日本で家(アパート)を借りるためには、賃貸にかかわる契約が必要です。日本の賃貸の契約には、ほかの国ではあまり見ない手続きやルール、決まりごとがあります。また、契約をかわしてアパートでくらしはじめてからも、日本だけの生活のしかたやルール、マナーがあるため、気をつける必要があります。
また、契約をむすぶために必要な書類をそろえたり、日本人の知り合いに保証人としてサインしてもらったりと、あらかじめ準備しておくこともたくさんあります。
ここでは、海外から来た方が日本でアパートを借りるときの流れや必要な書類、気をつけるべき点などを紹介します。
賃貸契約までの流れ(ちんたいけいやくまでのながれ)
日本でアパートを契約するためには、いくつかのステップがあります。それぞれのステップで気をつけるべきポイントや準備が必要なことがありますので、知っておくとよいでしょう。
アパートを探しはじめてから実際に住みはじめるまでには、次のような流れがあります。
物件探し(ぶっけんさがし)
まずは、住みたいアパートを探します。日本語では、アパートやマンションなど、借りられる家のことを「物件」と呼びます。自分に合った物件をみつけるためには、できるだけ多くの情報を見て、比べてみるのがよいでしょう。
物件を探すには、インターネットで情報を見るか、不動産店へ行って相談するのが一般的です。インターネットで「賃貸」や「アパート探し」といったキーワードで検索すると、物件の情報をのせたサイトをたくさんみつけることができます。
インターネットの物件情報には、その家がどこにあるのか、どの駅に近いのかといった情報のほか、「間取り」と呼ばれる図を見ることができます。間取りはその物件を上からのぞいたようなイラストになっており、それぞれの部屋やキッチン、お風呂などの有無や広さを見ることができます。
物件のある場所や間取りの情報をもとに、気になる物件があれば、インターネットから問い合わせを行います。ただし、外国人は住めない物件もありますので、あらかじめ確認しておくことが大切です。
不動産店で相談する場合には、まず自分の希望をお店の人に伝えます。例えば、「渋谷まで電車で30分以内で行ける物件」とか、「2つ部屋ある物件」「家賃が7万円より安い物件」などです。
お店の人がそれらの希望にもとづいていくつかの物件を紹介してくれるので、それらを比べ、見たい物件を選びます。
見学(けんがく)
インターネットや不動産店の情報で気になる物件物件が決まったら、実際にその物件を見学に行きます。見学には、不動産店のスタッフが一緒に行くことがほとんどです。
見学では、実際に住む予定の部屋の中を見ることができます。お部屋の雰囲気や日当たり、お風呂やキッチン、トイレの使いやすさなど、気になることはすべてチェックするようにしましょう。
また、窓の外の景色や、気になる音がないかといったポイントもチェックしておくとよいでしょう。
見学は1部屋だけでなくてもかまいません。同じくらい気になる物件がいくつかある場合は、すべて見学してしっかり比べて決めることをおすすめします。
ただし、まだ人が住んでいるなどの理由で見学できない物件もあります。その場合は、写真や間取りといった情報だけで判断することになります。
申し込み(もうしこみ)
住みたい家が決まったら、不動産店で申し込みをします。
契約書類提出(けいやくしょるい)
契約に必要な書類を説明されますので、すべて準備します。契約書類がそろわないと契約することができないため、できればあらかじめ準備しておきましょう。
契約に必要な書類はのちほど紹介します。
審査(しんさ)
契約書類をすべて提出できたら、審査になります。審査にかかる時間は物件によってそれぞれですが、多くは数日〜1週間くらいです。
もしも審査に落ちてしまうと契約することができません。審査結果は契約書類の内容で決まりますので、きちんとした書類をそろえておくことが大切です。
鍵の受け渡し・入居(かぎのうけわたし・にゅうきょ)
審査が通り、契約できたら鍵を受けとり、実際に住みはじめることができます。
はじめに受け取った鍵は、その家を出ていくときにすべて返すことになります。なくさないよう大切にしましょう。
必要書類一覧(ひつようしょるいいちらん)
ここでは、契約のときに必要となる書類を紹介します。書類がそろわないと契約することはできませんので、あらかじめ用意しておくことをおすすめします。
パスポート(ぱすぽーと)
身分証明書として、パスポートの提出は必ず求められます。原本を預ける必要はありませんが、コピーを相手にわたすことはあります。
在留カード(ざいりゅうかーど)
日本の在留資格があることを証明するため、在留カードを見せる必要があります。こちらも相手にわたせるように、コピーを用意しておくとよいでしょう。
契約書(けいやくしょ)
賃貸の契約を交わすため、契約書にサインする必要があります。契約書は不動産店からわたされますので、説明を聞き、必要な場所に記入します。ほかの人に書いてもらってはいけないこともあるので、必ず確認しましょう。
契約書にはハンコが必要になることもあります。外国人であればハンコはいらない、ということもありますので、不動産店に確認しましょう。
日本国内での緊急連絡先(きんきゅうれんらくさき)
もしもなにか困ったことがあったときに、連絡する相手を決めておく必要があります。緊急連絡先として、大家さんや不動産店にその人の名前と電話番号や住所を伝えておきます。
緊急連絡先は日本人でなければいけない場合と、外国人でもよい場合があります。ただし、スムーズなコミュニケーションのため、日本語が話せる人を選ぶとよりよいでしょう。
連帯保証人もしくは保証会社との契約書(れんたいほしょうにんもしくはほしょうかいしゃとのけいやく)
一般的に、日本でアパートを借りるときには連帯保証人と呼ばれる人を決めなければいけません。連帯保証人は、アパートを借りている人が家賃を滞納してしまったときに、その人の代わりに家賃を払わなければいけません。
連帯保証人をおねがいできる人がいない場合、保証会社をつかうこともできます。アパートを借りる人が保証会社にお金をはらって契約します。もしも家賃を滞納してしまった場合、保証会社が代わりに家賃をはらいます。
身分を証明する書類(みぶんをしょうめいするしょるい)
日本での身分を証明する書類が必要になることがあります。たとえば、留学生の場合は学生証や入学許可書、はたらいている場合は社員証や労働契約書などです。
収入を証明する書類(しゅうにゅうをしょうめいするしょるい)
家賃をきちんとはらうお金があることを証明する書類が必要となることもあります。たとえば、銀行口座の残高証明書や通帳など、あるいははたらいている場合は給与明細などです。学生の場合、親のものでもよいことが多いです。
初期費用(しょきひよう)
契約のときにはらわなければいけないお金もあります。どのようなお金が必要
になるかはケースによってちがいますが、たとえば次のような費用がかかることが多いです。用意しておくようにしましょう。
・2ヶ月分の家賃…住みはじめるときに、最初の2ヶ月分の家賃をまとめてはらうことが多いです。3ヶ月めからは1ヶ月ごとにはらいます。
・仲介手数料…紹介してくれた不動産店にはらうお金です。1〜2ヶ月分の家賃と同じくらいの金額であることが多いです。
・敷金…デポジットとして、1〜2ヶ月分の家賃と同じくらいの金額をあずけます。きれいに住んでいれば、アパートの契約をおえたときに返ってきます。ただし、こわしてしまった・汚してしまった場合、もとにもどす費用を敷金から引かれます。
・礼金…契約のお礼として大家さんにはらうお金です。1〜2ヶ月分の家賃と同じくらいの金額であることが多いです。物件によってはいらないこともあります。
スムーズに賃貸契約を結ぶには(すむーずにちんたいけいやくをむすぶには)
日本の生活や習慣になれない外国人の方にとって、アパートの契約は大変なことも多いです。できるだけスムーズに契約できるよう、次のことを意識しておくとよいでしょう。
外国人歓迎物件を探す(がいこくじんかんげいぶっけんをさがす)
物件の中には、外国人は住むことができないという物件もあります。インターネットで物件を探すときには、「外国人可」「国籍不問」などと書いてある物件をえらぶとよいでしょう。
不動産店で相談すれば、外国人も住むことができる物件だけをえらんで紹介してもらうことができます。
日本語でのコミュニケーションが取れるようにしておく
契約にかかわる日本語はふだんつかっている言葉とはちがい、むずかしい言葉や表現がたくさんあります。また、アパートに住むときのルールやマナーについての説明をきくこともあります。日本語に自信がない人は、日本人や日本語が上手な友人にいっしょに来てもらうとよいでしょう。
日本国内の電話番号(でんわばんごう)・銀行口座(ぎんこうこうざ)を用意しておく
賃貸契約をむすぶためには、ほとんどの場合、日本国内の電話番号や銀行口座が必要です。日本国内でつかうことができるとしても、海外の電話番号では契約できないことも多いです。事前に日本の携帯電話番号などを契約しておきましょう。
また、家賃は直接お金ではらうのではなく、銀行口座から自動的にはらうようにしておくことがほとんどです。自分の名前で契約した日本の銀行口座も用意しておきましょう。
まとめ
日本国内にすんでいる外国人の数はどんどん増えています。そのため、外国人が住むことのできるアパートも増えてきました。しかし、アパートの契約をするためには、むずかしい書類を用意したり、日本語での説明をしっかりと理解したり、大変なこともたくさんあります。できるだけスムーズに契約できるよう、あらかじめ契約の流れや必要なものについて理解しておくことが大切です。
最近では敷金・礼金のいらない物件や、保証人がいなくても契約できる物件も増えています。物件によって条件もちがいますから、契約するまえにしっかり確認することが大切です。
日本のアパートでは、家具や家電は自分で用意しなければいけないことがほとんどです。また、水道・電気・ガスなども自分で契約する必要があります。アパートを借りるときには、これらの準備もいっしょに考える必要があります。
マンスリーマンションやシェアハウスでは、家具・家電がついていたり、水道・電気・ガス・インターネットが最初から用意されていることもあります。このような物件を上手につかうこともおすすめです。
アパートの契約は2年ごとであることがほとんどです。長く住む家ですから、後悔することがないよう、しっかりと準備して選ぶびましょう。