全国初の「事業者間相互扶助」で挑む、外国人材雇用のセーフティネット構築。特定技能1号・2号を包括するART共済の挑戦

外国人材の受入れ拡大が進む中、特定技能をはじめとする外国人スタッフの「業務外での事故・病気・賠償トラブル」への対応は、受入企業や登録支援機関、監理団体にとって無視できない実務課題です。一般的な民間保険では対応しきれないコスト構造や煩雑な申請手続きが、現場の大きな壁となっています。

こうした課題に対し、全国初となる「外国人材に特化した事業協同組合間の相互扶助共済」を立ち上げたのがART共済協同組合(代表発起人:有限会社アート企畫社)です。

今回は同組合の代表理事である門松哲様に、従来型保険との違い、事務負担を格段に軽減するデータ運用の仕組み、そして特定技能2号を見据えた包括的補償の必要性について詳しくお聞きしました。

ART共済協同組合の事業概要と相互扶助共済の取り組み

――まずは、御社の事業概要と総合扶助共済としての活動の概要について教えてください。

門松哲:アート企畫社は、もともと広義の保険や保証、共済といったリスクサービスの一環で、ビジネスモデルを構築するコンサルティング業を営んでおります。保険業法に限らず多様な根拠法のもと、さまざまな業界団体や事業者間におけるモデル構築を手掛けてきました。

2006年の保険業法改正で少額短期保険制度が導入された際、既存の共済制度が法の網にかかり、収益性を求められる法律下では本来の理念に合わないケースが生じました。これを受け、2007年に中小企業等協同組合法が改正され、組合内で相互扶助の共済ができる仕組みが整いました。当社は、この法律に基づく新設認可を全国に先駆けてクライアントとともに作成・取得した実績があります。

外国人材業界においては、約15年前に大手監理団体様から依頼を受けて共済制度を新設したノウハウや蓄積データがあり、その経験から再構築したのが現在のART共済協同組合です。

ART共済協同組合は、単なる保険商品の提供にとどまらず、事業者間の相互扶助の理念に基づいた共済制度の立ち上げと運用を行っています。非営利の共済制度として、業界の実状に応じたセーフティネットを提供しています。

在留外国人・特定技能向け共済制度立ち上げの背景

――なぜ在留外国人、特に特定技能などを支援する相互扶助目的の共済事業を立ち上げられたのでしょうか。

門松:私たちは約15年前から、技能実習生等の日常生活における保障制度の実務を通じ、共済加入や共済金支払の傾向や加入者から伺うニーズを集約し、一定のノウハウを蓄積してきました。これらを活かし、外国人材業界にとって真のセーフティネットとなる補償スキームを自前で作り直したいと考えました。

事業協同組合で運営される監理団体や登録支援機関と、この共済制度は非常に親和性が高い仕組みです。事業協同組合同士が組合員として加入し、受け入れる外国人一人ひとりを相互に助け合う仕組みは、全国発の試みです。

監理団体や登録支援機関をはじめとする関係事業者が一体となって共済制度を形成し、業界全体で外国人材を守る環境を創出しています。相互扶助の精神に基づき、特定の企業だけでなく業界全体で負担を分散・軽減できる仕組みを整えています。

業界のコスト構造を変革する「相互扶助」という選択肢

――事業協同組合間の相互扶助制度を導入したことで、加入者や受入企業からはどのような反響がありましたか。

門松:大きなメリットとして声をいただくのは「金銭的コストの最適化」「事務負担の軽減」「幅広い在留資格への対応」の3点です。

まず、非営利の共済制度であるため「収支相応の原則」に基づき、一人あたりの掛金を抑えて設計できます。また、就労中の事故は労災保険でカバーされるため、補償範囲を業務外の日常生活リスクに特化することによってもコストを抑えることが可能になっています。従来の民間保険では、外国人材業界から保険業界に支払う保険料に対し、保険業界から事故で支払われる保険金が少なく、外国人材業界側が損をする構造がありましたが、その点を解消しています。

手続き面でも、郵送や原本添付、手書き書類の手間を一切排除し、すべてデータとメール1本で完結するので、立替払いからの精算もスピーディーに行え、郵送費や移動時間などの業務コストを激減させています。

また、特定技能1号・2号をはじめ、介護、技人国、留学など幅広い在留資格に対応している点でも好評をいただいています。民間保険では海外旅行傷害保険が主契約ベースとなっているため、長期間の滞在となる特定技能2号、技術・人文・国際業務や介護などの業種の取扱いをされておらず、受け入れる企業としても公平に保障を提供することができない課題がありました。当共済では1号から2号へ移行してもシームレスに保障を継続でき、支援機関様の付加価値向上にも繋がっているようです。

一方で、補償の乱用に繋がらない工夫も実施しています。

それが治療費補償の「1,000円免責プラン」の導入です。通院1回ごとに1,000円のみを自己負担とすることで、全額補償によって「タダだから」という理由で本来は病院に行くまでもなく対応できるような症状での軽微な通院や、支援スタッフの付き添い負担の激増を防ぎ、現場の対応負担や医療費請求の濫用を防ぐ工夫をしています。

これからの外国人雇用におけるセーフティネットのあり方

――今後の外国人雇用において、ART共済がどのような存在でありたいか、将来的な展望をお聞かせください。

門松:当共済の役割は、慣れない日本で生活する外国人材と、彼らを支える受入れ側の「金銭的・心理的負担を軽減するセーフティネット」であり続けることです。

外国人材が日本社会で長期的に活躍するためには、業務面だけでなく「生活面の安全網」を強固にすることが不可欠です。

生活習慣や文化の違いから発生するトラブル、突発的な病気や事故に対し、適切な補償をローコストで手配できる環境があることは、受入企業にとっても確固たる防壁となると考えています。

私たちはデータを蓄積・分析し、「1,000円免責」のように、現場の生きた声を取り入れながら制度の適正化を図り、現場に即した柔軟な仕組みを生み出しながら、外国人材業界における健全な自家保険制度として発展させていくことで、受入企業・登録支援機関・外国人の全員が安心して働ける環境づくりに、これからも貢献していきたいと考えています。

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【インタビュー後記】

Linkup Journalのインタビューでも、多くの受入企業、登録支援機関が外国籍人材からよく受ける相談のひとつとして挙げるのが、通院に関するサポートです。思いがけない病気・けが等にみまわれる事は誰にでも起こりうることですし、そうした場面で保険や共済に助けられた経験のある人は、少なくはないのではないでしょうか。ですが日本人であれば当たり前に加入できるようなサービスも、外国籍の方はそもそも加入のハードルが高く、選択肢がほとんどありません。

特定技能の雇用拡大に伴い、2号取得を目指す人材を育成したい意向は多くの企業が抱えています。そのためには、キャリアサポートだけではなく、特定技能の従業員の方が不安なく活躍し、「長く日本で働きたい」と思える環境の提供が必要です。これからの支援管理では、補償や保険と、正確で負担の少ない支援業務管理の両軸で正しい雇用、管理を行う体制を構築していくことが重要になるのではないかと感じました。

▼支援業務の内製化・システム化に関する相談はLinkus・特定技能アドバイザーまでご相談ください。

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