
国内の人手不足を補う手段として注目されている特定技能制度。16分野のうち[ビルクリーニング]も対象となっており、清掃業務に外国人材を受け入れる企業が増えています。
本記事では、[特定技能 ビルクリーニング]に関する制度概要、受け入れ条件、現状などをわかりやすく解説します。なお、特定技能外国人採用に関する疑問点はなんでもLinkusや特定技能アドバイザーにお尋ねください。


【概要】特定技能[ビルクリーニング]とは
在留資格[特定技能]制度の目的は、日本国内の人材不足の解消です。現場において即戦力として活躍できる人材であることが資格取得の要件とされています。
◆特定技能:日本国内における在留資格の一つ。
◆在留資格:外国籍の人が日本国内に中長期的に滞在する際必要となる資格。活動内容や就業の可否など様々な要件により種類は様々。
特定技能は、日本国内における人材不足の解消を目的として新設されました。特定技能の資格を有する人はどんな仕事でもできるわけではなく、従事する業種ごとに認定されます。特定技能の対象となる業種は現在16ありますが、これは日本国内において特に人手不足が深刻な業界とされています。ビルクリーニングもその一つです。
特定技能に関して詳しく書かれた記事はこちら。

特定技能[ビルクリーニング]の業務内容とは
ビルクリーニングの特定技能で従事できる業務は、先に述べた厚生労働省が示す「ビルクリーニング」の定義に準じた業務「ビルの内部の衛生環境や美観などを守るための清掃業務」です。
ビルクリーニングの対象となる建物はオフィスビルや商業施設だけではなく、居住を目的とした建物に関しても、専有部分以外はビルクリーニングの対象となります。マンションの共用部分やホテルなどの宿泊施設も含まれます。
また、ビルクリーニングの業務内容として宿泊施設のベッドメイクも含まれます。ホテルでの仕事については特定技能[宿泊]という分野で本制度を活用できると同時に、ベッドメイクについてはビルクリーニング業者がホテルから業務を請け負い、実際の作業を特定技能[ビルクリーニング]を取得した外国人材が行うことも可能です。特定技能[宿泊]についてはこちらも参考にしてみてください。

その他、ホテル以外でのベッドメイク(病院や介護施設でのベッドメイクなど)も、ビルクリーニング作業に関連する業務として従事が認められています
雇用形態や報酬など
ビルクリーニング分野において特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用するためには、直接雇用契約を結ぶ必要があります。派遣などの形態では受入れすることができないのでご注意ください。
報酬やその他待遇について、その業務に従事する日本人と同等もしくはそれ以上であることが求められます。特定技能は人材不足を解消するための取り組みです。足りない人材リソースを補うための制度であり、人材確保のコストを下げるための取り組みではないことを念頭に置いて採用・雇用を行なうことが重要です。
特定技能[ビルクリーニング]の試験について
特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を得るためには、(1)ビルクリーニング分野における技能があること(2)業務遂行に必要な日本語能力を有していることの両方を証明する必要があります。具体的には、次のように定められています。
- (1)ビルクリーニング分野の技能:公益財団法人全国ビルメンテナンス協会の実施するビルクリーニング分野特定技能1号評価試験に合格する
- (2)日本語能力:「日本語能力試験(JPLT)」においてN4以上のレベルに合格する、または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)(国外)」に合格する
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験の内容は、ビルクリーニングに関する知識と技術を測るもので、日本国内・国外の複数箇所で実施されています。試験内容はペーパーテストと実技試験の両方があり、清掃方法や道具、洗剤の選択などといった内容が出題されます。
ビルクリーニングの分野において技能実習を良好に終了している場合には(1)(2)共に試験が免除されます。(「日本国内でビルクリーニングに関する技能実習を修了している」=「ビルクリーニングに関する技術と知識を獲得できている」と判断されるため)日本語を用いて実習を修了できているのですから、業務遂行に必要な日本語能力もあると推定されます。
ビルクリーニング以外の分野で技能実習を修了している場合、(1)の試験免除を受けることはできませんが、(2)の日本語能力については試験を免除されます。
合格率や難易度について
受験資格は18歳以上であれば学歴・職歴不問で比較的間口の広い試験ですが、合格には一定の専門知識と対策が必要です。試験は年に数回、国内外で実施されており、直近の合格率は70〜80%前後とされています。
- 筆記試験:ビルクリーニングに関する基礎知識、安全衛生、用具の使い方など
- 実技試験:実際の清掃動作の正確性、時間管理、安全意識などを確認
一定の準備をすれば難関ではないものの、日本語での理解が求められるため、日本語レベル(目安:N4以上)も合格のカギと言えるでしょう。
受け入れ企業の要件と義務
特定技能外国人を雇用するためには、受け入れ企業側にも満たすべき要件やおさえておくべきポイントがあります。日本人の人材を雇用する場合と異なる点も少なくありませんので、雇用を検討している場合はできるだけ要件を理解し、不備のないように準備を進めることが大切です。特定技能所属機関に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。

建築物環境衛生総合管理業の登録について
ビルクリーニングの分野において特定技能外国人を雇用するためには、建築物環境衛生総合管理業に登録している必要があります。これは「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(略称:建築物衛生法)に基づいた登録制度で、ビルクリーニングの技術を担保し、ビルを利用する人の健康促進を目的として作られたものです。
実際に行うビルクリーニングの業務内容により1号から8号まで細かく分かれています。このうち、特定技能外国人を受け入れるためには1号「建築物清掃業」もしくは8号「建築物環境衛生総合管理業」に登録されていることが必要です。詳細は次の通りです。
- 1号「建築物清掃業」:ビルにおいて、床などの清掃を行う事業のこと。ビルの外壁や窓の清掃のみの場合は含まれないため注意が必要です。
- 8号「建築物環境衛生総合管理業」:ビル内の環境に関わる総合的な業務。ビル内の清掃はもちろん、空調設備や換気設備の運転、空気環境の測定、給水や排水に関わる設備の管理なども含まれます。
これらに登録されるためには、物的基準と人的基準、質的基準を満たす必要があります。(物的基準とは、その業務遂行に必要な機械や器具を有しているということ)例えば1号であれば真空掃除機や床磨き機、8号であれば空気の測定機器などが該当します。
人的基準とは、「業務の監督や実業務の従事にあたる人が、それを行えるだけの技能や資格を有している」ということです。指定の資格を有している、講習を修了しているなどの要件を満たす必要があります。
ビルクリーニング分野特定技能協議会の加入について
特定技能外国人を雇用する企業は、その分野における特定技能協議会に加入する必要があります。ビルクリーニング分野の場合、厚生労働省生活衛生課の設置する「ビルクリーニング分野特定技能協議会」がそれに当たります。
この協議会は、特定技能外国人ができるだけ安心してかつ安全に業務に従事することができることや、日本での生活において適正なサポートを受けることができる環境を整えるために機能しています。
Linkusの支援内容|在留資格申請・面接・生活支援まで
特定技能特化型の支援業務管理システム[Linkus]は、特定技能外国人の採用や雇用、自社支援を行う企業や登録支援機関向けにソリューションを提供しています。詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。

ビルクリーニング業界の現状
ビルクリーニング業は、その名のとおりビルの内部を清掃し、その衛生と美観などを保つための仕事のことを言います。厚生労働省によると次のように定義されています。
ビルクリーニングは、不特定多数の利用者が利用する建築物(注1)の内部を対象に、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保及び保全の向上
を目的として、場所、建材、汚れ等の違いに対し、方法、洗剤及び用具を適切に選択して場所別及び部位別(注2)の清掃作業(注3)を行い、建築物に存在する環境上の汚染物質を排除し、清潔さを維持する作業をいう。(注1) 住宅(戸建て、集合住宅等)を除く建築物をいう。
(注2) 場所別とは、玄関ホール、通路、トイレ、昇降機、専用部等の区分をいい、部位別とは、床、壁面、天井、立体面等の区分をいう。
(注3) 清掃作業のうち、日常清掃作業は、毎日1回以上等の頻度で行う作業をいい、定期清掃作業は、年又は月等の単位で定期的に行う作業をいう。
※ 当該職種・作業で技能実習を実施する場合、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)第12条の2第1項に掲げる登録
業種のうち、第1号の「建築物清掃業」又は第8号「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受ける必要がある。
引用:ビルクリーニング職種(ビルクリーニング作業)- 厚生労働省
ビルクリーニングの対象となる建築物に、「特定建築物」という枠組みがあります。特定建築物とは、「興行場、百貨店、店舗、事務所、学校等の用 に供される建築物で、延べ面積が3,000平方メートル以上 (小学校、中学校等は8,000平方メートル以上)のもの」。
厚生労働省の発表によると、ビル・建物清掃員の有効求人倍率は平成30年度には3.03に達しており、クリーニングの対象となるビルは増えているにも関わらず、それに対応するだけの人的資源を確保できていないのが現状です。こういった状況から、外国人材を雇用または雇用の検討をする企業が増えています。
参考:令和2年度実施施策に係る政策評価の事前分析表 – 厚生労働省
まとめ
ビルクリーニング業は、日本の社会と、それを支える市民一人一人を支える大変重要な産業ですが、人手不足が深刻化しています。こういった背景から即戦力となる外国人材採用が注目されており、それに伴って様々なサービスや法整備も進んでいます。ぜひ御社でも検討してみてはいかがでしょうか。
特定技能[ビルクリーニング]の採用や在留資格申請のご不明点はLinkusがお答えします。また、自社支援に関しては特定技能アドバイザーにぜひご相談ください。