兵庫県西脇市にある建設業「株式会社大曜」の専務取締役を務める斉藤洋三さん(45)。
建設業を近年最も悩ませているものの一つが「人手不足」だ。仕事は外で行われることが多いため夏は暑く冬は寒く、体力的に非常にキツい仕事というイメージは拭えない。そしてそのイメージが若い労働者を徹底的に遠ざけてしまっている。
「ハローワークなどに求人を出しても若い希望者はほとんどきませんね……。もちろんベテランの経験者も歓迎なのですが、長期的に会社を維持していくには若い職人をしっかり育てて長く働いてもらいたいんです。しかしこちらの希望とは裏腹に驚くくらい反応は渋いですね(苦笑)」(斉藤さん)
現場で元気に働く取引先の技能実習生との出会い
仕事は現場にさまざまな作業をする業者が集まって1つの工事を仕上げていく。そのため多くの同業者との繋がり、情報交換を普段から心がけることが大事だという。斉藤さんも多くの現場のつながりで必要な情報を得てきた。そこで3年前に斉藤さんが注目したのは現場で生き生きと作業をする“外国人技能実習生”だ。取引のある業者で実習を受けていた。
「『素晴らしい!』と非常に興味を持ちました。若さあふれる技能実習生がまるで現場の雰囲気を作っているかのように感じました。当社もあのような技能実習生を受け入れたいと強く思いました。」(斉藤さん)
斉藤さんは早速現場にいた同業者から教えてもらった外国人技能実習生を管理している監理団体に連絡を取り、自社でも外国人技能実習生を受け入れる準備を始めた。
親族一同の揺るぎない大黒柱となる
外国人技能実習生はすぐにやってきた。約3年前に来日をしたAlvin Cabralさん。祖国フィリピンでは自転車タクシーの運転手をしていた。月収は日本円で2万円ほど。(フィリピン人の平均月収は4〜5万円ほどだ。)それが「株式会社大曜」では技能実習生ながら基本給で20万円以上収入を得ている。残業代などを入れるとさらに収入は上がる。そして給料から天引きされる家賃は社宅のため2万5千円と格安だ。
「多い時は月に10万円前後、祖国に仕送りができる状態のようです。最初は『借金があるとか、1年半ほど前から続くコロナ禍で親族一同仕事を失った』と言っておりましたが、もはや親戚中の大黒柱となっているようです。そりゃあ以前の数倍もの金額を送り続けられるわけですからね。」(斉藤さん)
すっかり親族一同から頼りにされる存在となったAlvinさんだが、技能実習には期限がある。1年の実習を修了すると後2年期間を延ばし、技能実習2号として3年間日本で実習を受けられる。さらにもう2年最大で期間を延ばし技能実習3号として実習を受けることも可能だが、企業の外国人受け入れ実績や監理団体の種類などで技能実習3号の申請はできない場合もある。
[株式会社大曜]とその監理団体にとって残念ながら技能実習3号の申請は不可能だった。その時、延べ3年ある技能実習2号の在留期限はあと4ヶ月。Alvinさんと斉藤さんは手分けをしてインターネットで何とか日本に在留できる方法はないか必死で調べた。
在留資格・特定技能にたどり着いた
そこでたどり着いたのが2019年4月から始まった在留資格特定技能だ。建設業や農業など日本国内において特に“人手不足”が深刻になっている14業種において、外国人労働者を受け入れることが可能な在留資格である。
実習計画に沿って実習が行われるのではなく、企業の業務内容によって正式な労働者の仕事として業務が行われる。これにより企業はより「深い段階」「高い段階」の仕事を任せることができるのだ。技能実習生と比べて人件費は高くなるが、幅広く仕事に従事してもらうメリットの方が大きいと言われている。
(これだ!これでAlvinはあと5年、家族を支えることができる。当社としても3年間仕事を教えてきたAlvinにはもっと現場の大切な仕事を吸収してほしい。双方にとってこれほどいいことはない!)
斉藤さんは登録支援機関という特定技能関連の支援を行う団体に連絡を取り、早速手続きを開始。晴れて7月下旬、Alvinさんの【特定技能1号】は申請許可がおりたのだ。
「『やった!』と両手を上げてしまいました。申請のために集めた資料はとても多く、申請書類も莫大な量で本当に大変でしたが、諦めずに1つ1つこなしていきました。Alvinにはこれから5年間、現場の中心人物として、家族の大黒柱として、余すことなく力を発揮してほしいです」思い出しなら斉藤さんは思わず喜びのあまり両手を上げていた。
今日も現場でAlvinさんは屈託のない明るい笑顔を見せながら仕事に精を出している。
煩雑な書類管理のよきパートナー
特定技能の手続きは会社の【全部事項証明】や【納税証明】【役員の住民票】をはじめとして揃えるべき書類が非常に多い。原本が必要なもの、コピーでよいものも混在している。幸いなことに斉藤さんが依頼していた登録支援機関はLinkusで申請手続きに対応していたため書類管理に関しては助かることも多かったという。
Linkusの画面を見ると、必要な書類が全て一目で確認できるようになっている。また原本が必要なもの、コピーでよいものも記載されており、書類をスキャンしてLinkusの画面上からアップロード&保存することも可能だ。こういった機能は煩雑な書類管理のよきパートナーとなることだろう。