在留資格「介護」の取得と介護分野の現状、海外人材の採用やステップアップについて

在留資格

ここ数年、日本の人材採用は売り手市場といわれており、多くの業界や企業が労働力不足に悩まされています。特に介護分野の人材不足は深刻で、職員が足りないために“入居待ち”を余儀なくされている利用希望者も大勢いらっしゃいます。

そんな人材不足を解消するために、外国人人材の採用をお考えの施設や担当者さんも多いことでしょう。ここでは、介護分野における外国人人材の採用方法や要件、資格取得や資格変更に関するステップアップについて解説します。

日本国内における介護分野の現状

少子高齢化が顕著な日本では、これから5年以内に30万人を超える介護職員の人材不足が予想されています。「職員を募集しても応募が極端に少ない」、または「全く応募がない」という状態が通例となってしまっているようです。加えて介護分野は他の業種と比べて離職率が高いことも、人手不足に拍車をかけている要因と考えられます。その結果、入所者に対応できるスタッフが足りず「(入居者を)受け入れることができない」という施設も少なくありません。

特に人口の少ない地方の施設や、都心であっても中小規模の施設はこの課題が深刻な傾向にあり、早急な対策が求められています。こういった状況下で、大きく期待が寄せられているのが「外国人人材の採用」です。日本国内で応募者を募っても働き手が見つけられない現状ゆえに、外国人人材の労働力確保を積極的に検討する組織や企業が増えているのです。

介護に従事する外国人の受け入れ

費用をかけて働き手を募集しても応募がなく、スタッフを採用することができない状況。このような介護分野の現状を踏まえると、一刻も早い外国人人材の確保が求められるのもうなずけます。介護分野における外国人人材の受け入れ方法はこちらです。

・EPA(経済連携協定)の候補者として
・在留資格「介護」を取得
・在留資格「特定技能」を取得
・在留資格「技能実習」を取得

上記に加えて日本国内にいる留学生(日本語学校/介護福祉専門学校)や永住者等も候補として挙げられます。ただし、元から日本国内にいる外国人には限りがあるため、問題を解決するほどの職員数を集めることは難しいでしょう。

ここからは、介護分野におけるEPA、在留資格「介護」、在留資格「特定技能」、在留資格「技能実習」のそれぞれについて詳しく解説します。

EPA(経済連携協定)の候補者として

EPA(経済連携協定)に基づいて、日本国内の介護施設で就労・研修を受けながら介護福祉士の資格取得を目指す外国人の方は「EPA介護福祉士候補者」と呼ばれています。現在、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3ヶ国から受け入れを実施しています。ここで注意しなければならないのは、EPAでの候補者の受け入れは労働力不足への対応ではなく、二国間の経済活動の連携強化が目的であるという点です。そのため「EPAに基づき公的な枠組みで特例的に行われるべき」とされています。

そもそもEPA(経済連携協定)とは

EPAはEconomic Partnership Agreementの略で「経済連携協定」と呼ばれています。これは、特定の国や地域の間で貿易や投資を促すために、様々な約束を取り交わす条約。人やモノ、お金を介した交流を通して、二ヶ国(または地域)間がより良い関係を築くために結ばれます。

候補者の資格取得方法

日本国籍の方の場合、介護福祉士の資格を取得するためには学校を経た後、国家試験に合格すると介護福祉士として働くことができます。EPA介護福祉士候補者が資格を取得するためには、候補者の条件と、決められた日本語能力の基準をクリアしなければなりません。その要件は出身国によって少し違います。

◆インドネシア・フィリピン出身者
・出身国の候補者条件を満たしていること
・来日前に日本語研修を受けること(6ヶ月)
・日本語能力試験(N5程度以上)の取得
・来日後の日本語研修(6ヶ月)を受けること
・受け入れ施設で業務研修を受けること

◆ベトナム出身者
・出身国の候補者条件を満たしていること
・来日前に日本語研修を受けること(12ヶ月)
・日本語能力試験(N3程度以上)の取得
・来日後の日本語研修(2.5ヶ月)を受けること
・受け入れ施設で業務研修を受けること

上記をクリアしたうえで国家試験に合格すると、介護福祉士の資格が取得できます。EPA介護福祉士候補者として日本に滞在できる期間は4年とされていますが、最終年度で不合格だった場合、滞在延長(1年)が認められています。

※国籍にかかわらず、日本語能力試験N2以上に合格すると、訪日前と訪日後の日本語研修が免除されます。(おすすめの日本語学習方法についてはこちら

EPA介護福祉候補者の受け入れ施設とは

資格取得の条件に「受け入れ施設で業務研修を受けること」ありますが、この場合の主な受け入れ施設は以下です。

・特別養護老人ホーム
・養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・介護老人福祉施設
・介護療養型医療施設
・障害者施設
・デイサービス

なお、令和2年4月1日の法務省令改正により、EPA介護福祉士から 在留資格「介護」への変更も認められるようになりました。(在留資格変更にあたって書類の提出が必要)

在留資格「介護」として

2017年9月から認められた在留資格「介護」を取得するには、介護福祉士の資格が必要です。外国人留学生として日本に入国し、日本の介護福祉士養成施設(2年以上)を卒業した後、介護福祉士の資格を取得します。その後、「留学」だった在留資格を「介護」に変更することでし、介護福祉士として現場で働くことができるようになります。在留資格「介護」は受け入れ国の制限や在留期限に制限がありません。条件を満たしていれば長く日本で働くことができます。

在留資格「介護」取得の要件

なお、在留資格「介護」を取得するには以下4つの要件を満たすことが必要です。

・国家資格「介護福祉士」の資格を取得していること
・介護を行っている日本の会社と雇用契約を結んでいること
・職務内容が「介護」または「その指導」であること
・同じ職務に従事する日本人と同等かそれ以上の報酬額を受けること

外国から資格取得済みの人材を呼ぶことも可能

日本の国家資格を取得している外国人人材で、出身国に帰国している方もいらっしゃいます。そういった人材が再び日本で働きたい場合、介護施設/企業は外国人人材を日本に呼び寄せることが可能です。

その際にまず必要なのは、外国人本人と介護施設(日本国内)とが雇用契約を結ぶこと。さらに、外国人本人から「介護福祉士国家資格登録証」を始めとする必要書類を送付してもらい、それを入国管理局に提出・申請します。書類に不備がなければ、無事、在留資格「介護」が取得できます。

在留資格「特定技能」

特定技能」は人材不足が深刻である14業種に従事することが認められる在留資格です。(特定技能についての記事はこちら)技能実習のように教育や技術を伝えることが目的ではありませんし、EPAや在留資格「介護」のように国家資格の取得や保持が要件とされていることもありません。現場の人手不足をいち早く補う即戦力となり得ます。

ただし、希望があれば誰でも無条件で受け入れられるわけではありません。外国人人材は介護の現場で働くことができる技能と日本語力が求められ、在留資格「特定技能」取得のためには一定以上の能力を証明する必要があります。そのために用意された4つの方法は以下です。

【1】介護技能と日本語能力の試験に合格する

◆介護技能評価試験:
「介護業務の基礎となる能力や考え方に基づき、介護施設利用者の心身の状況に応じたケアを、一定程度実践することが可能であるか」を技能水準としている試験です。

◆日本語試験1:
「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験N4以上」のことを指します。日本語で生活に支障がない程度の日常会話ができる能力があることを証明します。

◆日本語試験2:
「介護日本語評価試験」のことを指します。介護の現場で業務に従事するにあたって、支障がない日本語能力を有することを証明します。

【2】介護福祉士養成施設を修了する

社会福祉士および護福祉士法に基づいて認可された介護福祉士養成施設を修了すると、「介護技能や日本語能力が十分である」と認められ、「【1】介護技能と日本語能力の試験に合格すること」で挙げた試験が免除となります。

介護福祉士養成施設に入るには、日本語教育機関にて6ヶ月以上の日本語教育を受けることが要件とされています。また、養成施設では指定水準を満たすカリキュラムが用意されており、修了時には必要な知識や技能が身についていると考えられるためです。

【3】EPA介護福祉士候補者から在留資格を変更する

EPA介護福祉候補者として来日した後、厚生労働省の認めた施設で修学・研修のために4年間従事した外国人人材は、介護技能や日本語能力が十分に備わっていると考えられるため、「【1】介護技能と日本語能力の試験に合格すること」で挙げた試験が免除となります。

【4】技能実習2号を良好に修了する

第2号技能実習は特定技能「介護」の要件と同様の水準にあると考えられるうえに、修了までに3年間日本で暮らすことになるので、日本語能力も十分とみなされます。よって、第2号技能実習を良好に修了した技能実習生は、十分な介護技能や日本語能力を有すると認められるため、「【1】介護技能と日本語能力の試験に合格すること」で挙げた試験が免除となります。

特定技能外国人が介護分野で活躍するまでには様々なルートがあります。受け入れのためのやり取りや情報共有を円滑にし、手間のかかる書類手続をサポートするLinkus(リンクス)をぜひご活用ください。

在留資格「技能実習」

技能実習制度の主な目的は「開発途上国への技術移転」です。技能実習生を受け入れるにあたって、企業側の都合だけを考えるのではなく、実習生にとってもメリットが得られるよう配慮しましょう。

技能実習生になるための要件

◆介護技能:
・介護施設等で高齢者や障害者の日常生活の補助や機能訓練といった実務経験がある
・看護過程を修了した、あるいは看護師資格を保持している
・介護士認定等を受けた

◆日本語能力:
・日本語能力検定試験N4以上に合格

受け入れ企業の要件

技能実習の目的は「日本の技術を習得して自国で役立てること」であるため、実習生への指導がしっかりと行き渡ることが要件です。

・事業所設立から3年以上経過している
・看護師または職務経験5年以上の介護福祉士を指導員とする(実習生5名に対して1名以上)
・実習生の適切な指導のために訪問介護施設は受け入れ不可

実習生1号から2号へ

来日してからの1年目は「技能実習1号」とされ、講習を受けてから介護事業所等へ配属されます。この講習は1〜2ヶ月ほど(計320時間)ですが、来日前の講習内容によって短縮されることもあります。技能検定基礎級と日本語検定N3以上の合格者は、実習2年目となる「技能実習2号」に進むことができます。

※2年目以降は日本語検定N3以上合格者とされてきましたが、緩和される方向に進んでいます。2019年2月に発表された厚生労働省からの改正案によって、「介護事業所で実習等の適切な研修のため、必要な日本語を継続して学ぶことや学ぶ意思を示していること」という条件を満たせば、N3に合格しなくても在留が可能となりました。

実習4年目以降の「技能実習3号」に進むには、技能検定3級に合格していることに加え、監理団体と介護施設の両方が外国人技能実習機構から「優良」と認められていなければなりません。

技能実習生の受け入れをお考えであれば、あらゆるやり取りや情報共有を円滑にし、手間のかかる書類手続をサポートするLinkus(リンクス)をぜひご活用ください。

まとめ

特定技能制度などを利用して、深刻な人材不足をなんとかしたいと考えていらっしゃる担当者さんも多いことでしょう。そのお手伝いはぜひLinkus(リンクス)におまかせください。受け入れのためのやり取りや情報共有を円滑にし、手間のかかる書類手続をサポートするサービスを提供しています。すべての関係者をデジタルにつなぐことで、受け入れ業務を効率化し、制度を十全に活用することを可能にします。

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