特定技能【漁業】で海外人材を採用するために必要な要件や任せられる業務について

特定技能

特定技能制度は、国内での人材確保が困難な業種において即戦力となる外国人を受け入れるための制度です。特定技能は現在12の業種が認められており、そのうちのひとつが漁業業界。人材不足が深刻化しており、有効求人倍率が高い分野のひとつです。

本記事では特定技能【漁業】分野において海外人材を雇用するために知っておきたい基本的な情報について解説します。なお、特定技能【漁業】の採用や在留資格申請のご不明点、[Linkus]がお答えします。ぜひご相談ください。

【漁業】の現状

引用:水産庁 公式ページ

日本の漁業・水産業界は働き手の高齢化・後継者不足が深刻化している業界のひとつです。過去20年間ほどで働き手は23,8万人(2003年)から15.3万人(2017年)と激減しています。最も多かった1930年代と比較すると産業規模はどんどん小さくなっているのです。

そのため、漁船員と水産養殖作業員の有効求人倍率は2倍を超え、業界全体の有効求人倍率は1.61倍とどんどん高くなっています。少子高齢化が進む日本国内で十分な人材を確保することは難しいため、特定技能や技能実習等の制度を活用することが必要不可欠だと言えるでしょう。

参考:漁業就業者をめぐる動向

人材不足に陥る原因

若い人材の確保が難しく、地方の漁村では「50代でも若手」と言われる漁業・水産業界。令和3年の漁業経営統計調査結果では、1経営体当たり漁労収入は平均で818万円で、漁獲量の増加により、前年に比べて2.7%増加してます。ところが、漁労支出は591万円で、油費、雇用労賃等の増加により、前年に比べて5.2%増加。漁労収入から漁労支出を差し引いた漁労所得は227万円です。国税庁の調査では給与所得者の1人当たりの平均給与は461万円なので、漁労収入は高いとは言えません。加えて業務の過酷さもあり、若手の人材が漁業業界を敬遠することから、働き手を確保することが厳しい状況です。

参考:
我が国の水産業をめぐる動き
令和3年漁業経営統計調査結果
国税庁 1年を通じて勤務した給与所得者 平均給与

在留資格【特定技能】とは

特定技能とは、日本に合法的に滞在できる資格(在留資格)の1つです。数ある在留資格の中でも、特定技能の資格を持つ外国人は日本国内での現場労働が認められています。特定技能は、中小企業・個人事業主を中心に広がる人材不足の課題を解決するために創設されました。国内人材の確保や生産性の向上といった施策でも人材を確保できない一部の職種について、一定の専門技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく、というのが特定技能創設の趣旨です。

特定技能には【特定技能1号】と【特定技能2号】の2種類があり(2023年4月時点)、【漁業】は【特定技能1号】のみ設定されています。【特定技能1号】を取得するには、後述する“技能水準”と“日本語能力水準”をクリアする必要があります。在留期間は最大5年までとなっており、原則1年ごとの更新が必要です。受け入れる企業や登録支援機関などのサポートを受けられるものの、家族の帯同は基本的に認められません。

特定技能に関して詳しく書かれた記事はこちら ↓↓

【2023年6月更新】特定技能とは?取得条件や対象職種を解説
2019年4月より、「特定技能」という新しい在留資格によって外国人労働者を受け入れられるようになりました。この制度を有効に活用できれば、人材不足の課題を打破できる可能性があります。この記事では、特定技能の「1号」と「2号」の違い、取得条件、

特定技能【漁業】の人材に任せられる業務内容

特定技能【漁業】において、海外人材に任せられる業務・分野は、大きく分けて漁業と養殖業です。具体例は、漁具の製作・補修、⽔産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、⽔産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛⽣の確保など。漁業又は養殖業に従事する⽇本⼈が通常従事することとなる関連業務であれば、特定技能外国⼈材も付随的に従事することができます。ただし、専ら関連業務のみに従事することはできないので、受入企業は十分に注意してください。

参考:特定技能外国人材の受入れ制度について(漁業分野)

漁業:

漁具の製作・補修、⽔産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、⽔産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛⽣の確保など。

  • 漁具・漁労機械の点検・換装
  • 船体の補修・清掃
  • ⿂倉、漁具保管庫、番屋の清掃
  • 漁船への餌、氷、燃油、⾷材、⽇⽤品その他の操業・⽣活資材の仕込・積込
  • 出漁に係る炊事・賄い
  • 採捕した⽔産動植物の⽣簀における蓄養その他付随的な養殖
  • ⾃家⽣産物の運搬・陳列・販売
  • ⾃家⽣産物⼜は当該⽣産に伴う副産物を原料⼜は材料の⼀部として使⽤する製造・加⼯及び当該製造物・加⼯物の運搬・陳列・販売
  • ⿂市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
  • 体験型漁業の際に乗客が⾏う⽔産動植物の採捕の補助
  • 社内外における研修など

養殖業

養殖資材の製作・補修・管理、養殖⽔産動植物の育成管理、養殖⽔産動植物の収獲(穫)・処理、安全衛⽣の確保など。

  • 漁具・漁労機械の点検・換装
  • 船体の補修・清掃
  • ⿂倉、漁具保管庫・番屋の清掃
  • 漁船への餌、氷、燃油、⾷材、⽇⽤品その他の操業・⽣活資材の仕込・積込
  • 養殖⽤の機械・設備・器⼯具等の清掃・消毒・管理・保守
  • ⿃獣に対する駆除、追払、防護ネット・テグス張り等の養殖場における⾷害防⽌
  • 養殖⽔産動植物の餌となる⽔産動植物や養殖⽤稚⿂の採捕その他付随的な漁業
  • ⾃家⽣産物の運搬・陳列・販売
  • ⾃家⽣産物⼜は当該⽣産に伴う副産物を原料⼜は材料の⼀部として使⽤する製造・加⼯及び当該製造物・加⼯物の運搬・陳列・販売
  • ⿂市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
  • 体験型漁業の際に乗客が⾏う⽔産動植物の採捕の補助
  • 社内外における研修など

受入れ可能な人材・要件について

特定技能【漁業】で受け入れ可能な人材・要件とは、「技能試験と日本語試験に合格している」または、「技能実習2号を良好に修了している」のいずれかです。

技能試験と日本語試験に合格

在留資格を得るためには、漁業の基礎知識を確認するための『漁業技能測定試験』と、日本語能力試験で一定の基準をクリアする必要があります。

◆漁業技能測定試験:
漁業技能測定試験は“漁業”と“養殖業”の技能分野に分かれています。“漁業”は漁船漁業職種の技能実習評価試験(専門級)の水準と同程度。“養殖業”は養殖業職種の技能実習評価試験(専門級)の水準と同程度の能力が必要とされます。学科試験及び実技試験ともに、コンピューターを使うCBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)方式かペーパーテスト方式が採用されています。CBT方式とはテストセンターでコンピュータを使って出題・解答するものです。受験者は会場でコンピュータの画面に表示される問題をもとに解答します。

◆日本語能力試験:
特定技能人材の受け入れの際、人材には即戦力も求められます。そのため、すぐに現場で働けるよう、資格取得のために日本語能力(N4以上)または、国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要があります。『日本語能力試験(JLPT)N4以上」とは、ある程度の日常会話ができて、日常生活に支障がない程度の日本語能力だとされています。

技能実習2号を良好に修了

技能実習2号を良好に修了している場合、技能試験や日本語試験を受けることなく、在留資格を技能実習2号から特定技能へ移行することができます。既に技能実習生として受け入れている海外人材を引き続き特定技能人材として受け入れる場合や、過去に受け入れていた技能実習生に働いてもらう場合はこの方法で雇用できます。地方出入国在留管理局への申請は必要ですが、比較的スムーズに【特定技能】の資格取得ができるでしょう。

特定所属機関(=受入れ企業)の要件

海外人材を特定技能外国人として受け入れる特定所属機関にも要件があります。大前提として漁業の事業を行っている事業所(法人)であること、そして法令を遵守し、雇用契約を遂行する体制が整っていることが必要です。その他、以下も要件とされます。

  • 1年以内に特定技能人材を受け入れようとする職種の労働者を非自発的に離職させていないこと
  • 1年以内に行方不明の外国人を発生させていないこと
  • 支援時の外国人から保証料の徴収をしないこと
  • 費用を特定技能人材側に負担させないこと

上記の条件を満たした上で、『漁業特定技能協議会』に加入し、協議会の活動や特定技能人材の育成に協力をすることも求められます。この協議会は、水産庁、大日本水産会、全国漁業協同組合連合会、全日本海員組合、全国海水養魚協会が幹事を構成する協議会で、協議会構成員が相互連絡しながら特定技能人材の保護や育成、協議会構成員の連携強化を図る組織です。受け入れについてだけでなく、特定技能人材の転職の相談も受け付けています。

特定所属機関に関する詳しい記事はこちら ↓↓

特定技能所属機関になるために必要とされる条件について
特定技能制度によって、以前よりも多くの外国人人材が日本で働けるようになりました。この制度を活用して、特定技能外国人を受け入れたいとお考えの企業も多いことでしょう。特定技能外国人を受け入れる企業のことを「特定技能所属機関」と言いますが、具体的

雇用形態について

特定技能【漁業】は直接雇用だけでなく、派遣での特定技能人材雇用が可能です。季節によって収穫量等の差が生じる業界なので、海外人材が安定した賃金を受けられないリスクを避けるためです。ただし、派遣雇用をする場合には以下の要件を満たす必要があります。

【関係規定】特定技能基準省令第2条
法第2条の5第3項の法務省令で定める基準のうち適合特定技能雇用契約の適正な履行の確保に係るものは、次のとおりとする。
九 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関にあっては、次のいずれにも該当すること。
イ 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関が、次のいずれかに該当し、かつ、外国人が派遣先において従事する業務の属する特定産業分野を所管する関係行政機関の長と協議の上で適当であると認められる者であること。
(1)当該特定産業分野に係る業務又はこれに関連する業務を行っている者であること。
(2)地方公共団体又は(1)に掲げる者が資本金の過半数を出資していること。
(3)地方公共団体の職員又は(1)に掲げる者若しくはその役員若しくは職員が役員で
あることその他地方公共団体又は(1)に掲げる者が業務執行に実質的に関与してい
ると認められる者であること。
(4)外国人が派遣先において従事する業務の属する分野が農業である場合にあっては、
国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)第16条の5第1項に規定する特定機関であること。
ロ 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関が、第1号から第4号までのいずれにも該当する者に当該外国人に係る労働者派遣等をすることとしていること。

引用元:特定技能外国人受入れに関する運用要領

派遣受け入れ法人は以下の要件を満たす必要もあります。

ⅰ 労働,社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること。
ⅱ 過去1年以内に,特定技能外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者を離職させていないこと。
ⅲ 過去1年以内に,当該機関の責めに帰すべき事由により行方不明の外国人を発生させていないこと。
ⅳ 刑罰法令違反による罰則を受けていないことなどの欠格事由に該当しないこと。

引用元:特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令 (平成三十一年法務省令第五号)

様々な条件があるため、受け入れ体制の整っていない法人への派遣は難しいでしょう。受け入れを検討する場合、事前準備を綿密に行ってください。とはいえ不可能ではないため、協議会に相談するなどするのがおすすめです。

報酬や転職について

特定技能【漁業】の外国人の報酬額は「日本人が同等の業務に従事する場合の報酬額と同等以上であること」とされています。また、同業者内での転職が可能です。転職が認められるのは、「同一の業務区分内、または試験等によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間」のみです。

特定技能【漁業】で来日した場合は漁業以外の他業種へ転職することはできません。アルバイトもできないので注意してください。複数の特定技能資格を保つ海外人材の場合、在留資格の変更許可申請を出入国在留管理庁が管轄する施設に提出すれば他業種への転職ができます。

まとめ

海外人材が来日することが難しかったコロナ禍を経て、現在は国交がスムーズに戻りつつあります。経済や国境を越えた人の行き交いの回復が進んでいくことが予想されるでしょう。【漁業】の特定技能採用は、特定技能特化型のプラットフォーム[Linkus]がお手伝いいたします。ぜひご相談ください。

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