【インタビュー】「先回り型支援」でミスマッチを解消。香川・岡山で特定技能の「定着」を追求する-AKANE株式会社

外国人材の活用が広がる一方で、「来日後の早期離職」や「生活面での摩擦」といった課題を抱える受け入れ企業は少なくありません。地方において外国人材に長く活躍してもらうためのポイントはどこにあるのでしょうか。

今回は、香川県・岡山県を中心に特定技能および技術・人文知識・国際業務の外国人支援事業を展開し、「令和8年度インドネシア共和国移住労働者保護省と連携した特定技能人材受入業務」も受託するAKANE株式会社執行役員の山﨑和広氏にインタビュー。ミスマッチを防ぎ、定着率を高めるための具体策や、地域社会との協調を見据えた「先回り型支援」のリアルな現場について伺いました。

現場のリアルを隠さず伝える。「違和感」の徹底排除がミスマッチと離職を防ぐ

――まずは御社の事業概要と、登録支援機関としての活動について教えてください。

山﨑和広氏(以下、山﨑):弊社は、有料職業紹介事業、登録支援機関としての特定技能外国人支援事業、そして人材紹介コンサルティングを展開しています。弊社の代表は香川県で「オートマックス」という自動車販売会社を経営しており、過去にベトナムから自動車整備の技能実習生を直接自社で受け入れた経験がありました。その際、現地の教育機関や送り出し機関に関わったことがきっかけとなり、2019年に本事業を創業しました。現地の教育機関だけでなく、受け入れを仲介する機関も自社で責任を持って手掛けたいと考えたためです。

弊社は株式会社ですので技能実習生の紹介・監理は行っておらず、主に「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」の2つの在留資格に対応しています。スタート当初はベトナム中心でしたが、現在はインドネシア国籍の方が圧倒的に多くなっています。香川県からの受託事業として、「令和8年度インドネシア共和国移住労働者保護省と連携した特定技能人材受入業務」なども推進しています。

――活動されている地域や、対象とする業種に特徴はありますか。

山﨑:拠点は香川県と岡山県に置いており、主な活動範囲は中四国エリアです。特定の業種だけに特化するのではなく、幅広い分野に対応しています。特定技能制度自体、自動車運送業への対象拡大や警備業の追加検討など、時代のニーズに合わせて拡大を続けています。企業様の多様なニーズに応えられるよう、幅広い業種での支援体制を整えています。

――登録支援機関として支援を行う上で、特に重視されているポイントは何でしょうか。

山﨑:私たちが最も重要視しているのは、何よりも「定着」です。そして定着を促すために最も必要なのは、企業様と外国人本人の間にある価値観のズレや「違和感」をなくすことです。

例えば、企業様が「日本語がある程度話せる」と聞いた際、日本人側のイメージではペラペラに喋れるレベルを想像されることもあれば、ギリギリ指示に返答できるレベルを想定されることもあります。ここですでに価値観のズレが生じています。そのため事前にビデオを撮影し、「この方の日本語レベルはこれくらいです」と認識合わせを行います。

住居に関しても同様です。「1Kで家電付きの部屋を用意しています」という説明に対し、外国人本人が綺麗な新築オートロックマンションをイメージしている場合、ある程度築年数の経ったアパートに通された場合、企業側が本当の事を伝えているにも関わらず「聞いていた話と違う」という最初の違和感が生まれてしまいます。

この違和感が1つ、2つと積み重なると、最終的に転職や帰国につながってしまいます。だからこそ来日前に部屋の写真や内装の映像を細かく見せ、「ここに入居します」と納得してもらった上で来日してもらうステップを徹底しています。

――仕事面でのミスマッチや違和感を防ぐために、現場ではどのようなアプローチをしていますか。

山﨑:職場環境の違和感をなくすため、同郷の先輩社員がいる場合は面接に同席してもらっています。通訳や営業担当は業務の細部までは分かりませんが、実際に現場で働く先輩社員なら「この仕事のここが大変」「こういう性格の人だと少し厳しいかもしれない」といったリアルな実体験を語ってくれます。

また、企業の許可を得た上で実際の職場内まで入らせていただき、作業風景や働く環境をビデオで撮影して事前に見せる工夫もしています。本人たちにとっても、日本での在留資格変更などの煩雑な手続きを挟むので、本来は転職したいわけではありません。事前に職場のリアルな様子を動画で見てもらうことで、入社後の「こんなはずじゃなかった」という不満や隣の芝生が青く見える現象を未然に防いでいます。

――特定技能2号の取得を目指す外国人材や企業に対しては、どのようなサポートを行っていますか。

山﨑:特定技能2号に関しては、「試験に合格しさえすれば誰でもすぐになれる」と誤解している外国人材や企業様が少なくありません。実際には、業種によって「2人以上を指導した経験が2年以上あること」といった実務経験の要件が定められています。

過去に「試験を受ければすぐ2号になれると思っていた」という失敗談もありました。そのため、本人が2号を目指す意思がある場合は早期に意思表示を促し、要件を満たせる実務経験や現場のセッティングを企業様と調整します。試験の申請自体も企業側が行う必要性があるため、双方のロードマップを揃えることが重要です。テキストの共有や勉強会のサポートも行いながら、合格に向けた道筋を一緒に作り上げています。

トラブルの芽を未然に摘み取る。警察連携の講習から生活指導まで行う「先回り型支援」

――受け入れ企業や外国人本人からは、日常的にどのような相談が多く寄せられますか。

山﨑:法律で定められた義務的な支援の範囲から少し外れるような、実務的で生活に密着したご相談が非常に多いです。企業様からは「引越し作業を手伝ってほしい」「体調不良時の病院予約や受診に同行してほしい」といったご依頼を受けます。病院同行では、問診票の記入など最初のサポートを行い、次からは自力で行けるようにフォローします。

外国人本人からも、体調不良時の病院同行をはじめ、ハラール食材が売っている遠方店舗への買い物送迎、行政から届く給付金の申請書類の手続きサポート、さらにはキャッシュレス決済やクレジットカードの作成方法まで、多岐にわたるご相談を受けます。また、職場内での人間関係だけでなく、同じ部屋で暮らす同国人同士の同居人トラブルについての相談を受けることもあります。双方の言い分を丁寧に聞き、関係性がこじれないよう細かくコミュニケーションを取って間に入っています。

――そうした細かな課題に対し、御社ならではの強みはどこにありますか。

山﨑:弊社の強みは、顔の見える距離感でのフットワークの軽さと、トラブルが起こる前に対処する「先回り型支援」にあります。

例えば、夏の暑い時期にはエアコンの使用頻度が増え、後から請求される電気代の高さに驚いてトラブルになるケースがあります。そのため事前に「エアコンをこのように使うと電気代がいくらかかる」という説明を行っておきます。

また、日本人にとっても難しい「年末調整」の勉強会も毎年実施しています。書類の書き方だけでなく、「なぜこれを書くのか」「所得税や住民税はどのように決まるのか」という仕組みをZOOMや対面で指導します。特に住民税は入国2年~3年目(前年所得の発生後)から引き落としが始まるため、「会社が給与から不当にお金を引いているのではないか」と誤解されがちです。「1月1日時点の住所地で課税され、6月から控除が始まる」といった仕組みや、国外の家族を対象とした正しい扶養控除の申請ルールをあらかじめ教えることで、お金に関する不信感をゼロにしています。

――文化理解や生活支援で意識されていることはありますか。

山﨑:例えばインドネシアの方の場合、豚肉やアルコールの禁止、お祈りの習慣、女性のヒジャブ(頭巾)着用といった文化的な特徴があります。受け入れ企業様にご説明すると、皆様非常に親身に気遣ってくださるため、実は文化の違いによる大きなトラブルに発展したことは一度もありません。

これも事前に「現場にお祈りスペースがあるか」「業務中にヒジャブを着用できるか」を明確にし、お祈りスペースがない場合は募集段階で伝えて理解した人だけに応募してもらうという、事前のスクリーニングを行っているからです。事前共有さえ徹底できていれば、文化摩擦は防ぐことができます。

――先日、地域の警察署と連携して防犯・交通安全講習を実施されたそうですが、開催の経緯と反応を教えてください。

山﨑:香川県警察本部の「外国人防犯交通アドバイザー」の方から直接ご提案をいただいたのがきっかけです。入国時の生活オリエンテーションでも自転車ルールなどを長時間教えていますが、約8時間に及ぶ講義の中ではどうしても意識が薄れてしまいます。警察の方から直接お話ししていただく方がより強いインパクトになると判断し、受け入れ企業様にも声をかけて初めて実施しました。

講習では、自転車のスマホ利用に対する罰則強化(青切符導入)や歩道通行のルールなど、日本人でも正しく知らなかった最新の法令が解説され、受講した外国人材はもちろん企業担当者からも「非常に勉強になった」と大変好評でした。

雪の降らない地域から来た外国人材は、冬季の路面凍結によるスリップの危険性を体感として知りません。講習後は、企業訪問時に外国人の男の子が「山﨑さん、ちゃんと左側を通行してルールを守ってますよ!」と笑顔でアピールしてくれるなど、確かな防犯・交通安全の意識付けができています。地域住民の方が漠然とした治安への不安を抱きがちな中で、ルールを守って暮らす姿勢を姿勢として示すことは、地域共生の上でも非常に価値のある取り組みだと実感しています。

採用から「リファラル」を生む信頼構築。外国人材に「選ばれる」ための心得

――ミスマッチや早期離職を防ぎ、円滑な採用活動を行うための最も重要なポイントは何でしょうか。

山﨑:採用活動における「情報の透明性」です。都合の良いことだけを伝えたり、不都合な条件をぼかしたりして採用するのは絶対にNGです。

かつて、ある企業様でミスマッチから「転職したい」という申し出があった際、私は離職する本人から不満や大変だった点を全てヒアリングし、あえて「この会社のここが大変」というネガティブな要素も含めたインタビュー動画を作成したことがあります。そして次の求人募集の際、あらかじめその動画を応募者に見てもらい、納得した上で来日してもらいました。すると、「その大変さなら全然気にしません」という理解のある人材が集まり、結果として非常に良い雇用関係が築けました。

スーパーまで自転車で遠い、島しょ部でフェリー移動が必要といった立地条件や仕事のハードな側面も含めて事前開示し、その条件を飲み込める人だけに応募してもらう。飛び道具や特殊なシステムに頼るのではなく、隠し事をせずに地道でシンプルな情報共有とフォローを積み重ねること。これこそが、受け入れ企業と外国人材の双方が長く幸せに働くための一番の近道だと確信しています。

――これから新たに特定技能外国人の受け入れを検討している企業へアドバイスをお願いします。

山﨑:「外国人材を安価な労働力として雇おう」という考え方で参入すると、確実に失敗します。今や「日本側が選ぶ」のではなく、「外国人材から企業や地域が選ばれる時代」に変化しています。

採用をゴールとするのではなく、入国後の定着支援に最初からコストと手間をしっかりかけることこそが、最も投資対効果を高める結果につながります。

定着支援を丁寧に行っていると、現場で働く外国人社員から「ここはいろんなことを親身に対応してくれる本当に良い会社だから、私の知り合いを紹介したい」という相談が増えてきます。

中には「他の現場で聞いていた仕事内容と全く違う過酷な環境で働かされている友達を、自分が働いているこの職場に呼びたい」と紹介してくれる事例もありました。社員からのリファラル採用が回るようになれば、求人媒体や採用費に余計な費用をかけずに優秀な人材を確保できるようになります。初期の定着支援に手間をかけることが、めぐり巡って最大の採用メリットとして返ってくるのです。

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