外国人が日本ではたらきたいと思ったら、だれでもすぐにはたらける、というわけではありません。外国人がながい期間、日本に住み、はたらくためには、「在留資格」とよばれる資格をとらなければいけません。この資格は、「就労ビザ」とよばれることもあります。
在留資格をとるためには、日本の政府に対して書類を提出したり、申請書を書いたり、これまでの学歴や職歴を証明したりと、決まった手続きがあります。この段階でまちがいや足りないものがあると、資格をえることはできません。
ここでは、在留資格とはどういうものなのか、どんな種類があるのか、そして、取得するためにはどうしたらよいのかなど、いろいろな情報をしょうかいします。
就労ビザ(しゅうろうびざ)とは
「日本ではたらくためには、就労ビザをとらないといけない」ときいたことがありますか。まちがってはいませんが、正式には「就労ビザ」というものはありません。だれかが「日本の就労ビザ」といったときには、次の2つのうちどちらかの意味で使われることがほとんどです。
(1)就業査証
(2)在留資格
じつは、日本国籍をもっていない人が日本ではたらくなら、この2つはどちらも必要です。そのため、この2つを同じもののように考えていたり、役割をかんちがいしている人もいます。
しかし、この2つの役割を正しくわかっていないと、トラブルにまきこまれてしまったり、予定どおりに仕事をはじめられないこともあります。日本での仕事をスムーズにはじめるためには、この2つについてきちんとわかっていることが大切です。
まずは、「就労ビザ」とよばれる2つのものについて、その意味と役割を説明します。
就業査証(しゅうぎょうさしょう)とは
「査証」は、日本の外務省が発行するものです。簡単にいうと、日本の上陸に適した経歴やパスポートをもっているということを証明し、入国を推薦するものです。
査証は日本へ渡航するより前に、住んでいる国の日本国公館(大使館や領事館など)へ申請し、発行を受けるものです。申請する査証の種類によって必要な書類をそろえ、パスポートと一緒に提出して申請します。
査証にはいくつか種類があり、日本に来る目的に合わせて適したものを申請します。その人のもっているパスポート発行国によっては、みじかい期間の入国であれば査証がいらない国もあります。しかし、ながい間日本に住み、はたらきたい場合には基本的に全員、査証が必要です。
日本ではたらきたい人は、「就業査証」が必要となることがほとんどです。
査証について気をつけるべきことは、査証があればかならず日本に入国し、はたらくことができるというわけではない、ということです。
日本に入国し、はたらくためには次に説明する「在留資格」が必要です。査証はあくまで、この資格をとるため、外務省が発行する「推薦書」のようなものであるということを理解しておきましょう。(ただし、この「推薦書」がなければ、日本へ来ることはできません)
在留資格(ざいりゅうしかく)とは
在留資格は日本の法務省が発行するものです。日本にながく住むことを許可するもので、3ヶ月以上、日本に住む予定の外国人は必ず取得しなければいけません。
在留資格には種類があり、それぞれの資格により、はたらくことができたり、できなかったりします。そのため、はたらくことができる在留資格のことを特に「就労ビザ」と呼ぶことがあります。
この在留資格がないのに日本に住んでいると、「不法滞在」として罪になってしまいます。また、はたらけない在留資格なのにはたらいてしまったり、もっている在留資格とは違う内容の仕事をしてしまうと、在留資格が取り消しになってしまうこともあるので気をつけましょう。
ふつう、「就労ビザ」というとこの在留資格のことであることが多いです。この後は、「就労ビザ」と書いてあるときには在留資格のことについて説明していると思ってください。
就労ビザの種類(しゅるい)
日本以外の国籍の人が3ヶ月以上、長くためには、だれでも在留資格がいります。在留資格にはいくつか種類があり、その人が日本に住む目的に合ったものを取得します。
日本ではたらくことができる在留資格=就労ビザは、大きく分けて2つの種類があります。「活動にもとづく就労ビザ」と、「身分にもとづく就労ビザ」です。
活動(かつどう)にもとづく就労ビザ
活動にもとづく就労ビザは、日本ではたらく外国人の多くが取得している在留資格です。「就労ビザ」というと、この「活動にもとづく就労ビザ」ではたらくことができるものだけを指すこともあります。
日本ではたらきたい場合は、この「活動にもとづく就労ビザ」の中で、はたらく予定の仕事内容に合ったものを取得する必要があります。活動にもとづく就労ビザのうち、はたらくことができるものには次のようなものがあります。
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これらの在留資格で日本に住む場合、それぞれの在留資格がみとめる仕事しかすることができません。別の仕事内容ではたらきたい場合には、在留資格を変える申請が必要です。申請せずかってに別の在留資格をしてしまうと、在留資格が取り消しになってしまうことがあります。
身分(みぶん)にもとづく就労ビザ
その外国人の立場によっては、活動内容に関係のない在留資格をとることができることがあります。このような在留資格のなかにも、はたらくことができるものとそうでないものがあります。
活動内容に関係のない在留資格で、日本ではたらくことができるものには、たとえば、つぎのようなものがあります。
i. 日本人の配偶者など…日本人の結婚相手、日本人の子どもなど |
これらの在留資格があれば日本ではたらくことができます。また、活動内容に決まりもありません。まったく別の仕事をする場合にも、在留資格を変える必要はありません。
就労ビザの取得方法(しゅとくほうほう)
日本ではたらくための在留資格をとるために、実際にはたらく人かその代理人が日本の法務省に申請します。
在留資格の申請をするタイミングは、日本ではたらく予定の本人が日本にくる前、あるいはきた後の2パターンがあります。
ここでは、それぞれのばあいでの在留資格の申請の方法や流れについて説明します。
日本入国前に在留資格認定証明書(ざいりゅうしかくにんていしょうめいしょ)を取得する方法
日本の在留資格の申請は、日本国内でしかすることができません。そのため、日本にくる前に在留資格を申請するばあいには、すでに日本国内にいる人の助けが必要です。はたらく予定の会社の人など、代理で申請してくれる人をみつけられたばあい、つぎのような流れで申請をします。
正しくいうと、日本にくる前に在留資格をとることはできません。ですが、在留資格の取得に必要な審査をさきにすませておくことで、入国のときにスムーズに在留資格をえることができます。
そのためには、在留資格の審査がおわっており、在留資格がもらえる予定であることを証明する「在留資格認定証明書」を申請します。
【1】(本人・会社)必要書類の準備 申請に必要な書類をあつめ、日本にいる代理人へおくります。 日本ではたらく予定の会社に用意してもらう書類もあるため、それもお願いし、代理人へおくってもらいましょう。 【2】(代理人)窓口へ申請 書類があつまったら、代理人がその書類をもって窓口へ申請に行きます。 申請先は「地方出入国在留管理官署」か「外国人在留総合インフォメーションセンター」というところです。 日本にきてから住む予定の場所や、はたらく予定の会社の場所によって申請する窓口が変わりますので確認しましょう。 【3】(代理人)証明書の受けとり、もしくは不許可の説明 審査にとおれば、代理人あてに証明書がおくられてきます。 証明書は査証の申請や入国のときに必要ですので、本人が日本国外にいるあいだに受けとる必要があります。代理人から国際郵便でおくってもらいましょう。 もしも許可がおりなかったばあい、その理由をおしえてもらうことができます。代理人に窓口で理由をきいてもらいましょう。 書類が足たりない・まちがっているなど、なおせる部分をなおしたら、もういちど申請することができます。 【4】(本人)証明書の受けとり 国際郵便で証明書を受けとります。 受けとったら、査証の申請など、日本へいく準備をします。 |
証明書の審査には1〜3ヶ月くらい時間がかかるといわれています。日本ではたらきはじめる予定にまにあうように、はやめに申請するようにしましょう。書類のなかにはすぐに用意できないものがあることもあります。それも計算にいれておきましょう。
また、証明書には有効期限があります。証明書が発行されてから3ヶ月以内に日本にこないといけないため、それも含めて申請の時期を考えるようにしましょう。
日本滞在中の在留資格変更申請(ざいりゅうしかくへんこうしんせい)
すでに日本にすんでいる人の場合、「在留資格変更申請」をして、あたらしい在留資格を取得します。たとえば、留学生として日本にすんでいた人が大学を卒業して就職するばあいや、これまでの仕事とまったく違う仕事に転職するばあいなどがあてはまります。
この場合は、「在留資格認定証明書」をもらうことはなく、申請が許可されればすぐに在留資格がもらえます。
【1】(本人・会社)必要書類の準備 |
もしも不許可になってしまった場合は、不許可の理由をきいておきましょう。書類などをなおして、もういちど申請することができます。
在留資格変更の審査は、1〜2ヶ月かかるといわれています。あたらしい仕事をはじめるのにまにあうように、早めに申請するようにしましょう。あたらしい在留資格をもらう前にあたらしい仕事をはじめることはできないので、気をつけましょう。
まとめ
日本ではたらくための「就労ビザ」について、その意味や役割、取得する方法などを説明しました。
日本にながくすみ、はたらく外国人は、だれでもどれかの「就労ビザ」をもっている必要があります。それがなければ、不法滞在として罪になったり、強制送還といって、自分の国へおくりかえされてしまったりします。
もしも強制送還になってしまうと、決められた期間(5年など)は日本にくることができなくなってしまいます。
わざとではないミスでそのようなことにならないように、しっかりと決まりをチェックして申請するようにしましょう。