特定技能【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】で海外人材を採用するために必要なこと・注意点とは

特定技能

特定技能制度は人材不足が顕著な産業分野において即戦力となる外国人材を受け入れるための制度で、機械関連業種では3分野(素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業)で受入れが行われてきました。

2022年4月、【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】という3つの分野が統合され、特定技能で認められた業種は14分野から12分野となりました。この記事では、特定技能 製造3分野において、従事できる業務内容、資格取得条件、雇用形態、受け入れ企業に求められる要件などについて解説します。なお、特定技能外国人の採用や在留資格申請のご不明点はLinkusがお答えします。ぜひご相談ください。

産業の現状について

経済産業省の調査(※1)によると、製造業全般で人手不足が進行しており、人材確保を経営課題として挙げる企業は約8割に及びます。約2割の企業ではビジネスにも影響が出るほど人手不足が深刻化しています。特に産業機械製造業においては、工作機械やロボットなどへのニーズが世界的に高まり、年2%程度の需要拡大が予想されるなか、2017年度の有効求人倍率は2.89という高い水準にあり、2023年には75,000人の人手不足が生じると見込まれています(※2)。

こうした状況に対し、各企業では生産プロセスのデジタル化やIoT・AIの導入、女性・高齢者の雇用促進などの対策を進めていますが、国内人材だけでは人材不足を解消するのは難しいのが現状です。

そこで、即戦力となる人材を外国から受け入れることを目的に創設されたのが特定技能制度です。制度施行から2023年にかけて、素形材産業は最大21,500人、産業機械製造業は最大5,250人、電気・電子情報関連産業は最大4,700人の外国人の受入れが目標数として掲げられています。

参考:
※1:製造業を巡る現状と政策課題
※2:産業機械製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針

特定技能【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】とは

特定技能制度は、国内人材だけでは人手不足が解消できない分野において、即戦力となる外国人材を受け入れるための制度です。在留期間、受入れ可能な業種、任せられる業務、雇用形態・労働条件などについては、入管法や制度運営指針・運用要領などで規定されています。国内産業への外国人材受入れという点は技能実習制度と共通していますが、技能実習制度が技術移転による国際貢献を目的としているのに対して、特定技能は労働力の確保を目的としているため、基本的な目的が異なります。

ちなみに、2022年4月、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業が統一され、【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】という3つの分野に統合されました。統合に関する詳しい内容はこちらをご覧ください。

2022年に特定技能の製造3分野が統合!14分野から12分野に変更となったその理由や背景について
2019年4月に施行された特定技能の対象となる職種は14分野でしたが、2022年の4月に12分野になりました。素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業が統一され、【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】という3つの分野に統合さ

在留期間

特定技能には1号と2号の区別がありますが、産業機械製造業で受入れが行われているのは現在のところ1号のみです(そのためこの記事では「1号」の表記を省略しています)。
特定技能1号外国人には1年間、6か月間、4か月間のいずれかの在留資格が与えられ、在留資格更新の申請により通算で5年まで在留することができます。失業期間や育児・産前産後休暇、労災による休暇の期間なども通算在留期間に含まれます。

参考:特定技能外国人受入れに関する運用要領

受入れが可能な業種(受け入れ企業側)

外国人の受け入れが可能かどうかは事業所ごとに判断されます。日本標準産業分類で定められた産業区分のうち、下表の区分に該当する事業を行っている事業所であれば、外国人を受け入れることができます。この分類に事業所が該当するか否かは、特定技能制度が活用できるか否かに関わってくる重要な事項となります。判断に迷う場合は、Linkusにご相談ください。

 産業機械製造業の範囲(日本標準産業分類における番号及び名称)
2422機械刃物製造業
248ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業
25はん用機械器具製造業
(2591消火器具・消火装置製造業及び素形材産業分
野に掲げられた対象業種を除く)
26生産用機械器具製造業
(素形材産業分野に掲げられた対象業種を除く)
270業務用機械器具製造業において管理、補助的
経済活動を行う事業所
271事務用機械器具製造業
272サービス用・娯楽用機械器具製造業
273計量器・測定器・分析機器・試験機・測量機械
器具・理化学機械器具製造業
275光学機械器具・レンズ製造業
 電気・電子情報関連産業分野(日本標準産業分類における番号及び名称)
28電子部品・デバイス・電子回路製造業
29電気機械器具製造業(ただし、2922 内燃機関電装品製造業及び
素形材産業分野に掲げられた対象業種を除く)
30情報通信機械器具製造業
 素形材産業の範囲(日本標準産業分類における番号及び名称)
2194鋳型製造業(中子を含む)
225鉄素形材製造業
235非鉄金属素形材製造業
2424作業工具製造業
2431配管工事用附属品製造業(バルブ、コックを除く)
245金属素形材製品製造業
2465金属熱処理業
2534工業窯炉製造業
2592弁・同附属品製造業
2651鋳造装置製造業
2691金属用金型・同部分品・附属品製造業
2692非金属用金型・同部分品・附属品製造業
2929その他の産業用電気機械器具製造業(車両用、
船舶用を含む)
3295工業用模型製造業

参考:製造業における特定技能外国人材の受入れについて

事業を行っているかどうかは、直近1年間の収入発生の有無で判断されます。事業所において、その産業分野に属する製造品の出荷、加工・処理の受託、製造・加工・処理の過程で出たくず廃物の出荷などによる収入が発生していれば、事業を行っていると見なされ、外国人の受入れが可能となります。

具体的には以下のような業務による収入の有無で判断されます。

■製造品出荷:
事業所が所有する原材料で製造した製品(自社製造品、または他社に原材料を支給して製造した製品)の出荷、自社グループ内の他の事業所への引き渡し、事業所内での自家使用、委託販売

■加工・処理:
他企業の所有する原材料で製造した製品や他企業の所有する製品・半製品に対する加工・処理

■くず廃物出荷、その他:
くず廃物の出荷、仕入れ品の転売、製品修理、冷蔵保管、自家発電の余剰電力の販売など

参考:特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-産業機械製造業分野の基準について

海外人材に任せられる業務

一般的に、特定技能外国人に任せることができる業務は相当程度の知識・経験・技能を要する業務に限られます。製造3分野それぞれに属する作業を「指導者の指示または自らの判断のもとで」行うことが特定技能外国人の業務内容となります。特定技能資格取得のための技能試験も、この区分に基づいて行われます。特定技能の業務区分は技能実習の職種・作業と対応しています。

◆素形材産業分野の業務区分

鋳造鍛造ダイカスト
機械加工金属プレス加工工場板金
めっきアルミニウム仕上げ
機械検査機械保全塗装
溶接

◆産業機械製造業分野の業務区分

鋳造工場板金電気機器組立て
鍛造めっきプリント配線板製造
ダイカスト 仕上げプラスチック成形
機械加工機械検査塗装
金属プレス加工機械保全溶接
鉄工電子機器組立て工業包装

◆電気・電子情報関連産業分野の業務区分

機械加工機械保全塗装
金属プレス加工電子機器組立て溶接
工場板金電気機器組立て 工業包装
めっきプリント配線版製造
仕上げ プラスチック成形

それぞれの技能水準:
・日本語試験及び当該業務区分の技能試験の合格者であること
(技能実習2号修了者は、その修得した技能と関連性が認められる業務区分の試験及び日本語試験が免除)
・特定技能1号のみ

なお、上記業務に通常付随するような関連業務についても、主業務と合わせて従事するのであれば従事が認められています(関連業務にのみ従事することは許されません)。また、雇用形態はフルタイムとした上で、原則として直接雇用です。

参考:製造業における特定技能外国人材の受入れについて

技能実習制度との違い

特定技能制度が即戦力となる外国人材の受け入れを目的としているのに対し、技能実習制度は日本の技能・技術・知識を外国人に吸収してもらい、帰国後に現地で活用してもらう技術移転を目的としており、日本における労働力の需給調整の手段として用いられてはならないとされています。
ただし、同じ仕事内容の技能実習2号を修了した外国人本人が希望し、特定技能所属機関も受入れ可能である場合は、無試験で特定技能に移行し、特定技能外国人として就業できる可能性があります。

特定技能【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】の取得要件

外国人が特定技能【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】の資格で業務に従事するためには、日本語試験と技能試験の両方に合格するか、同様な業務内容の技能実習2号を良好に修了している必要があります。

技能試験と日本語試験に合格していること

◆日本語試験:
①国際交流基金日本語基礎テスト
もしくは
②日本語能力試験(N4以上)

◆技能試験:
製造分野特定技能1号評価試験
・実施場所:2019年度はフィリピン、インドネシアで実施(2020年度は国内でも実施予定)
・試験言語:主に現地語
・実施方法:学科試験、実技試験
・試験区分:19試験区分(鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組立て、電気機器組立て、プリント配線板製造、プラスチック成形、塗装、溶接、工業包装)※レベルは技能検定3級相当(技能実習2号修了相当)

技能実習2号を良好に修了していること

特定技能の各業務区分に対応する職種・作業について技能実習2号を良好に修了した外国人は、その業務区分の技能試験が免除されます。例えば【鋳造】の職種で【鋳鉄鋳物鋳造】または【非鉄⾦属鋳物鋳造】の作業を良好に修了していれば、業務区分【鋳造】の特定技能に必要な技能水準を有しているものと見なされます。もし、【鋳造】の特定技能に就きたいが技能実習の職種が【鋳造】以外の場合は、前項の技能試験【鋳造】に合格する必要があります。また、どの職種・作業であれ技能実習2号を良好に修了していれば、日本語試験も免除されます。

参考:製造業における特定技能外国人材の受入れについて

特定技能所属機関(受入れ機関)に求められる要件と注意点

特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)としては、適正な雇用契約の締結に加え、特定技能外国人の支援体制を整備し、【製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会】に加入すること、協議会が行う資料要求、現地調査等に対し必要な協力を行うことが求められます。また、過去に労働法・入管法などに関する違反行為があったり、外国人の行方不明を発生させていたりすると受入れが認められない場合があるため、注意が必要です。

参考:
製造業における特定技能外国人材の受入れについて
特定技能外国人受入れに関する運用要領

◆特定技能所属機関に関する詳しい内容はこちら↓↓

特定技能所属機関になるために必要とされる条件について
特定技能制度によって、以前よりも多くの外国人人材が日本で働けるようになりました。この制度を活用して、特定技能外国人を受け入れたいとお考えの企業も多いことでしょう。特定技能外国人を受け入れる企業のことを「特定技能所属機関」と言いますが、具体的

特定技能外国人の支援体制の整備

特定技能所属機関は、受け入れる外国人に対し、事前ガイダンスや入国時の送迎、住居確保・ライフライン契約手続きなどのサポート、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供などの支援を提供する義務があり、あらかじめ策定した支援計画に基づいて支援を適切に実行することが求められます。
ただし、このような支援体制を自社で用意することは大きな負担であることから、国の登録を受けた支援機関(登録支援機関)に支援を委託するケースが多いです。

製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会への加入

【製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会】は、製造3分野特定技能制度のための情報共有、課題把握と対応策検討、外国人受入れの地域差の抑止などを目的とする組織です。経済産業省を初めとする省庁、特定技能所属機関、自治体などで構成されます。

特定技能所属機関になろうとする企業は協議・連絡会に加入し、協議・連絡会による指導や調査に協力する義務があります。出入国在留管理局への在留申請時には加入が完了している必要がありますが、加入手続きには時間を要するため、特定技能外国人の受入れを決めたらすぐに手続きをされることをおすすめします。

外国人受入れが認められないケース(欠格事由)

以下のような事由に該当すると、外国人受入れが認められない場合があります。

・労働法、社会保険関係法令、租税関係法令、出入国関係法令を遵守していない
・特定技能外国人が担当することになる業務に従事していた従業員が、過去1年以内に会社都合で解雇されている
・過去1年以内に、受入れ機関の落ち度で外国人の行方不明を発生させている
・過去5年以内に、技能実習の認定を取り消されたことがある

まとめ

製造3分野においては人手不足が進行しており、人材確保のための手段として、デジタル化や女性・高齢者の雇用促進などと並んで特定技能の制度の活用が期待されています。特定技能【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】により海外人材を受け入れるためには、業種や業務内容、雇用契約、生活支援などに関する要件を満たすことが求められます。加えて要件を満たした上で、多数の書類を用意して出入国在留管理局へ在留申請を行う必要があります。

受入れ業務をスムーズに行うためには、受入れ企業、特定技能外国人、外部関係者(登録支援機関など)の間での適切な情報共有・情報管理が欠かせません。特定技能特化型プラットフォームLinkusではデジタル化によるシームレスな人財管理サービスを提供しておりますので、ぜひご活用下さい。

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