海外人材雇用のメリットと注意点

コラム

近年日本では、少子高齢化による人口減少の影響により、中小企業を中心に人材不足の問題が深刻化しています。そんな人材不足の課題を解決し得るのが海外人材雇用です。

東南アジアを中心に、高度な技術やノウハウを習得する目的で日本に働きに来る海外人材は近年増えています。そんな海外人材は日本企業にとって人材不足を解消し得る存在です。

本記事では海外人材雇用の持つメリットと注意点(課題)を詳しく解説します。

企業の海外人材雇用拡大について

企業の海外人材雇用はどのくらいの伸び率で拡大しているのでしょうか?海外人材雇用の拡大状況に関しては、厚生労働省が公表している「在留資格別外国人労働者数の推移」のデータが参考になります。

このデータによると、2008年時点では48.6万人しかいなかった海外人材労働者は、10年後(2018年)には146万人にまで増加しています。伸び率で言うと、10年間で海外人材労働者数はおよそ3倍も増加したことになります。

特に2014年以降は、技能実習生や資格外活動(アルバイトなど)の海外人材が大幅に増えたことで、海外人材雇用の伸び率が高くなっています。一昔前と比べて、海外人材労働者が働きやすい制度となったこと、日本企業からのニーズが高まっていることが、ここ数年の雇用の拡大につながっていると考えられるでしょう。

出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和4年 10 月末現在)

海外人材雇用のメリット

海外人材雇用を積極的に行うと、どのようなメリットを得られるのでしょうか?冒頭でもお伝えした「人材不足の解消」以外にも、実はあらゆるメリットが得られます。この章では、人材不足の解消以外の面で、海外人材雇用により得られる5つのメリットをご紹介します。

メリット①:多言語対応が可能となる

日々行う事業活動の視点から見た場合、多言語対応が可能となる点が海外人材雇用のメリットです。

日本で働く海外人材の中には、自国の言語と日本語だけでなく英語を話せる方もたくさんいます。英語を話せる海外人材を雇用することで、海外から来日しているお客さんの接客や、海外のクライアントとの商談における通訳・翻訳など、様々な場面で多言語対応が可能となります。

近年は、経済のグローバル化や海外からの観光客の増加により、日本でビジネスを行う場合でも英会話の能力が求められるケースが増えています。英語でコミュニケーションをとれないのは、大きな機会損失となりかねません。

外国語を話せないことによる機会損失を回避できる点は、海外人材を雇用する最大のメリットと言っても過言ではないでしょう。

メリット②:海外進出にプラスとなる

海外人材の雇用は、海外進出を考える企業にとっても大きなメリットをもたらします。

たとえば海外進出を図る際に、現地の人とコミュニケーションをとるために、現地の言葉や英語を使いこなす能力が必要です。それを有する海外人材を雇用すれば、現地のクライアントや顧客と問題なくコミュニケーションをとることができます。

また、海外進出を成功させるには、日本とは異なる現地の商習慣や顧客のニーズに合わせる必要があります。日本人だけで一から商習慣やニーズを理解し対応するのは簡単ではありません。進出先の国出身の海外人材がいれば、その国の商習慣やニーズをつかみやすくなるため、大きな失敗を避けることができるでしょう。

海外人材労働者は、海外進出を進めるうえで強力なサポーターとなってくれる可能性も秘めています。

メリット③:既存のものとは異なるアイデアや技術が生まれやすくなる

外国籍の労働者の多くは、日本と異なる文化や環境に触れながら育ってきました。彼らは現在の日本で根付くものとは、異なるアイデアや技術をもたらしてくれる可能性があります。革新的なアイデアや技術を海外人材がもたらすことで、日本人の社員にとっても大きな刺激となり、会社全体の創造性が高まる効果も期待できます。

革新的なアイデアや技術でビジネスを大きく成長させたいならば、海外人材を雇用するのを選択肢の一つとして視野に入れてみましょう。日本で育った日本人同士で話し合った場合には想いも寄らなかった発想をもたらしてくれるかもしれません。

メリット④:若くて優秀な人材を確保できる

少子化の影響により、昨今の日本では若い人材が減少傾向にあります。若くて優秀な人材を確保することは、今後ますます困難になっていくでしょう。一方で日本以外のアジア圏には、人口増加や経済発展の影響で、若いながらも優秀な人材がたくさんいます。加えて人件費に関して、日本よりもアジア圏にある新興国の方が比較的抑えられると予想されます。

メリット⑤:コミュニケーションが活発化する

人にもよりますが、日本人と比べると海外人材の方が、積極的に議論や質問をする傾向があるようです。海外人材を雇用することで、議論や質問のやりとりは増加する可能性が高いです。社内全体でコミュニケーションが活発化することで、社員同士の意思疎通が円滑になったり、新しいアイデアが生まれやすくなるかもしれません。

コミュニケーションの頻度が高まるに伴って、コミュニケーション能力自体がアップする可能性があります。コミュニケーション能力が高まることは、商談など日々の事業活動にとってもプラスとなるでしょう。

海外人材を雇用するにあたっての課題・注意点

上記でお伝えしたように、海外人材雇用には多言語対応やコミュニケーションの活性化など、あらゆる点でメリットを得られます。しかし、外国人雇用にはメリットだけでなく、課題や注意点もあります。

海外人材労働者を雇用するにあたっては、下記4つの課題に注意しましょう。

課題①:コミュニケーションや教育が難しい

海外人材を雇用するうえで、もっとも気をつけたい点はコミュニケーションや教育の難しさです。言語の違いからお互いに伝えたい内容をスムーズに伝えられないことも難しさの一因ですが、言語のみならず文化や考え方も大きく異なることが多いでしょう。

日本では常識と言えることを納得してもらえなかったり、日本ではあり得ないことを平気で行われたりすることが多々発生します。空気を読んで発言する傾向がある日本人に対して、言いたいことを率直に言うのが常識である人もいます。

こうした価値観の違いから、お互いがお互いを「非常識」とか「失礼」と感じ、不信感を抱いてしまうケースは少なくないようです。その結果、労働者側がある日突然辞めてしまったり、反対に企業側が教育を諦めてしまうという事例も多くあります。

海外人材を雇用する際には、文化や価値観、常識が大きく異なることを理解した上で、根気強くコミュニケーションをとりましょう。

課題②:労働に対する価値観が日本人と異なる

労働に対する価値観も日本人と海外人材とでは大きく異なります。たとえば、就業時間を過ぎても「周りの人が残っていると自分は帰りづらい」と感じる日本人は多いと言われています。対して定時になると素早く帰る海外人材は多いようです。どちらが良い・悪い、正しい・間違っている、ではなく考え方や習慣の違いから起こる“違い”です。海外人材を雇用する際には、労働に対する価値観が違うことを踏まえてやり取りをしましょう。意思を尊重しつつ一つ一つ理解してもらうのが、一緒に働いていくコツかもしれません。

課題③:ビザの取得に手間と時間がかかる

日本で雇用できる海外人材は、就労が許可されたビザを持っている人に限られます。日本国内ですでに就労ビザを取得している人を採用する場合は、ビザの保有有無を確認するだけなので手間はかかりません。ですが、他国に住んでいる海外人材を日本に呼んだ上で雇用するケースや、日本にいる海外人材が新たに就労ビザを取得する場合には、ビザ取得の手続きをサポートする必要があります。

就労ビザを取得するには、「在留資格認定証明書の交付申請」や「現地でのビザ取得」など複雑な手続きが必須であり、具体的な手続きや所要時間はビザの種類で異なりますが、早くても数週間〜3ヶ月ほどの日数がかかります。思い立ってすぐに雇用できるわけでないため、早い時期から計画的に海外人材雇用の準備を進めましょう。

課題④:日本人採用がおろそかになるリスクもある

優秀な海外人材を確保できたとしても、その人がずっと日本で働き続ける保証はありません。スキルや技術をつけたタイミング、家族の都合で急に帰国する可能性は十分考えられます。

日本人の場合は家族が日本に住んでいる場合が多く、「技術を身につけて自国へ帰る」という可能性も低く、長く働いてくれる可能性は高いと言えるでしょう。突然、人材不足にならないよう日本人の採用も安定的に視野に入れておく必要があります。

まとめ

いくつかの注意点はあるものの、それ以上に得られるメリットが大きい海外人材雇用。海外進出や外国人をメインターゲットとしたビジネスでは、海外人材雇用が絶大な効果を発揮してくれるかもしれません。ご紹介したメリットや注意点を踏まえて、雇用の可否を考慮してみてください。

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