在留資格認定証明書交付の申請から入国まで押さえておくべきポイント

在留資格

【監修】

JAPAN行政書士事務所

小山 翔太

大学卒業後、証券会社勤務を経て独立開業。行政書士として在留資格(ビザ)申請及び外国人雇用コンサルティングを専門とする。特定技能制度及び登録支援機関運営についてのセミナーも多数開催している。

外国人が日本に滞在して就業などの活動を行うためには、活動の目的に応じた在留資格が必要です。在留資格は外国人が日本に滞在するための許可を示したものです。在留資格を得ないまま日本国内に長期間滞在すると、不法滞在として刑事罰を受ける可能性があります。

在留資格には、例えば「留学」や「研修」といった本人の学びを目的としたもの、「医療」「教育」など特定分野での就業を目的としたもの、あるいは「日本人の配偶者等」など、身分に基づいたものなどがあります。

これらの在留資格は法務省から取得するもので、日本に住む外国人にとって大変重要です。在留資格の取得は日本へ上陸する際に行うものとされていますが、本人が日本に到着する前に、予約のような形で事前に申請しておくことができます。それが、ここで紹介する在留資格認定証明書交付申請の手続きです。

在留資格とは

外国人が日本に中長期滞在して活動するためには、在留資格を取得する必要があります。その種類は様々で、どのような在留資格が存在するかに関しては、「出入国管理及び難民認定法」にて定められています。

ただし、滞在を認められても、就労が無制限で許可されるわけではありません。在留資格の種類によって就労が認められるものと認められないものがあります。就労が認められる在留資格のほとんどは、就労できる業務が限られています。また、1人の外国人が同時に保有できる在留資格は1つのみです。特定の在留資格を保有すると、原則他の仕事で収入を得ることはできません。他の仕事を行いたい場合には、別のタイミングで新たに在留資格を取得するか、「資格外活動」の許可を出入国在留管理庁から取得する必要があります。

在留資格一覧

在留資格は「活動系」と「身分系」の2種類に大別されます。この章では、それぞれについて一覧形式でご紹介します。

活動系在留資格

就労系在留資格とは、日本国内での仕事内容によって分類された在留資格です。

◆就労が認められている在留資格:
下記に当てはまる在留資格を保有していれば、限られた範囲内で業務を行うことができます。

在留資格該当例在留期間(最大)
外交外国政府の大使、公使、総領事外交活動の期間
公用大使館・領事館の職員や国際機関等から公の用務で派遣された方15日〜5年
教授大学教授3ヶ月〜5年
芸術作曲家、画家3ヶ月〜5年
宗教宣教師3ヶ月〜5年
報道記者、カメラマン3ヶ月〜5年
高度専門職ポイント制による高度人材5年(2号は無期限)
経営・管理経営者、管理者3ヶ月〜5年
法律・会計業務弁護士、公認会計士3ヶ月〜5年
医療医師、歯科医師、看護師3ヶ月〜5年
研究研究者3ヶ月〜5年
教育語学教師3ヶ月〜5年
技術・人文知識・国際業務機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、マーケティング業務従事者3ヶ月〜5年
企業内転勤外国事業所からの転勤者3ヶ月〜5年
介護介護福祉士3ヶ月〜5年
興行俳優、歌手、プロスポーツ選手15日〜3年
技能調理師、パイロット、貴金属の加工職人3ヶ月〜5年
特定技能特定技能外国人4ヶ月〜1年(1号)、6ヶ月~3年(2号)
技能実習技能実習生1年〜5年
参考:在留資格一覧表(令和2年9月現在) 出入国在留管理庁

◆就労が認められない在留資格:
下記に当てはまる在留資格を持つ外国人は原則就労できません。ただし、資格外活動が許可されると、許可の範囲内で就労できます。

在留資格該当例在留期間(最大)
文化活動日本文化の研究者3ヶ月〜3年
短期滞在観光客、会議参加者15日〜90日
留学学生3ヶ月〜4年3ヶ月
研修研修生3ヶ月〜1年
家族滞在在留外国人が扶養する家族3ヶ月〜5年
参考:在留資格一覧表(令和2年9月現在) 出入国在留管理庁

◆特定活動:
特定活動とは、法務大臣が個々の外国人に対して個別に指定する活動です。一部のケースを除き、特定活動の在留資格を持つ外国人には就労が許可されます。

在留資格該当例在留期間
特定活動ワーキングホリデー、外交官の家事使用人3ヶ月〜5年
参考:在留資格一覧表(令和2年9月現在) 出入国在留管理庁

身分系在留資格の一覧

身分系在留資格とは、対象となる外国人の身分に応じて交付される在留資格です。身分系在留資格を持つ外国人は、国内での就労が制限なしに認められています。

在留資格該当例在留期間
永住者永住の許可を受けた人無期限
日本人の配偶者等日本人の配偶者、子供6ヶ月〜5年
永住者の配偶者等永住者の配偶者、子供6ヶ月〜5年
定住者第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人6ヶ月〜5年
参考:在留資格一覧表(令和2年9月現在) 出入国在留管理庁

在留資格認定証明書交付申請とは

在留資格は原則、日本への滞在を希望する本人が日本国内において取得を希望し、手続きをして得ることができます。しかし、事前に規定の手続きを取れば、日本に上陸した際、在留資格を許可する予定である旨の証明書を取得できます。まずは、この在留資格認定証明書と交付の申請について紹介します。

在留資格認定証明書とは

在留資格認定証明書とは簡単にいうと、申請者である外国人が日本に上陸した際に、在留資格を許可する予定である旨を証明する書類です。この証明書は、まだ正式な在留資格とは言えませんが、これを所持していることで、在留資格を取得する要件を満たしているということを証明するための書類です。この証明書があることで、ビザの取得や在留資格の取得の際など、入国に関わる様々な手続きを円滑に進めることができます

在留資格認定証明書とビザ(査証)の違い

在留資格認定証明書と混乱しやすいものに、ビザがあります。これらはいずれも外国人が日本に入国する際に取得するものですが、明確に異なるものです。

まず押さえておくべきポイントは、在留資格認定証明書とビザでは発行機関が異なることです。在留資格認定証明書は法務省が発行しますが、ビザは外務省の管轄です。ビザは、日本への入国を希望する外国人の入国を推薦するため、外務省が発給するものです。ビザの発給を受けた場合、入国に必要な要件を満たしていること・有効なパスポートを有していることなどが判断されたことになります。

日本に入国するためにはビザが必要ですが、ビザがあるからと言って必ず入国できるという保証はありません。外務省がビザを発給しても、在留資格の審査において法務省の許可が下りないということはあり得ます。

一方、在留資格認定証明書は、法務省が事前に在留資格の審査を行い、入国の際には在留資格を発行することをすでに認めていることを証明するものです。入国の際に在留資格を得られる予約票のようなものと理解することができます。この証明書を有している外国人は在留資格を得られる予定ですが、そのためには別途ビザを取得して日本へ渡ってくる必要があります。

在留資格認定証明書を取得する意義

ここまでの説明を読んだうえで、「在留資格認定証明書はなぜ必要なのか?」を疑問に思われたかもしれません。この証明書はあくまで在留資格を得ることができる予約の証明であり、証明書単独で何かしらの効力を持ったものではありません。

在留資格認定証明書を取得する最も大きな意義は、滞在を希望する外国人本人の来日より前に、在留資格の審査を終えることができるという点にあります。逆に言えば、在留資格を得られることが分かってから日本へ訪れることができるということです。

日本の在留資格は在外公館などでは申請できず、必ず日本国内で申請しなければなりません。そのため、証明書を取得しない場合、滞在を希望する外国人が来日して手続きを行なう必要があります。

来日直後にこのような手続きを行うことは、外国人にとって大きな負担ですし、在留資格が認められなかった場合、日本に滞在できないということになります。本人の来日に先駆けて、日本国内の代理人がこの証明書を取得しておくことができれば、本人は滞在許可が約束された状態で、安心して来日できるでしょう。

在留資格認定証明書取得の流れ

ここからは、在留資格認定証明書を取得するための実際の申請の流れや、取得から入国までの流れについて説明します。なお、申請に必要な書類と記入例については別の記事で詳しく説明しています。併せてご覧ください。

在留資格認定証明書交付の申請から取得まで

在留資格認定証明書を得るためには、次のような流れで申請・手続きを行います。

(1)必要書類の準備
在留資格認定証明書交付の申請には申請書のほか、活動内容に応じた必要書類を準備する必要があります。会社の経営資料や本人の学歴に関する証明書など、取得に時間がかかる書類が含まれる可能性もあります。申請することを決めたら、できるだけ早めに必要書類を確認し、準備を始めましょう。
(2)窓口へ申請
必要書類を全て揃え、地方出入国在留管理官署へ申請します。なお、地方出入国在留管理官署へ申請する場合、在留を希望する本人の居住予定地あるいは受け入れ機関の所在地を管轄する署での申請が必要です。
(3)証明書の受け取り、もしくは不交付の説明
証明書の交付が許可された場合、日本国内の申請人あるいは代理人宛に証明書が送付されます。証明書の発行にあたって、手数料は必要ありません。万一不交付となった場合、不服申し立ての方法はありません。ただし、再申請は可能です。不交付理由に基づき、書類を追加あるいは修正するなど対策を講じ、再申請に向けて準備を進めるのが良いでしょう。

在留資格認定証明書取得後の流れ

在留資格認定証明書の取得から入国までの流れは次の通りです。

(5)証明書を本人へ配送
証明書は原則日本国内の住所へ郵送されます。代理人は受け取った証明書を本人へ送付します。
(6)在外公館にて本人がビザを申請
証明書を受け取ったら、本人が居住国(地域)を管轄する在外日本公館にてビザの申請を行います。この時、受け取った証明書を添付することでビザの審査がスムーズになります。
(7)ビザの受け取り・渡航準備
ビザが発給されたら、日本への渡航準備を行います。
(8)日本への渡航、上陸・入国審査
日本への到着時にはまず入国審査を受けます。その際、パスポート・ビザ・在留資格認定証明書を提示します。
(9)在留カード受け取り
入国許可が下りたら、在留資格認定証明書を提示し、在留資格を取得します。手続き完了後、在留カードを受け取ることができます。成田空港など一部の国際空港では、その場で在留カードを受け取ることができます。それ以外の空港や港に上陸した場合は、居住予定の市区町村に居住の届け出を提出した後、郵送で受け取ります。

在留資格認定証明書交付申請にかかる期間

法務省によると、在留資格認定証明書の申請から交付までの標準処理期間は1〜3ヶ月とされています。必要書類の中には発行に時間がかかるものが含まれる可能性がありますから、実際に準備を始めてから受け取るまでの期間はさらに長くなります。

入国を予定しているタイミングに間に合うよう、できるだけ早くから準備を始めましょう。

在留資格認定証明書交付申請を行うことができる人

法務省によると、在留資格認定証明書の交付申請を行うことができるのは、次のいずれかに該当する人です。

1.申請人本人(日本への入国を希望する外国人)
2.当該外国人を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める代理人
3.次の(1)〜(3)のいずれかに該当する申請取次者
(1)外国人の円滑な受け入れを図ることを目的とする公益法人の職員で地方出入国在留管理局庁が適当と認めるもの
(2)地方出入国在留管理局長に届け出た弁護士または行政書士
(3)申請人本人の法定代理人

在留資格認定証明書申請で注意すべきポイント

在留資格認定証明書の取得にあたり、注意が必要な3つの点を紹介します。

必ずビザが取得できるというわけではない

最初にも書いた通り、在留資格や在留資格認定証明書は法務省の管轄ですが、ビザの発給は外務省の管轄です。そのため、在留資格認定証明書があるからと言って、100%ビザが発給される保証はありません。「証明書はあるのにビザがないので入国できない」という事態を防ぐため、ビザの申請も丁寧な準備と不備のない申請を心がけましょう。

証明書発行から日本入国までの期限がある

在留資格認定証明書には有効期限があり、発行から3ヶ月以内に日本へ入国しなければならず、この期限を過ぎると無効となります。

日本への入国の日が決まっている場合はそこから逆算して、あまり早めに申請し過ぎないよう調整が必要です。証明書を取得後はできるだけスムーズに渡航できるよう、あらかじめできる準備は進めておくことも大切です。

代理手続きのため、時間がかかる

証明書交付の申請は日本国内で行う必要があるため、雇用予定の会社の社員など、代理人が手続きを行うケースがメインとなります。申請に関わる書類には本人が用意するものと、会社が用意するものがあり、申請にあたっては本人と代理人のコミュニケーションが大変重要です。

しかし、海を越えてのコミュニケーションは何かと複雑なこともあり、思ったよりも時間がかかってしまうケースも多々見られます。入国までに間に合わなかった・入国前に有効期限が切れてしまったなどということにならないよう、密なコミュニケーションを心がけ、余裕を持ったスケジュールで進めましょう。

また、インターネットや各種ツールを利用し、コミュニケーションを円滑にする工夫も大切です。linkus(リンクス)では、海外にいる外国人と日本国内の代理人がコミュニケーションをとりやすくするための様々な機能を提供しています。ミスコミュニケーションや書類不備で無駄な時間を取られることを予防することもできます。ぜひ活用してください。

まとめ

在留資格認定証明書は、これがなければ入国できないというものではありません。証明書を持たずに日本へ上陸し、在留資格を申請することもできます。しかし、その場合は日本についてから、在留資格の取得のため複雑な手続きを踏まなければなりません。

一方で在留資格認定証明書を事前に取得していれば、本人の入国後の手間や負担は大幅に軽減されます。日本国内での経験がない、あるいは少ない外国人にとって、入国直後から様々な手続きに頭を悩まされる必要がないという点は、大きなメリットであり安心につながるポイントと言えます。

スムーズでストレスのない入国と滞在、そして就業につなげるため、できるだけ事前の取得をサポートできるよう準備しておきましょう。

 

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