程度の期間が短期滞在に当たるのか、というのは国によって異なりますが、日本の場合、90日以内という基準があります。
留学
日本の学校に入学し、日本で学校に通学するために在住することを目的とした在留資格です。この在留資格は単身で日本に来て学校に入学する人のための在留資格です。日本に在住する外国人の家族などが日本の学校に入学する場合は、家族滞在の在留資格が適用されます。
ちなみに、日本語学校に通い、留学の在留資格を持っている外国人は、コンビニエンスストアや居酒屋等で働くことができます。ただし、全面的な就労は認められておらず、学業に支障がない範囲での生活費を工面するための就労に限られています。(これは資格外活動と呼ばれる特例です)コンビニエンスストアや居酒屋で働くために来日ができる在留資格は現時点では存在しません。よく間違われますので、接客業や飲食業などで外国人を雇用する場合には十分注意してください。
特定活動
法務大臣が個々の外国人について許可するという、非常に曖昧な在留資格の基準となる特定活動です。ベトナムやフィリピンは日本と経済連携協定(EPA)を締結しており、その中の項目で、看護師と介護福祉士の人材受け入れというものがあります。これは、通常の看護師や介護福祉士として日本で働くこととは別に、資格を持たない状態で日本に来て、働きながら資格取得の勉強をするための在留資格を指します。これはEPAを締結している国との間の特例措置です。
2020〜2022年の間は、新型コロナウイルスの影響により、技能実習の在留資格を持った外国人が実習期間の満了に伴い帰国しなければならないものの、国境封鎖などの対策により母国へ帰国できないケースが多くありました。彼らが、帰国できないばかりに不法滞在となってしまわないよう、特定活動に切り替えを行う暫定措置が取られたことが話題となりました。
各種申請一覧
在留資格を取得するには、まず各地域の出入国在留管理局に「在留資格取得許可申請書」を提出します。申請書を提出後に出入国在留管理局の審査に入りますが、申請する在留資格に応じて提出すべき書類が異なります。
ここでは主だった在留資格の申請時に必要な提出書類を一覧にしました。
同じ在留資格の申請でも地域の出入国在留管理局等で求められる資料が異なる場合もあります。
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日本での活動内容に応じた資料【在留資格認定証明書交付申請】(法務省HPより抜粋)
上記にある通り、在留資格取得許可申請書の他に様々な添付書類が必要です。
特に特定活動の在留資格は個別での事例の幅が広いため、適用を受けたい特定活動の在留資格の目的によって提出する書類が大きく異なります。
就労可能な在留資格は、源泉徴収票や在籍証明書などといった勤務先から発行される収入に関する書類が多いのが特徴です。これは日本できちんと働いていることを証明する書類であり、勤務先との連携が重要です。
また、特定技能や技能実習などの在留資格は、入国する外国人を一括で管理する監理団体や登録支援機関などが申請することが技能実習法等の法律で定められています。立場の弱い技能実習生が勤務先から不当な扱いを受けた場合、監理団体が実習生に代わって勤務先を指導するといった措置が取られることを目的としています。
これらの在留資格は、日本の入管へ在留資格の申請をし許可(交付)されたら、母国の日本大使館にてビザの手続きをします。
申請に掛かる期間
在留資格の申請を行い、取得するまでの期間は、1か月程度の審査期間を必要としています。(出入国在留管理局の繁忙期と重なると1か月以上かかる場合もあります。)これは、申請時に必要書類がすべて揃っているという状態で申請した場合の最短期間です。
申請時に提出書類がそろっていない等の理由で、追加資料を後日提出する等の追加対応を行うと、その分申請期間が延びることになります。在留資格の申請については、在留資格申請を得意とする法律事務所や行政書士事務所に事前に相談をするのがおすすめです。
申請は大変!けれど、外国人雇用のためには必須
外国人を雇用する場合、必ず在留資格に関するの問題が出てきます。在留資格にまつわる様々な問題は外国人本人だけのものではありません。外国人を雇用する企業が在留資格の期限切れに気づかずに雇用をし続けた場合、不法滞在をほう助したということで罰則の対象となります。
外国人を雇用する企業も在留資格の期限等には常に気を配り、期限間近となったら本人に申請を促す等の配慮が必要です。その際に必要な申請書類や、いつまでに申請をすればよいのかという申請期間を念頭に置いて雇用を行うという必要が出てくるでしょう。
在留資格の管理は慣れるまでが大変ですが、今後の国際化を見据えた社会においては必要な事務手続きのひとつ。少しずつ知識を深めておきましょう。
まとめ
在留資格とよく混同されるビザは、母国で「日本に入国できる」と認定した推薦状のようなもの。各国の日本大使館が発行する公文書です。一方、在留資格とは外国人が日本に在留するのに必要な資格。法務省管轄の出入国在留管理局が日本に居住するための審査を行った後に発行される文書です。
在留資格を取得するには、まず各地域の出入国在留管理局に「在留資格取得許可申請書」を提出します。申請する在留資格に応じて提出すべき書類が異なります。
在留資格の申請をしてから取得するまでの期間は、1か月程度とされているものの、状況によって前後するため余裕を持って申請してください。