【監修】
長江 修
大手新聞社ニュースサイト制作や企業広報を経て行政書士資格を取得し、2017年に東京・上野にてON行政書士事務所を開業。「皆様の暮らしやビジネスの良きパートナー」であることをモットーに、【在留資格の書類作成・申請取次】をはじめ、【建設業許可】【古物商許可】などの各種行政手続き書類作成・申請代理を中心に展開。最近では【持続化給付金】【家賃支援給付金】などコロナ支援制度の対応も多い。また、経歴を活かし【ホームページ制作】など行政書士以外の業務も取り扱う。
手軽に手に取ることのできる菓子類やペットボトル飲料、レトルト食品など、我々の生活には調理済や半調理済の飲食料品がたくさん存在しています。これらの商品を製造し、食文化を支えている産業が、飲食料品製造業です。
日本における飲食料品製造業の意義は大変大きく、消費者の生活を支える、なくてはならない産業です。しかし同時に、安定した事業運営のための人材の不足が深刻化している産業の一つでもあります。
この業界をサポートするための制度の一つに「特定技能」制度があります。日本の食卓を守るこの制度についての理解と活用は、安定した食料・飲料品の供給につながことでしょう。なお、【特定技能 飲食料品製造業】の採用や在留資格申請のご不明点、Linkusがお答えします。ぜひご相談ください。
飲食料品製造業の現状について
飲食料品製造業とは、食べ物や飲み物を製造し、食文化を支えることを生業としている業種を指します。後ほど詳しく説明しますが、例えば袋入りの菓子や缶飲料の製造、お惣菜や弁当の調理、あるいはチェーンの飲食店のセントラルキッチンなどが含まれます。外食や内食(買い食)など食のスタイルの多様化もあり、現代日本においてなくてはならない業種と言えるでしょう。
しかし、業界における人手不足は大変深刻です。飲食料品製造業における有効求人倍率は年々上昇を続けており、2017年には2.78倍となっています。全産業平均では1.54倍ですから、大変高い数値です。また、同年の欠員率は全産業平均1.8%に対して実に3.2%と、深刻な人手不足の現状が伺えます。
食飲料品製造業は、日本人の食生活を支える大変重要な産業です。このような産業が人手不足で立ち行かなくなると、食品・飲料品の需要供給バランスが崩れ、国民の生活に影響が生じる可能性があります。この業界における人手不足の解消に向けた取り組みは、日本国内において急務とも言うべき課題なのです。
特定技能「飲食料品製造業」とは
飲食料品製造業における人手不足の解消に向けた取り組みのひとつに、「特定技能」の活用があります。これは、日本における在留資格のひとつです。在留資格とは、外国人が日本国内に在留するための資格です。日本での在留理由や活動内容に応じて様々な在留資格があります。
制度の概要
在留資格「特定技能」は、日本国内において特に人手不足が深刻な業界14分野(2021年7月現在)に限定して設定されている在留資格です。飲食料品製造業もそのひとつに数えられており、特定技能外国人をスタッフとして雇い入れることができます。
特定技能は前述の人手不足が深刻な業界を「特定産業分野」と定め、各分野において求められる職業技能を有した人材に与えられる資格で、5年間、就業と国内の在留を認められます。人手不足の業界において、即戦力として活躍できる人材に与えられる資格であるため、すでにその職域における職業技能を有していることが資格取得の要件となります。
◆特定技能に関して詳しく書かれた記事はこちら↓↓
業務内容
特定技能外国人の従事できる業務内容については次の項で詳しく紹介しますが、原則飲食料品製造業全般での勤務が可能となります。製造する商品や流通形式によって在留資格が異なると言うことはありませんので、この資格を持つ人は特定技能が定める飲食料品製造業分野内であれば転職も可能です。
また、製造作業そのものだけでなく、製造業務に付随する作業に従事することも差し支えありません。ただし、その業務の専従は認められません。付随する作業とは、例えば次のようなものがあります。
- 原料の調達、仕入れ
- 製品の納品
- 清掃
- 事務所の管理の作業
雇用形態・報酬
飲食料品製造業において特定技能外国人を雇用する際には、直接雇用である必要があります。派遣社員として勤務させることはできません。また、報酬に関しては同じ業務に従事する日本人従業員と同等以上でなければいけないという取り決めがあります。
特定技能はあくまで国内人材だけでは充足できない人手不足を解消するための取り組みであり、外国人材を安価な人件費で雇い入れるための制度ではない、という点については理解しておく必要があります。
特定技能「飲食料品製造業」の方が従事できる業務
特定技能「飲食料品製造業」の在留資格で就業できる業種は、「飲食料品の製造業全般(飲食料品の製造・加工、安全衛生)」とされています。酒類の製造業は対象外です。
特定技能が定める飲食料品製造業分野内では垣根なく就業することが可能です。例えばパンの製造業で従事していた特定技能外国人が、清涼飲料水の製造業に転職することも可能、と言うことです。
ただし、追加の技能測定試験(※後述)の受験をせずに転職が可能な対象となる業種は同じ飲食料品製造業に限られます。
対象となる業種は、日本標準産業分類における次の7分類の事業を行っている事業所です。
(1)食料品製造業(中分類09)
レトルト食品や加工食品など、食品を製造する業務はこの資格の対象分野です。ファミリーレストランなどチェーン展開している飲食店のセントラルキッチンにおいても、特定技能「飲食料品製造業」の資格で働くことができます。
(2)清涼飲料製造業(小分類101)
ペットボトル飲料や缶飲料、紙パック飲料など、清涼飲料水を製造する業務も同様に対象です。ただし、酒類の製造は対象となりませんので注意が必要です。
(3)茶・コーヒー製造業(小分類103)
お茶やコーヒーなどの飲料の製造もこの資格で従事することができます。
(4)製氷業(小分類104)
氷商品の製造も飲食料品の製造業として認められています。飲料に使用する氷や、夏の季節にかき氷として活躍するなど、日本人の飲食生活において意味のある存在です。
(5)菓子小売業(製造小売)(細分類5861)
小売業は特定技能の対象外ですが、例外として一部の製造小売業は飲食料品製造業分野に含まれます。店内キッチンで食品を製造し同一店舗内で販売するような業態の場合、製造小売業として対象となることがあります。菓子小売業(製造小売)は、店舗内で調理しその店舗で販売する洋菓子店、和菓子店などが該当します。
(6)パン小売業(製造小売)(細分類5863)
パンについても同様に、製造小売業の枠組み内であれば特定技能の在留資格で従事可能で、具体的には店舗内で調理しその店舗で販売するベーカリーなどです。販売(小売)だけの場合には対象とならないため注意が必要です。
(7)豆腐・かまぼこ等加工食品小売業(製造小売)(細分類5897)
パン・菓子の他、「豆腐・かまぼこ等」についても同様です。加工食品を製造し、その事業所において販売する形であれば、消費者に向けた小売業務が含まれていても製造業の事業所であると判断されることがあります。
特定技能「飲食料品製造業」の取得要件とは
特定技能は在留資格ですから、誰でも資格を得られると言うことはありません。特定技能「飲食料品製造業」を取得するためには、次の要件を全て満たす必要があります。
- 飲食料品製造業の業務遂行において必要とされる知識や経験、技能を有していること
- 飲食料品製造業の業務遂行に必要な日本語能力を有していること
業務知識や技能の要件
業務遂行に必要な技能については、一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)の実施する「飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験」を受験し、合格する必要があります。試験内容は学科試験と実技試験に分かれており、次のような内容に関して学科試験では知識を、実技試験では技能や判断力を測られます。(実技試験も、実技を想定したペーパーテストです)
- 食品安全・品質管理の基本的な知識
- 一般衛生管理の基礎
- 製造工程管理の基礎
- HACCPによる衛生管理
- 労働安全衛生に関する知識
日本語能力の要件
日本語能力については、国際交流基金が実施する「日本語基礎テスト」のA2以上、または国際交流基金と日本国際教育支援協会が実施する「日本語能力試験」のN4以上に合格する必要があります。
各試験が免除となるケース
日本国内において、技能実習2号を修了している人に関しては、これらの試験が免除になるケースがあります。
飲食料品製造業に関連のある職種での技能実習2号を良好に修了した人については、技能試験・日本語試験の両方が免除されます。それ以外の職種における技能実習2号を良好に修了した人は、日本語試験のみが免除されます。
技能試験が免除になる技能実習の職種は次の通りですが、作業によっては対象外もあるため出入国在留管理庁や農林水産省などの資料をよくご確認ください。
- 缶詰巻締
- 食鳥処理加工業
- 加熱性水産加工食品製造業
- 非加熱性水産加工食品製造業
- 水産練り製品製造
- 牛豚食肉処理加工業
- ハム・ソーセージ・ベーコン製造
- パン製造
- 惣菜製造業
- 農作物漬物製造
補足:
非加熱性水産加工では特定技能の対象となっていない作業があります。http://www.moj.go.jp/isa/content/001335263.pdf (後半部分)この2つは昨年に技能実習の職種に加わったため、2021年7月現在において修了者は実質いません。
特定技能所属機関に求められる要件と注意点
特定技能で在留する外国人を雇い入れるためには、特定技能所属機関として要件を満たす必要があります。特に、飲食料品製造業に関しては対象となる事業所とそうでない事業所の区別がわかりにくいこともあります。雇用を検討する際には、自分の事業所が対象となるのか、要件を満たしているのかをきちんと理解している必要があります。
◆特定技能所属機関に関して詳しく書かれた記事はこちら↓↓
特定技能「飲食料品製造業」の方を雇用できない事業所
特定技能「飲食料品製造業」で在留する外国人の方を雇用するためには、業務の項で紹介した7つの産業分類のいずれかに該当する事業所である必要があります。飲食料品の製造・加工業(セントラルキッチンなどを含む)は対象となりますが、次のようなケースでは対象外となるため注意が必要です。
- スーパーマーケットのバックヤードなど、小売業がメインとなる事業所での食品製造業務
- しいたけの石づきを切り落とすなど、軽微な加工のみを行う野菜卸売業・農業
- 客の注文に応じてその場で調理し提供する持ち帰り店舗(接客を伴う事業所)
また、食品の加工販売と加工していない食品の販売をどちらも行っている場合、加工販売品の売り上げが全体の1/2を超えている場合のみ対象となります。例えば食肉と精肉加工品、野菜と野菜の加工品(カット野菜など)をどちらも扱う事業所の場合、その割合が意味を持ってくる、ということです。
食品産業特定技能協議会への入会が必要
特定技能で在留する外国人を雇い入れる事業所は、特定技能協議会への加入が必要となります。特定技能「飲食料品製造業」の場合、食品産業特定技能協議会への入会が必要となります。新規で雇い入れる場合、4ヶ月以内に入会が必要ですので、忘れないようにしましょう。
まとめ
日本において、調理済や半調理済の食品・飲料品は国民の食生活を支えるなくてはならない重要な商品と言えます。これらの商品のおかげで日本の食卓は豊かになっているといっても過言ではないでしょう。また、働く世代など忙しい人々の健康と豊かな食生活を支える存在でもあります。業界における深刻な人手不足を解消し安定した供給を守ることは、日本人の食生活と社会を支える一助と言えます。
特定技能の制度を活用し技能を持った即戦力となる外国人を雇い入れることで、人手不足の現状を解決し、安定した運営が期待されています。そのためにも、【特定技能 飲食料品製造業】の採用や在留資格申請に関して、Linkusにぜひご相談ください。