外国人雇用をテクノロジーで支援する[Linkus]を運営する、BEENOS HR Link株式会社は、特定技能外国人雇用に関するウェビナーを3月18日(金)に開催。この記事では[公益社団法人国際厚生事業団 JICWELS]外国人介護人材支援部 井口 智恵 氏による「外国人介護職員を雇用できる制度〜EPA及び特定技能における実態〜」について解説しています。
なお、BEENOS HR Link株式会社 代表取締役・岡﨑氏による「海外人材雇用におけるIT化の必要性」については別のページでご紹介しています。
はじめに
私たち公益社団法人国際厚生事業団は日本国内の医療法人・社会福祉法人等を対象に、経済連携協定及び交換公文に基づき、EPA看護師・介護福祉士候補者等の斡旋等の事業を行なっている団体です。外国人介護人材支援部では厚生労働省の補助事業である、外国人介護人材相談支援事業を受託・実施しております。本日は【外国人介護職員を雇用できる制度〜EPA及び特定技能における実態〜】についてお話しします。
外国人介護職員を雇用できる制度
外国人介護職員を雇用できる制度は、私たちが支援している[EPA]、1号特定技能[介護]、技能実習[介護]、在留資格[介護]の4つあり、それぞれの違いは“目的”である。
・[EPA](経済連携協定)
二国間の経済連携の強化のため
・1号特定技能[介護]
すぐに日本で働いてもらえる即戦力として採用
・技能実習[介護]
日本での技術取得後、母国で技術を活かす
・在留資格[介護]
専門的・技術的な分野への外国人労働者の受け入れ
この4つ以外にも留学生や身分系在留資格をお持ちの方も、介護の現場で活躍しているケースもある。留学生の本分は学業であるため、基本的に週28時間以下という制限がある。
[EPA]と特定技能[介護]
[EPA]の制度では、インドネシア、フィリピン、ベトナムから受け入れを行なっており、[EPA]介護福祉士候補者(下記、「候補者」という。)となる条件は、母国の看護系の学校を修了した方が対象である。2021年3月現在の受け入れ人数は5,491名であり、1年間に各国300名を上限として受け入れを行なっている。
2019年から開始された特定技能制度は14業種が設けられており、そのひとつが[介護]である。学歴や経験を問わず外国人本人が試験に合格することで資格取得が可能となっており、特定技能[介護]では介護技能評価試験と介護日本語評価試験、日本語能力試験の合格が求められる。技能実習やEPAの制度を利用して日本で働いていた経験がある場合、試験が免除されるケースもある。その特定技能[介護]における2021年12月末時点の受け入れ人数は5,155名で、同年9月末と比較すると1,208名増加している。
[EPA]の受け入れについて
[EPA]での受け入れの流れは、インドネシアとフィリピンは、外国人と受け入れ施設の方とのマッチングからスタートし、面談をして雇用契約を結んだ後、候補者は現地にて約6ヶ月間の訪日前日本語研修を受け、一定の条件をクリアした候補者が日本へ入国。さらに日本に入国後は約6ヶ月間の訪日後日本語研修、導入研修(介護や看護の専門的な研修)を行い、施設での就労が開始。
ベトナムは受け入れの流れが少し異なり、最初にセレクション(選考)を行なった後、約12ヶ月の日本語研修を現地にて行う。その後、日本語能力試験N3以上に合格した候補者のみがマッチングに参加でき、雇用契約を結ぶ。雇用契約締結し訪日した後、約2.5ヶ月間の日本語研修を行い、施設での就労が開始。訪日後の日本語研修期間中、当事業団では1週間程度の介護導入研修を実施している。
EPA介護福祉士候補者に対する当事業団支援
EPA介護福祉士候補者に対する当事業団の支援は、各国の送り出し機関との調整やマッチングのサポート、年に1度の巡回訪問、国家試験に向けての学習サポートの他、受け入れ施設・法人・外国人本人からの随時相談窓口の設置し、言語別に対応。
EPA介護福祉士候補者第33回介護福祉士国家試験の合格率は48.2%で、初受験者はその中で53.0%、滞在延長者や再受験者が30.8%であった。
介護分野における特定技能外国人の現状
介護分野における特定技能外国人の現状は、出入国在留管理庁が発表しているデータの通り、2021年12月末時点で5,155名となっており、受け入れ人数は特定技能14業種中3番目に多い。最も多い外国人はベトナム国籍で、次いでインドネシア、フィリピン、ネパールである。
当事業団では、介護分野における特定技能外国人を受け入れている施設様にご協力を得て、巡回訪問を実施している。現時点で、介護分野では、他業種にて技能実習2号を修了した在留外国人が特定技能の資格に切り替えるケースが最も多い傾向になり、次いで、留学から資格を切り替えるケースが多い。
支援計画の概要
こちらは受け入れの際に行う義務的支援の概要である。
事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居の確保や生活に必要な契約などある “日本語学習の機会の提供”についての何をすればいいのかという質問が多い。実際、日本語の授業を行ってもいいが、テキストや日本語教育に関する情報を提供していただくだけでも支援となる。
日本人との交流促進については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で実施が難しい状況だが、職務の中で日本人とペアで動く、日本人とレクリエーションを行うという環境作りも交流促進となる。
多くの書類作成も必要となるが、ミスコミュニケーションが起こらないよう作成し、保管場所を施設担当者・外国人人材を決めておくとよい。またOJTや研修を丁寧に行うことによってスムーズに業務が遂行するという例がよくある。
支援を登録支援機関に支援を委託することも可能である。その際は任せきりにしないこと、外国人人材と登録支援機関とよくコミュニケーションをとることと注意が必要である。また登録支援機関選定の際は、それぞれ得意分野が違うため、いくつかの比較をすることをおすすめする。
特定技能制度の適切な運用のために14業種ある特定技能制度は各分野において、協議会の設置が義務付けられている。介護分野の主管は厚生労働省であり、当事業団は外国人介護人材相談支援事業として事務局支援をしている。
介護分野における特定技能制度の説明動画は、全9章に分けてアニメーションを使用して説明している。
外国人介護職の雇用に関するお問い合わせ先
外国人介護職の雇用に関する問い合わせ先は制度によって違う。[EPA]と特定技能[介護]の問い合わせは国際厚生事業団まで。
公益社団法人
国際厚生事業団 JICWELS
外国人介護人材支援部 井口 智恵 氏
2017年から2020年、フィリピン・マニラにて日本語講師として勤務。その後、EPA訪日前日本語研修にてEPA介護福祉士候補者への日本語予備教育事業に携わり、現在は公益社団法人国際厚生事業団 JICWELSにて、外国人介護人材支援部にて交流会の開催、外国人介護人材相談窓口などを担当。
まとめ
民間企業のセミナー・ウェビナーで 公益社団法人 国際厚生事業団 JICWELSのご担当者が登壇する機会は珍しく、大変貴重な機会となりました。今回、国際厚生事業団の外国人介護人材支援部 井口 智恵 氏から、[EPA]や特定技能[介護]を中心に、海外人材が介護職で活躍する制度やその活用について解説していただいています。今後ますます人材不足が懸念される介護業界において、海外人材を受け入れ、一緒に働いていくことは必要不可欠となってくるでしょう。労働力不足が深刻化する前に、是非とも海外人材の受け入れをご検討・ご準備されることをおすすめします。ご不明点があれば、公益社団法人 国際厚生事業団 JICWELS 外国人介護人材支援部、または[Linkus]までお問い合わせください。