
宿泊業における特定技能外国人の受け入れに焦点を当てた、LinkupJournalの新たな特集「宿泊業と特定技能」。沖縄県で6つのホテルを展開し、グループ9社で観光事業を推進する株式会社かりゆしへのインタビューをお届けします。
前編では、株式会社かりゆしにおける特定技能雇用の現状や制度上の壁、評価制度を通じたキャリアパスの可視化についてお伝えしました。
後編となる本稿では、同社が実践する国籍を超えた多文化共生の組織づくりや、熊本地震・ネパール洪水等に対する国際貢献活動、そしてこれから特定技能の導入を目指す企業に向けた実践的なアドバイスをお届けします。
国際貢献と共生の精神――自然発生的な「多文化共生」

ーー言語や文化が異なるスタッフ同士が円滑に働くために、どのような社内環境づくりを行っていますか。
銘苅:スタッフ同士の横のつながりを育み、職場改善の提案や部活動、CSR活動などの挑戦を後押しすることを目的とした有志メンバーで構成される、「夢・創造の種まき委員会」というチームが主体となり、様々な活動が繰り広げられています。その中で、ネパール人スタッフからの声をきっかけにサッカーコミュニティが生まれるなど、国籍や部署を超えた自然な交流にもつながっています。
ナマラジ:この活動の一環として、サッカーやバドミントン、バレーボールなどのスポーツ交流を毎月開催しています。普段は現場や部署が異なり顔を合わせないスタッフや、日本語が得意でない新入社員も参加し、スポーツを通じて名前を覚えたり会話を楽しんだりする貴重な機会となっています。
玉那覇:また、約400名が生活する社員寮からは「買い物バス」を運行しています。これは外国籍スタッフに対してだけではなく、社員寮の入寮者向けの福利厚生です。ですが、このバスを外国籍スタッフと日本人のスタッフが一緒に利用する中で自然と仲が深まる好循環が生まれています。
ナマラジさんのように率先して周囲を支え、組織を牽引してくれるリーダーの存在があり、日本人スタッフの中にも「ナマラジさんを尊敬している」「彼のようなリーダーになりたい」という声が上がっています。国籍関係なく、真摯に働く姿が社内全体の良い刺激になっています。
ーー自然発生的なコミュニティや、既存の仕組みの中で新たな交流が生まれているんですね。御社が外国人材と向き合う上での根本的な理念や、国際的な取り組みについて教えてください。
玉那覇:沖縄には、イチャリバチョーデー(一度逢えば皆兄弟)」という言葉があります。外国人だからと区別するのではなく、持続可能な社会(SDGs)の観点から一人の人間として向き合うことが前提です。
海外からは「特定技能制度は、最も働ける時期を日本が使い捨てにしている」といった厳しい批判がなされることもあります。制度上の矛盾や課題については、沖縄から特区制度などを活用して改善を訴えていきたいと考えています。一人ひとりの人生に責任を持ち、安心して日本で暮らし続けられる制度設計と共生社会の構築が不可欠です。
また弊社では、2015年のネパール大地震への支援をはじめ、2026年8月にネパールで発生した大規模な洪水・土石流の際にもネパール政府の「首相災害救援基金」へ義援金を寄付するなど、人道支援にも取り組んできました。弊社のネパール人スタッフ約100名を代表してナマラジさんに目録を手渡し、現地復興への願いを共有しています。単なる労働力として見るのではなく、相互の信頼と貢献の精神を大切にしています。
當眞:長年外国人材を受け入れてきて痛感するのは、彼らが「国や家族を離れ、わざわざ沖縄という小さな島に来てくれた」という志に対するリスペクトです。
単に労働力を得て対価を払う関係を超え、日本や沖縄に「夢」を抱いてもらえる場所にならなければなりません。安心できるコミュニティがあり、居場所を感じられる企業・地域になることこそが、結果として世界から「選ばれる」ための唯一の道だと信じています。
成功への鍵は「パートナー選び」と「現場の声の傾聴」

ーー文化的な土壌が、外国人材の受け入れ姿勢にも繋がっているんですね。これから特定技能制度の導入や活用を検討している宿泊事業者へメッセージをお願いします。
當眞:初めての取り組みには当然不安が伴いますし、出入国在留管理局をはじめとする行政手続きのハードルも非常に高いのが現実です。
私たちが伝えたいのは、「すべてを自社だけで抱え込もうとしないこと」です。信頼できる登録支援機関や専門家、行政書士など、伴走してくれる適切なパートナーを見つけることが安定運用の大きな鍵となります。
また、すでに受け入れを行っている事業者の現場の視察や、実際に働く外国人材の生の声、例えばどんなことに悩み、どんなことに喜びを感じるのか、を聞くことをお勧めします。足元を固め、現場の課題に向き合っていくことで、必ず持続可能な受入体制が構築できるはずです。
そして、最も重要なのは「現場の受け入れ体制」です。外国人材を仲間に迎える意味や意義を、トップメッセージとして明確に発信し続けることで、現場にもその意識が次第に浸透していきます。文化や言葉の壁は想像以上に高く、時にぶつかることもあります。外国人材を迎えるために必要な「心構え」があれば、仲間として共生できると思います。