「ルールではなくカルチャー」離職率の高い業界で優秀な人材を確保し続ける社長の理念

インタビュー

少子高齢化が進む日本国内では人材不足が深刻化している現在、外国人人材の雇用を本格的に考え始めている方や企業も多いことでしょう。

外国籍の人と一緒に働いたことがない場合、ちゃんと働いてくれる?コミュニケーションは?課題は?工夫するべきポイントは?など、さまざまな疑問点や不安な点も拭えません。

そこで、技能実習制度を実際に活用して外国人人材を雇われている屋根・外壁のプロ『ヤネカベ』の代表取締役の大友健右さんにお話を伺いました。

「予想より遥かにエネルギッシュに働いてくれたんです」

ーー 本日はよろしくお願いいたします。まずは、『ヤネカベ』さんという会社について、大友社長から教えていただけますでしょうか。

私たちの専門は外装業で、住宅の屋根や壁のリフォームを行う会社です。グループ全体で社員は200名ほどで、営業、現場管理、事務業務を担当する者と、現場の職人とで大きく分かれています。実は現場の職人は20数名で、他は業務委託として社外の職人さんに協力いただいています。

業界全体でみると“職人の仕事”を選ぶ人材が減っており、離職率も高い傾向にあるのですが、弊社は有難いことに「職人の意欲が高い」という評価をいただいています。

通常は屋根や壁の工事は、元請け業者(ハウスメーカーや管理会社、不動産会社など)から下請け業者へ仕事が割り振られることが多いのですが、弊社は元請け業者として一貫したサービスを提供させていただいております。規模としては全国でトップ5には入るのではないでしょうか。

ーー ありがとうございます。「職人の意欲が高い」と社外から評価されるとおり、御社は人材育成に力を入れていると伺いました。何か意識されている点はありますか?

創業当時、11名しか社員がいなかったんです。資金も会社のブランド力もなく、人材募集をかけても応募はありませんでしたね。現在は少子高齢化が進み、どの業種も人材確保に苦労されていることと思います。我々の事業が人気業種ではなかったことで、いち早く人材不足という課題に直面し、解決してきました

そこから採用というマーケットにフォーカスしていくこと、ブランド力をつけていくことに対してチャレンジし続けてきました。そのなかで、「働かせてあげている」→「働いていただいている」という考え方に、早くからシフトしていました。

ーー 御社では現在ベトナム人の方を雇用していると伺いましたが、海外人材の雇用を開始したきっかけは何だったのでしょう?

一般的に現場の職人のお給料って、必ずしも高いわけではないんです。経費も多くかかるため、人件費を減らそう→低賃金で働いてもらいたい→「コストを抑えるために外国人人材を雇いたい」と考える会社さんも少なくありません。ですが、弊社はちょっと違います。

5年前に日本の専門学校を卒業したトアン君が、ご縁あって弊社に入社してくれました。彼が予想より遥かにエネルギッシュに一所懸命働いてくれたんです。

ーー トアンさん、大活躍ですね。

本当に感謝しています。ただ、彼は一人でベトナムから日本に来て働いていましたからさびしいかな?とふと思いまして。彼と「同じベトナム出身の人が会社にいたらいいね」という話しになったんです。そこで、トアン君と一緒にベトナムへ面接をしに行きました。

ーー トアンさんも現地で面接に同席されたんですか?

そうです。ベトナム語が話せるトアン君がいたおかげで、面接を受けに来た人たちは、わからないことを質問しやすかったのではないでしょうか。コミュニケーションが円滑だったかなという印象です。

入社前は会社も雇われた方も、お互いのことをよく知らないケースがほとんどだと思いますが、ある程度、お互いのことを理解して仕事が始められたと感じています。ちなみにトアン君のベトナムの実家へ行き、ご両親にも会ってきましたよ。

ーー トアンさんとのご縁が今の状況につながっているんですね。現在はベトナムの方は何名在籍されているんですか?他の国の方もいらっしゃるのでしょうか?

現在、弊社で雇用している外国人材の国籍はベトナムのみです。「コストをカットするために外国人人材を雇用したい」ではなく「がんばって働いてくれるトアン君がいるから、彼の出身国であるベトナムの人を雇いたい」という気持ちからスタートしていますので。人数はトアンと現場チーム5名の計6名です。

むやみに国籍を広げようとは思っていません。日本出身者もベトナム出身者も分け隔てなく接しており、仕事だけでなくプライベートの付き合いもあります。家族のようなコミュニティを心がけており、それが仕事へのモチベーションやスムーズなコミュニケーションにつながっているのではないでしょうか。

ーー 家族のようなコミュニティって素敵ですね。仕事のメンバーって関係性が硬くなってしまうと話さなくなってしまって、雰囲気が悪くなる…という悪循環に陥っている組織も多いですから。

日本は平和かもしれませんが、来日前の外国人の方からすると未知の世界ですよね。そんな場所で「働くぞ!」と覚悟を決めて来日している彼らは、働けることや家族的なコミュニティに迎え入れてもらえることに対する「ありがとう」の気持ちが強いように感じます。

私たち日本人が当たり前だと思っていることは、彼らにとって当たり前ではありません。だからこそ感謝をしてくれるし、それに対して私たちも感謝したくなる。それが仕事やコミュニケーションを通していい循環になっているのではないでしょうか。

ーー 育った環境や文化の違い、考え方の切り口が違う人間が一緒に生活をしたり仕事をしたりすることって、並大抵のことではないと思うんです。円滑なコミュニケーションのために、会社として行っていることはありますか?

ベトナム国籍の子たちには、会社の寮に住んでもらっています。新築の戸建てで、各メンバーひとりひとりに部屋があり、リビングもあります。そこには日本人の社員もいて、一緒に生活してもらっています。他には、普段からコミュニケーションをとることを意識したり、お互いの文化の面で配慮したりですかね。みんなでベトナム料理店へ行ったこともありますよ。

海外人材を雇用するうえで…というわけではありませんが、半期に一度、ホテルの広間を借りて表彰式を行っています。関連会社の皆さんも呼んで300名ほどの規模でしょうか。今日、インタビューに同席してくれているザン君も過去に表彰されていますよ。日本人もベトナム人も分け隔てなく働いてもらっている、というのが工夫している点です。

「ルールで縛っても表面的なコミュニケーションが増えるだけ」

ーー “分け隔てなく”って、実はとても難しいかと思うのですが、外国人人材を雇用するうえで、課題や問題点はありますでしょうか。

現状では問題にはなっていないのですが、日本人と外国人、というよりも外国人同士の人間関係もなかなか複雑かもしれません。日本人と日本人ならある程度予測できることもありますが、文化や育った環境が違う人同士の関係性は、私たちにはまだ知りえないことがたくさんあると思うんです。

現在弊社に在籍しているベトナム人の子たちは20代で、若くてエネルギーがあり、いろんな刺激を受けて変わっていく年代です。これは国籍関係ありませんよね。甘い誘惑にポンッ!と流されないよう、「自分にとって一番大切なものが何なのか」「何のために日本に来ているのか」若いうちは答えが出ないかもしれませんが、ぜひ学んでいってほしいですね。

ーー 社内で設けているルールや管理体制などはありますか?

管理しようとすると、体系化されたルールやしくみ、マニュアルが必要になります。僕はそれが本質ではないと考えています。カルチャーとルールがぶつかり合ったとき、カルチャーが勝つというのが僕の持論です。

例えば「してはいけないこと」をルールで定めると“しない人”が増えます。けれど、カルチャーを優先する“しちゃう人”がゼロになることはありません。ルールで縛っても本当の意味で管理できていないんです。表面的なコミュニケーションが増えるだけですよね。

それよりも、人をよく見る社員が多いです。組織を引っ張るリーダー的なポジションに立つ人ほど、本当によく見ていますよ。普段からしっかり人を観察していると、変化にすぐ気付けるんです。「いつもと違う」と思ったら積極的にコミュニケーションをとる、これがカルチャーとして根付いていると思います。

ーー 書類作成や情報管理はどの様にされていますか?

手続き関係は管理団体さんが行ってくださっています。弊社の役員が窓口になってやり取りをしています。事務的な内容に関してはお任せをしている分、弊社では各社員のパーソナルな部分にフォーカスするように心がけています。

ーー 技能実習や特定技能という制度が、今後どうなっていくべきだとお考えでしょうか?

法律や制度は「こうなったらいい」という理念が元になっているはずなのですが、制度が確立する頃には、理念が忘れ去られていることも多いように感じます。これはどんな業界にも当てはまることではないでしょうか。

同時に、実務に合わせすぎたり、誰かが利益を追求したりすることで、もともと理想としていたことからどんどんかけ離れてしまうんですよね。例えば、日本の技術を世界に広めるための“技能実習”という制度を、人件費を抑えるために外国人人材を雇うために利用する、など。その問題を解決するには、制度を活用する我々がよりよく活用して、より良い職場環境や関係性を築いていく必要があると思います。都合よく利用しようとする人が優位になってしまうことがないよう、理念を忘れないようにしたいですね。

「わからないことや困ったことがあったらすぐに質問できるんです」

ーー 実習生のザンさんにも質問をさせていただけますでしょうか。「日本に行こう」と思ったきっかけを教えてください。

もともとお金稼ぐのが日本に来た一番の理由でしたが、この会社に来てからそれが二番めになりました。今の日本にいる一番の理由は、この会社に貢献することです。

また、仕事を通して達成感が得られることも良いことだと思います。来日当初は日本語が理解できずに苦労をしましたが、社内の人たちが自分のためにいろいろとケアをしてくれて、本当に助かりました。家族のように親身に接してくれました。ずっとこの職場で仕事がしたいなと思います。

ーー 「ずっとこの職場で仕事がしたい」と言ってもらえる会社って素敵ですね。そんな『ヤネカベ』さんでのお仕事で楽しいこと、大変なことはありますか?

日本人の社員の方は親切ですし、熱心に仕事をするので、一緒に働けて楽しいです。大変だったことは、日本語でのコミュニケーションがスムーズにとれなかったとき、怒られたことでしょうか(笑)。あとは冬寒いことです。ベトナムの気温は低くても10度くらいなんですよ。だんだん慣れてきましたが、やっぱり寒いですね。

ーー 冬寒いですよね!そんな日本で生活するうえで困ったことはありますか

今のところは特にないです。会社の寮に日本人の方もいて、わからないことや困ったことがあったらすぐに質問できるので。すごく丁寧に説明してくれます。指をケガしてしまったときも、一緒に病院へ行ってくれて助かりました。

ーー 技能実習が終わった後、したいことなどはありますか?

今は目の前にある仕事をがんばりたいです。ベトナムにいる両親がお店を出したいというので、ゆくゆくはその手伝いをしたいなと思います。

「私たちのような関係性が、その扉を開くきっかけになったらいい」

ーー 大友社長、最後に一言いただけますでしょうか。

起業している方が僕のところに「人件費を減らしたい」「コストカットを考えている」といった相談にやってくることがあります。話を聞いて感じるのは、「安い労働力を確保する」ということを追求してしまうと、負のスパイラルに陥ってしまうということ。

それよりも、「雇う側も雇われる側も気持ちよく働くためにはどうするか」を考えたほうがいいですよね。そこで必要になるのがルールよりもカルチャーです。規則で縛るのではなく、自然なコミュニケーションでお互いに思いやることができますから。こういったことの積み重ねで、技能実習の制度がよりよく活用できるのではないかと思います。トアン君やザン君と私たちのような関係性が、その扉を開くきっかけになったらいいですね。

ーー 「ルールで縛るのではなく、自然とコミュニケーションが取れるカルチャーを育てていく」そんな会社さんだからこそ、いい雰囲気が漂って働きやすい環境が築けているんですね。「もともとお金を稼ごうと思って来日したけれど、入社してからは、日本にいる一番の理由が会社に貢献することになった」というザンさんの言葉が、『ヤネカベ』さんの素敵な社風を物語っていますよね。多くの企業や実習生がこういった状況だったらいいなと感じました。本日はお忙しいところ、貴重なお話を聞かせていただき誠にありがとうございました。

今回、取材をさせていただいたのは…

外装塗装専門の『ヤネカベ』
運営会社:プロタイムズ総合研究所
代表取締役社長
大友健右(おおとも・けんすけ)さん

大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。2010年10月、プロタイムズ総合研究所の前身企業の経営に参画、翌 2011年3月に府中店オープンとともに社名を株式会社プロタイムズ総合研究所に変更し、屋根外壁塗装工事・板金工事・防水工事などの外装リフォームの専門店として経営スタート。2020 年 7 月、サービス内容を顧客にとってよりわかりやすく、身近に感じてもらいたいという想いを込め2020年の節目に新サービスブランドとして『ヤネカベ』を立ち上げる。

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