言語等が不安だった取引先も「海外人材はなくてはならない存在」と思うほどに。介護事業35年以上の株式会社ツクイ

インタビュー

日本国内において少子高齢化の流れは止まることを知りません。その影響で国内の介護人材需要は伸び続け、人手不足がますます深刻化していくことが予想されています。こういった状況を踏まえ、日本国内だけでなく海外の人材に注目していらっしゃる企業や施設のご担当者さんも多いことでしょう。

そこで、神奈川県横浜市に本社を構える株式会社ツクイの海外人財部・青木さんにお話を伺いました。介護業界で35年以上の実績を誇る株式会社ツクイさんは、海外人材の受け手入れ企業であり、登録支援機関でもあります。

この記事では、海外人材との関わり方、問題点や課題、重要視していることなどを青木さんに伺っています。Linkusのご利用を開始された決め手についても教えていただいたので、ぜひ参考にしてみてください。

海外人材ならではの良さを広めたい。

ーー 御社の事業内容について教えてください。

株式会社ツクイは1983年に訪問入浴から介護サービスの提供を開始しました。現在では、デイサービスを中心に、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム等施設の運営、訪問介護・訪問入浴・訪問看護等の在宅介護サービスを提供しています。中でもデイサービスの事業所数は全国500ヵ所を超え、業界でもトップクラスの事業展開となっています。私は本社の海外人財部に所属しており、技能実習、特定技能、一部介護ビザの方の受け入れや手続きや支援を行っております。

ーー 受け入れ企業という立場から、さらに登録支援機関として申請・登録をした経緯を教えていただけますか?

少子高齢化が進む日本では人手不足が課題となっています。ですので、介護の楽しさを伝えながら人材確保をすることが第一の目的です。

受け入れる日本の企業には一生懸命働いてくれる海外人材の良さを広めたいですし、「日本語は通じるのかな?」「仕事はちゃんとしてくれるのかな?」という不安を解消して、海外人材を採用するハードルを下げたいと思っています。また、海外人材が “介護”を業種として選んだ際に働きやすいよう支援したい、そんな思いで登録しました。

当社では、以前から海外人材のアルバイト雇用はしていました。留学生や日本人の配偶者がいらっしゃる方、永住権を取得された方など多くの方が事業所や施設で活躍しています。会社としてバックアップをしながら受け入れをしたのは、2019年4月の技能実習生11名が最初ですね。

「言語は大丈夫?」という不安から1年後「なくてはならない存在」に。

ーー 海外人材を受け入れることについて、不安はありましたか?

配属先である施設の方たちにとって、海外人材の“言語”や“語学力”が最大の不安だったようです。そこで、施設スタッフへの説明会を行いました。技能実習生に携わって20年以上の社員を中心に地道に説明をしていきましたが、それでも施設長や指導員は「本当に大丈夫?」と、不安を払拭しきれないままのスタートとなりました。

ですが、今では「技能実習生の子たちは、なくてはならない存在」とまで言ってくださるようになりました。技能実習生を受け入れて半年ほどで施設スタッフから「来てもらえてよかったです」、1年後には「ずっといてほしいです」というお声をいただいています。

事実、海外人材に対してどのように接すればいいのか迷う方もいらっしゃいます。ですが、実際に受け入れてみると技能実習生が慣れない日本語で一生懸命コミュニケーションを取ろうとする姿に、心を打たれる方も多いようです。

技能実習生を受け入れて2年ほどの施設スタッフから「技能実習生は、お客様からかわいがられていますよ。◯◯くん!◯◯ちゃん!と名前をよく呼んでもらっていますね。彼ら、彼女たちは様々な場面でお客様に対して心を込めて接しているという印象です」と聞いています。

ーー 「なくてはならない存在」「ずっていてほしい」そう思ってもらえるのは何か秘訣があるのでしょうか。受け入れる海外人材に対して、特別な指導はされていますか?

私たちは海外人材を受け入れる際、介護講座やグループワークを通して介護職に向いているか否かの人選を一定の基準で行っています。受け入れが決まった皆さんは、日本に入国してから入社前、1ヶ月間の日本語研修・初任者研修を受けてもらいますが、それ以外、接し方等についての指導は特にしていません。それでも技能実習生の皆さんの人柄はお客様に伝わっています。

ーー 人材が活躍できるということは働きやすい環境が整っている、ということもありそうですね。海外人材を受け入れること、支援することに関して日々意識していらっしゃることはありますか?

登録支援機関として特定技能外国人に対して、「どのような支援をすると彼らのスキルアップ・キャリアアップに繋がるかな」ということを常に考えています。現状、新型コロナウイルスの影響で海外から人材を受け入れることが難しいため、現在特定技能のビザを持っているのは「日本に留学生として来日していた方がビザを切り替えた」というパターンがほとんどです。そういった方たちは介護に関する知識が十分ではないため、介護が学べる講座の情報を発信していますが、どのような内容が有益な支援なのかはまだ模索しているところです。

最近支援の一環として、“安心マップ”というものを制作しました。特定技能外国人の方が住んでいる地域で夜間や休日に診てくれる病院、粗大ゴミの出し方、地震等の災害による警報レベルの見分け方(二次元バーコードによる案内付き)、避難場所、レンタルサイクルの利用方法などを記載したものです。日本で生活するうえで必要な情報は色々ありますが、見知らぬ土地だと分からないことも多く、頼れる人も多くないと思いますので、役立ててくれるとうれしいですね。この様なアイテムをきっかけに生まれるコミュニケーションもあると思っています。

“支援”と呼ばれるものが本当に役に立つかは分かりませんが、「してあげたい」というのは支援する側の気持ちであり、それをどう受け取るかは支援される側の状況や気持ち次第です。「支援は良いものだ」「やってあげているのに」と押し付けるものではないですよね。反対に、本当に困ったときは本人から相談してくるのではないでしょうか。支援とは何が正解か答えが出るものではありませんが、海外人材の方の「必要とすること」「必要とするもの」を考えたり、「あったらいいな」「できたらいいな」ということをできるだけ実現してあげることが大切ではないかと思います。

ーー マップを通して会話をしたり、普段から何気なく関わっていると、いざというときに相談しやすくなりますよね。青木さんが特定技能の方や技能実習生とコミュニケーションをとるうえで気をつけていることはありますか?

関係性や会話が不自然にならないよう、“あえて気をつけない”ようにしています。特別に意気込んで「コミュニケーションをとる!」というよりは、挨拶をして軽いおしゃべりをする、そのくらいです。会えないときは「元気?」「今日はお仕事?」というようなメッセージを送ることもあります。そういった軽やかな関係性の方が、いざというとき相談もしやすいですよね。堅苦しくならないよう、フレンドリーに接するようにしています。

先日、特定技能の方との面談中に私が「キラキラ」という言葉を使ったところ、「キラキラってなんですか?」と聞かれました。他言語と比べて日本語表現はオノマトペ(擬声語)が使われることが多いです。面談中に「オノマトペが分かるとお客様との会話が広がるかもしれない」という話になり、擬声語に関する資料を渡しました。

面談やちょっとした会話の中で特定技能の方が疑問に感じることは多々あります。出てくる疑問や不安に対して「これは助けになるかな」「こんな情報の資料を渡してみようかな」と、ひとつずつ積み上げていく、それが本当の意味での支援なのかなと思います。

初めて海外人材を受け入れたなら“一年生”。一緒に成長するつもりで。

ーー Linkusを利用し始めたきっかけについて教えてください。

御社のご担当者からの電話でLinkusの存在を知りました。その後すぐに資料を送っていただき、興味を持ち実際にお会いしてみることにしました。その中で、最も心を動かされたことは代表の岡﨑さんの話し方です。Linkusはアナログ作業を効率的にシステム化してくれる便利そうなサービスですが、「システムの説明は専門用語がたくさん出てきて理解できないかもしれない…」と不安でした。ですが、岡﨑さんの説明はとても分かりやすくてしっかりと理解できたこと、寄り添っていただけると感じたこともあり「ぜひサービスを利用したい」と思いました。加えて特定技能関連の書類処理は本当に膨大な量で大変なので、それを軽減できるということも決め手のひとつでした。

ーー Linkusを利用してみてよかった点はありますか?

使い始めてからは担当者が親身に相談に乗ってくださるので助かっています。システム上でわからないことがあれば教えてくださいますし、改修のご対応もとても早いです。電話しやすい距離感で、問題解決もスピーディですね。現在は定期報告書の作成にも活用させていただいています。

ーー 今後「海外人材の受け入れたい」と考えている企業や担当者さんに、メッセージをお願いいたします。

「言語はどうしよう」など不安要素を考え始めると踏み切れなくなりますし、最初の一歩がなかなか踏み出せないという気持ちもわかりますが、いずれ介護業界でも力となる海外人材です。実際に海外人材を雇用したら、その後はぜひ「自分たちも一年生。一緒に成長していく」という思いでいてください。そして、何か課題が出てきたら「じゃあこうしてみよう」と海外人材と一緒に考えていくことで、海外人材も受け入れる企業も成長していけると思っています。ぜひひとつずつ丁寧に取り組んでみてください。

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