支援の内製化によってコストを削減し教育やサポートの充実へ生かす「株式会社エムピーキッチンホールディングス」の取り組み

インタビュー

日本の人口減少に伴う人手不足に加え、近年のインバウンドの増加に伴ってより一層、需要が高まっている飲食業界においては特定技能雇用による外国人材の活躍が注目されています。

今回は外国人雇用を推進し、積極的な支援と適切な評価によって外国人材が活躍している「株式会社エムピーキッチンホールディングス」様の取締役社長 石川 晃久様と人事総務部 営業労務 特定技能担当 シニアマネージャー福井 悟様に外国人材の支援の方法やキャリアアップについて伺いました。

労働力不足を解決し、多様な人材でより強い組織へ

ーー まず御社の会社概要について教えてください
「株式会社エムピーキッチンホールディングス」は1994年7月に設立し、「つけ麺専門店 三田製麺所」や「日本橋とんかつ 一 HAJIME」「薄皮餃子専門 渋谷餃子」など多数の飲食店の総合開発及び経営を手がけています。2025年4月時点では1500名の従業員を擁し、積極的な店舗開発を実施しています。

ーー 最初に特定技能外国人を受け入れ始めた経緯について教えてください。
特定技能外国人の受入れ開始はコロナ禍後の2023年からです。
人手不足は飲食業界全体の課題ではありますが、弊社も長年、人材確保に苦戦しており、採用コストの高騰に頭を悩ませてきました。特にコロナ禍以降、その影響はさらに深刻化し、これまで大きな収益源であった深夜帯の営業も人材不足のため継続が困難となりました。こうした営業できないことで生じる機会損失の大きさを目の当たりにし、歯がゆい思いをしたのを今でも鮮明に覚えています。

そんな中で模索したのが、新しい採用手段でした。そして、解決策のひとつとして光が差したのが 「特定技能外国人制度」 です。この制度を活用することで、労働力不足を補うだけでなく、多様な人材が活躍できる環境を整え、より強い組織を作るきっかけになるのではないかと考えました。


ーー 特定技能外国人の受け入れ当初は外部の登録支援機関に支援業務を委託され、現在は支援業務の内製化を進められているそうですが、その理由と経緯について教えてください
内製化を始めたのは「月々の支援費の高さ」-まさに、これが最大の理由です。
支援機関ごとに費用の差がある中で、「個人にかかる月々の支援費は、具体的にどのような内容で構成されているのか?」 という疑問が生じました。コストの内訳を正しく把握し、より適切に活用したいという思いから、支援機関のサポートに同席し、書類作成も学びながら、自主的に取り組みました。

その過程で気づいたのは、これまで支援業務の外部委託でかかっていた費用を適切に教育やサポートへ充てることで、外国人材の定着率向上につながるということです。これこそが、私たちが導き出した「答え」でした。 引き続き登録支援機関のサポートは受けていますが、自社支援への完全な移行を進めるにあたり、先人の知恵を活かしながらアドバイスをいただいています。より効果的な支援体制を築くため、学びを深めつつ、自社ならではのサポートの形を確立していきたいと考えています。

ーー 「Linkus」を導入前に感じていた課題や問題点について教えてください。
「Linkus」の導入前はスプレッドシートで項目を分けて書類を管理しており、情報を逐一管理しなくてはいけない状況でした。届け出のダブルチェックなども自身で行っており、作業が非常に煩雑になっていました。

こうした状況下で支援業務の内製化を検討するうえでも、以下の課題点をクリアする必要がありました。
・申請等の煩雑さを軽減できるか(随時届出・定期届出・在留資格更新申請など)
・書類作成の工程をどこまで削減できるか
・在留資格に関する一定の知識を社内で確保できるか
・業務の属人化を防ぎ、安定した運用ができるか 

ーー BEENOS HR Linkを知ったきっかけについて教えてください
『エン・ジャパン株式会社』様主催のオフラインセミナーです。そこで内製化のお話を伺い、非常に興味を持ったのが始まりです。申請や届け出などの支援業務が属人化してしまうことが懸念点だったのですが、情報を登録さえしてしまえばさまざまな書類に反映されるというシステムは懸念点を払しょくでき非常に良かったです。

ーー 自社での支援に際してはBEENOS HR Linkが提供する「内製化サポート(特定技能アドバイザー by Linkus)」を活用いただいていますが、利用を決めた理由を教えてください。
自社で支援を行うにあたり、随時報告の書類作成、定期報告、義務的支援の10項目については把握していましたが、実際に運用するとなると不安が残りました。 そこで、少しでも不安要素を解消するために、短期間で集中的に知識を習得する方針を決めました。
無理を承知で、BEENOS HR Linkと1ヶ月のサポート契約を結び、必要な情報を短期間で効率的に習得できるようにお願いしました。 このサポートを通じて、実務の流れを理解し、確実な運用体制を整えることを目的としました。

このサポートを通じて、実務の流れを理解し、確実な運用体制を整えることを目的としました。

ーー 「内製化サポート(特定技能アドバイザー by Linkus)」について導入してよかった点について教えてください
現在「株式会社エムピーキッチンホールディングス」は支援業務の内製化により自社支援への移行を進めています。現在はまだ登録支援機関のサポートを一部受けている状況ですが、今後は「内製化サポート(特定技能アドバイザー by Linkus)」の利用によって完全な自社支援に移行できそうです。

ーー 利用によって、課題や問題点は解決されましたか。
課題点は解決できたと思います。現在は雇用する特定技能外国人の数も増えたので、特定技能から特定活動に移行する人もおり、そういった方にどのようなキャリアプランを提案していくかといった新たな課題もでてきました。本人の意志があれば働きながら学校にも通っていただきつつ、資格を取得して、長期的に働いてもらいたいと考えています。

ーー Linkusについて導入してよかった点について教えてください
間違いなく、最大のメリットは作業効率の向上です。

登録マスタを正確に管理できていれば、これまでの煩雑な手続きが一気に解消されます。 無駄な作業が削減され、手続きの正確性も向上し、業務全体がスムーズに進むようになります。データの登録さえ正確に行えば、書類作成の手間は驚くほど削減されます。
特に、在留資格の更新申請では、これまでダブルチェック、トリプルチェックを徹底していましたが、作業効率が格段に向上しました。 随時届出や定期届出も含め、一連の手続きがスムーズになり、1日かかっていた作業が数時間で終わるなど負担が大幅に軽減されたと実感しています。
これまで在留資格申請に携わったことのある担当者なら、この変化の大きさを確実に実感し、心から感謝してくれるはずです!


評価制度と教育支援で描く、外国人材のキャリアパス

ーー 雇用をしている特定技能外国人の皆様についてお伺いしたいのですが、特定技能外国人の方に対して描いているキャリアプランなどがあれば教えてください
弊社の評価シートである【星取表】を活用し、3ヶ月に一度、給与アップの機会を設けています。 チェック項目が埋まるほど評価が反映され、昇給につながる仕組みとなっています。さらに、【星取表】の面談時に活用できるよう、各国の言語に翻訳した評価シートも用意 し、特定技能外国人の方が自身の成長をより実感できる環境を整えています。 2025年は特定技能の方から店長、副店長を最低2名の輩出を想定しています。

ーー 店長・副店長業務は日本人従業員を含めて管理する立場になられるということでしょうか。どのような教育やトレーニングを実施されていますか?
そうですね。日本人の従業員も管理する立場になります。店長・副店長候補に対しては営業のシニアマネージャー等が指導を行っており、現場での指示の仕方や指導方法のほか営業利益の把握などの勉強を実施しています。

ーー 定着サポートについて教育面や生活面など、どのような支援を行っていますか
教育面においては弊社では、日本人・特定技能外国人を問わず、すべての社員に対して「食品衛生責任者」および「防火・防災責任者(甲種)」の資格取得を推奨しています。 ※ただし、講習を理解するために最低限の日本語力が必要です。また、特定技能2号、日本語能力試験(JLPT)に関連した教材を希望者に提供しています。座学だけではなく、ワークシートや小テストなども実施しています。今後は週一回程度、特定技能2号を目指す人に向けて勉強会を開始することも検討しています。

生活面においては特定技能外国人に対して2か月に1回かならず面談を実施しています。そこでは生活や住宅などの相談を受けるほか、病院への同行も必要であれば行います。

生活面での支援においては、特に医療に関するサポートが多くなっています。

実際に、病院へ搬送され入院したケースもありましたが、登録支援機関の通訳が同席されていても、内容が複雑な場合は十分に伝わらず、ご本人が正しく理解できない場面もありました。 そのため、弊社では総務部と連携し、ドクターの説明に加えて社会保障制度についても詳しく説明し、本人に不利益が生じないよう努めています。 必要な手続きのサポートを行い、安心して治療を受けられる環境を整えることを心がけています。

ーー 特定技能外国人の受け入れのために、在職している日本人の方向けに行っている取り組み等があれば教えてください
受け入れ前には、エリア管理者や店長へ情報を共有し、特定技能外国人の入社に至った背景や想いをできるだけ細かく伝えています。

また、本部の特定技能担当者が、面談のフィードバックを必要に応じて行い、現場との情報共有を密にすることで、スムーズな受け入れにつなげています。

こうした面談の実施は以前行っていた新入社員の入社後の3か月間ほどの定期面談が有用であったことから行われています。 

ーー 特定技能外国人の方とのコミュニケーションにおいて何か工夫をされていますか
2ヶ月に1回、リモートでの面談を必ず実施しています。 この面談は定期報告の資料としても活用できますが、それ以上に、店舗での状況確認や学習の進捗、さらには普段言いづらいことを気軽に話せる場とすることを心がけています。

特定技能外国人の方々は、単身で来日し、家族のために働いているケースが多く、その負担は計り知れません。 そうした背景を踏まえ、少しでも安心して働けるよう社内の連絡ツールを活用し、特定技能外国人全体やコミュニティ毎のグループを作成。 そこで情報共有を行い、社会保障制度の説明なども翻訳ソフトを活用して案内しています。 

ーー 雇用している日本人従業員、または特定技能外国人の方向けに異文化理解などの研修を実施したことがありますか?実施されている場合どのような内容か教えてください。

正直に申し上げると、これまで管理業務に追われ、研修の実施に十分な余裕がありませんでした。

しかし、2025年の受け入れが落ち着いた後は、特定技能で活躍する方々を対象に、食事会や勉強会を随時開催する予定です。 これにより、異文化理解を深めるとともに、職場内でのコミュニケーションの活性化を図りたいと考えています。

また、本部主催の総会を年末に開催しており、全国の責任者が参加します。 本年は、特定技能外国人からも責任者を輩出し、この総会に参加していただくことを目指しています。 役職者としての視点を持つことで、さらなる成長の機会を提供できればと考えています。

ーー 異文化を理由として特定技能外国人の方に対して配慮や対応をしたことがありますか。どのような内容で対応をされましたか?

たとえば言語における配慮の必要性や失礼に当たる言動などは日本人従業員に伝えています。必要があればそのほか様々なサポートを行う用意があることはご本人にもお伝えしています。

「努力が正当に評価される職場」であることの重要性

ーー その他、意識していることがあれば教えてください

特定技能外国人の方々は、「学び」に対して非常に真摯な姿勢で取り組まれる方が多いと感じています。

そのため、日本語能力試験や特定技能2号試験を活用し、資格取得を支援するとともに、弊社内での実技試験にも積極的にチャレンジできる環境づくりを心がけています。

異文化の違いがあっても、「努力が正当に評価される職場」であることを大切にし、学びたいという意欲を後押しする制度を整えることで、長期的な成長につながるよう努めています。

ーー これから特定技能の雇用を検討されている企業の方にアドバイスやメッセージをお願いします。
これから特定技能の雇用を検討されている企業の皆さまへ。
特定技能外国人の方々は、意欲的に学び、成長しようとする姿勢を持つ方が多く、企業にとって大きな戦力となります。
事業の安定とさらなる成長を目指し、特定技能外国人の皆さんとともに、未来を切り拓いていきたいと考えています。 彼らと共に働くことで、新たな視点を得ることができ、組織全体の成長にもつながります。

また、人手不足だから外国人を雇用しようという認識での受け入れはお勧めしません。特定技能外国人の雇用にあたってはひとつひとつの職場が選ばれる立場であるということを意識することが重要になっています。

タイトルとURLをコピーしました