日本に住んでいる大人はみな年金と健康保険に入らなければなりません。人によっては、雇用保険と労災保険にも入る必要があります。年金、健康保険、雇用保険、労災保険を合わせて、社会保険と呼びます。
社会保険は日本の国や都道府県がおこなっているサービスです。このサービスの利用者になることを「入る」とか「加入する」と言います。社会保険に入り、ちゃんと料金を払っていると、病院で払う治療費が安くなったり、失業したときに少し生活費がもらえたりします。料金は保険料と呼ばれます。
この記事ではひとつひとつの社会保険をわかりやすく説明します。記事を読んで、自分が正しく社会保険に入っているかどうか確かめてみてください。
厚生年金・健康保険
厚生年金・健康保険は社員がたくさんいる会社などにつとめている人が加入する社会保険です。
厚生年金とは
働いているあいだに保険料を支払っておけば、老人になったときに老齢厚生年金というおかねがもらえます。また、病気やけがで働けない体になったときに障害厚生年金というお金がもらえます。
ただし、老齢厚生年金をもらえるようになるためには保険料を10年間以上、支払うことなどが必要です。
健康保険とは
病院で治療を受けたときの料金が安くなる(普通は30%になる)制度です。あなただけでなく、日本に住むあなたの家族の料金も安くなる場合があります。
加入しなければならない人
「適用事業所」につとめていて、以下の(1)か(2)に当てはまる人は加入しなければなりません。
(1)正社員の人
(2)アルバイトやパートで、1週間の労働時間と1か月の労働日数が正社員の4分の3以上の人
あなたのつとめている会社が「適用事業所」なのかどうかは会社の人に聞いてください。
加入と支払いの方法
厚生年金・健康保険は一緒に加入し、保険料もまとめて払います。保険料の半分は会社が払い、もう半分は自分が払います。
加入の手続きも、保険料の支払いの手続きも、会社がおこないます。会社はあなたのお給料から保険料を取って、あなたのかわりに役所におさめます。
脱退一時金について
年金は10年以上、保険料を払わなければなりませんし、お金がもらえるのはずっと後になってからです。もっと短い期間だけ日本にいて自分の国に帰る予定の人にとっては、年金の支払いはむだになってしまうように思われます。
そうした外国人のかたのために、脱退一時金という制度があります。年金の保険料を支払ってきた人が仕事をやめて外国に帰ったときに、お金が一部もどってくるという制度です。長く保険料を払ってきた人ほどたくさんのお金がもどってきます。
ただし、次の(1)~(7)のどれかに当てはまる人は厚生年金の脱退一時金をもらえません
(1)保険料を払っていた期間が6か月より短い
(2)すでに老齢厚生年金をもらう資格がある
(3)障害厚生年金などの年金をもらったことがある
(4)国民年金に入っている
(5)日本の国籍を持っている
(6)日本に住所がある
(7)日本に住所がなくなってから2年以上たっている
国民年金・国民健康保険
厚生年金・健康保険と似ていますが、加入する人や加入の方法が違います。
国民年金の内容
厚生年金と同じような制度です。老人になったとき老齢基礎年金がもらえ、病気やけがで働けない体になったときには障害基礎年金がもらえます。
厚生年金よりも保険料が安く、支給されるお金も少ないです。
国民健康保険の内容
厚生年金の健康保険と同じく、治療費が安くなります(普通は30%になります)。
加入しなければならない人
日本に住んでいて、厚生年金・健康保険に入っていない人は、国民年金と国民健康保険に加入しなければなりません。働いていない人も入る必要があります。
ただし、国民年金のほうは20歳から60歳の人以外は入る必要がありません。
国民健康保険のほうは、3か月以上日本に住まない人は入る必要がありません。
加入と支払いの方法
国民年金と国民健康保険は自分で加入と支払いの手続きをおこないます。加入の手続きは、あなたの住んでいる町の役所(市役所・区役所・町役場・村役場)でおこないます。
支払い方法は何種類かあります。加入しただけだと、あなたの家に「納付書」が送られてきますので、それを使ってコンビニや銀行、郵便局などで支払いをします。
それ以外の方法で払いたい場合は、銀行や役所に書類を出して手続きしなければなりません。
脱退一時金について
国民年金にも脱退一時金があります。ただし、次の(1)から(7)のどれかに当てはまる人はもらえません。
(1)保険料を払っていた期間が6か月より短い
(3)すでに老齢基礎年金をもらう資格がある
(4)障害基礎年金などの年金をもらったことがある
(2)今も国民年金に入っている
(5)日本の国籍を持っている
(6)日本に住所がある
(7)日本に住所がなくなってから2年以上たっている
雇用保険
失業したときなどにお金がもらえる制度です。
雇用保険の内容
次のようなときにお金がもらえます。
(1)失業したとき
(2)子供の世話のために仕事を休まなければならなかったとき
(3)家族の介護のために仕事を休まなければならなかったとき
ただし、それまでの2年間に合計12か月以上保険料を支払っていなければなりません。
加入しなければならない人
雇用保険と労災保険は2つで1つのセットになっています。このセットを労働保険と呼びます。労災保険については後で説明します。
次の(1)と(2)の両方に当てはまる人は、労働保険に加入しなければなりません。
(1)1つの会社に31日以上勤めていている(勤めることになっている)
(2)平均して1週間に20時間以上働いている
ただし、学生のかたなどは加入できないことがあります。
加入と支払いの方法
労働保険への加入と保険料の支払いの手続きは会社がおこないます。保険料の一部はあなたの給料から払われ、残りは会社が出します。
労災保険
仕事や通勤が原因でけがをしたりしたときにお金がもらえる制度です。
労災保険の内容
仕事の内容や仕事場の環境が悪かったせいでけがをしたり、病気になったり、死亡したときに、お金がもらえます。死亡したときには家族がお金をもらいます。
通勤のとき(家から会社へ行くときや、会社から家へ帰るとき)に事故にあってけがをしたりした場合も、お金がもらえます。
加入する人、加入と支払いの方法
雇用保険のところで説明しました。
まとめ
ほんとうは社会保険に入らなければならないのに、入っていない人もいるかもしれません。雇用保険のお金や脱退一時金をもらいたいけれど、もらい方が分からないという人もいるでしょう。
社会保険のことでわからないことがあったら、自分の会社の人や役所の人、外国人のサポートをしている会社の人に聞いてみてください。