【説明会レポ:小松氏編】渡航ができないこの状況下で実習候補生たちは何を感じているのか

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外国人雇用をテクノロジーで支援するBEENOS HR Link株式会社(以下「BEENOS HR Link」)は、コロナ禍での海外人材の雇用状況について解説する【海外人材雇用】記者説明会を3月4日(木)に開催。緊急事態宣言下ということでオンライン説明会となりましたが、20社以上の報道関係者様にお集まりいただきました。

本説明会でご登壇いただいた方の一人、小松富成氏はTIN PHAT技術貿易株式会社副社長 兼 日本事業部事業部長です。海外人材を送り出す側から「コロナ禍における海外人材の雇用状況」について、リアルな現場のお話を交えつつご解説いただきました。

小松氏のプロフィールについて

国籍は日本ですが、新型コロナウイルス感染症の騒動が起きる前は、年間300日ベトナムで暮らしていました。2020年6月に営業のために日本にきてから、ベトナムへ戻ることができず、現在も日本に滞在しています。コロナの騒動が起こる少し前に、厳しい状況になっていくことを見越して、3つの送り出し期間が統合して現在のTIN PHATとなっており、ハノイのトン クアン トアンというところに本社を構えています。

コロナ前と比較した技能実習候補者たちの入国状況

2019年12月に新型ウイルスが発生した当初、ベトナムではそれほど大きなニュースとして取り上げられていませんでした。ところがそのウイルスはあっという間に世界に広がり、2020年3月に飛行停止、4月にベトナム全土のロックダウン。現在は飛行を再開しているものの、元どおりの生活にはなかなか戻れない状況です。

2020年7月に飛行再開となりましたが、2019年度中に送り出すはずだった実習生が約3万人足止めを食らっている状況でした。そこで少ない航空チケットの取り合いとなり、2021年の1月までに送り出すことができた人数は1万4千人ほど。2019年度の実習生が1万6千人残っているのに加えて、2020年度分の実習生も送り出せていないため、滞っている人数はかなり膨大です。

ベトナムの送り出し期間は385社ありました。送り出す、すなわち人材派遣産業というのはベトナムにとって大きな産業であり、雇用される側もきちんとプライドを持って働いています。ベトナムでの技能実習の求人スケジュールを簡単にご説明すると、5月に応募、6〜7月が面接、それに合格すると6ヶ月間の教育が行われます。

ところが、2020年の夏頃から求人数が激減しました。求人や面接のピーク時にロックダウンが行われたため、あらゆるフローがストップしたんです。その結果、偽の求人票が出回ってしまい、それに応募をしてきた人たちからお金を取る、という悪質な詐欺も横行してしまいました。この詐欺グループはすでに摘発されていますが、起こってしまったことは大変残念です。このような混乱の中で送り出し期間がどれほど残っているか、はっきりとした数は不明です。

この状況下で我々TIN PHATは、実習生の教育並び業務は一切しないと決めました。日本語学校は全て閉校し、経営スタッフと営業スタッフのみで運営をしております。コロナ禍の初期は農業をメインに特定技能外国人の送り出しに力を入れました。飛行機の運航状況が不確定であることと、受け入れる農家側の状況等でいろいろと難航しましたが、44名の方の送り出しに成功しています。それ以外に特定活動として働く方向けの支援を行っています。

日本の首都圏で非常事態宣言が解除されたとしても、飛行機の便がすぐに増えるとは考え難いですよね。早くて5月頃に飛行機が稼働したとしても、ベトナム国内で待機している方の数が多すぎますし、数ヶ月前にビザを取得した方は取り直しが必要です。申し上げたこと以外にも様々な混乱が起きており、技能実習生も特定技能も「ベトナムから日本への入国は諦めるしかない」と考えざるおえない状況です。

実習候補生が日本での就労を希望する理由とは

ベトナムの方が日本での労働を希望する理由の一つは「まとまったお金を手にいれるため」です。「お金が欲しい」という言葉は日本ではあまりいいイメージを持たれないかもしれませんが、ベトナムでは少し意味合いが違います。遊ぶために、何かを買うためにお金が欲しいというわけではなく、純粋に「まとまったお金を手にいれたい」という意味合いです。ベトナムではまとまったお金を手にいれるのが難しいんです。平均賃金は3万円と言われていますが、地方だと2万円、山間部では家族全員働いても5万円に満たない世帯もあります。二つ目の理由は日本に対していいイメージを持っていることです。ものづくりの技術が高い日本は魅力的です。桜、アニメ、その他文化財など、日本で暮らすことに憧れている方は多いです。

渡航ができないことに対する不安は、「本当に行けるのか」というのが最も強いのではないでしょうか。日本で働きたいと準備をしたものの、いつ飛行機が飛ぶか分からず、半年以上待っている方もいらっしゃいます。働けないまま借金を作ってしまった方もいて、実習生はその返済に追われてしまっているケースも少なくありません。その結果、日本語学校に申し出るなどして、いろいろなところでトラブルが報告されています。また、渡航が再開されてから予想されるトラブルもいろいろあります。「チケットを予約してしまっている場合、値上がりした差額は誰が負担するのか」などです。実習生にレジデンストラックを活用して日本へ入国してもらったとしても、受け入れ企業側の負担も増えてしまいます。

待機中にできることとしましては、日本語のオンライン授業です。寮制度のある学校は、授業を継続実施しています。

送り出し機関が抱える課題について

日本と比べてベトナムは“個人主義”かつ“家族主義”の方が多いように感じます。わかりやすく申し上げると、「自分と家族を信じるけれど、他の人は信じない」という考え方です。例えば、送り出し機関の組織は主に経営部、総務部、営業部、募集部で成り立っています。営業部の業務内容は日本とのやり取りや、日本からの来客のアテンド等で、基本給とインセンティブを受け取っています。募集部は文字どおり実習生を募集する部で、多くの人数を確保するほど報酬が増えていきます。同じ会社内でも隣の人は隣の人。自分の儲けは自分のもの。ですので、自分が使用する資料等は他の社員に開示しません。転職率も高いです。

このような社会では偽の求人票が出回りやすいんです。特定活動に関して私から求人票を出したとしても、翌日には別の会社で私が出した求人票が掲載されている…というような状況です。どうしてこのようなことになってしまうのか、と考えたところ「紙でやりとりしていることが問題」という結論に至りました。

他の課題は、求人の流れによって日本語学習が十分でない点です。実習生に関して、ベトナムの求人とインドネシアの求人では流れが違います。インドネシアは日本語学校に入学し、1年でN4からN3を取得したところで求人がきて学生が選抜されるため、実習生の日本語能力が高い傾向にあります。ベトナムは求人票ありきで候補者を募るため、募集の段階ではほとんど日本語が話せません。エントリー後に面接を受けて、合格してから日本語学校へ通い始めます。そのため、実際に送り出すまでに日本語学習が十分でないことも大きな課題です。ちなみに、ベトナムでは求人に応募した後、結果は自分で確認しなければ合否を教えてくれません。これも個人主義、国民性の影響です。

海外人材が日本で快適に働くために

ベトナムにおいて約半年間で詰め込まれる日本語や日本に関する教育は、十分であるとは言い難いです。そのため、労働者が快適に働くためには日本語のスキルアップが必要であると考えています。挨拶や冗談、ごめんなさいと言えるコミュニケーションスキルがあれば、仕事もプライベートも問題は激減します。反対に、日本語がままならずトラブルが起こり、日本の機関で相談がうまくできず、状況が複雑になってしまうこともあります。

先にも申し上げましたが、挨拶も非常に大切です。地方では日本人でも見慣れない方は目立ちますので、外国人はもっと目立ちます。近隣の方にきちんと挨拶ができるだけで、印象が変わってきますよね。挨拶からコミュニケーションが始まりますし。快適に働くためには、実習生からも周りに働きかけることが必要であり、そのためにも日本語能力、そして挨拶が大切なのではないかと感じています。

TIN PHAT 技術貿易株式会社
副社長 兼 日本事業部 事業部長
小松 富成 氏

グラフィック業界・IT業界を経験し、2003年にCAD関連の会社を設立。翌年にはハノイ市に現地法人を設立。会社権利を譲渡後、警備系システム会社などを経験する中で外国人材関連業務に従事。その後、送り出し機関運営・日本語学校コンサル・貿易業などを展開し、現在はベトナム最大規模の送 り出し機関TIN PHAT技術貿易株式会社の副社長 兼 日本事業部長として活動中。

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