
日本政府観光局等によると、2024年度のインバウンド消費額は過去最高の8兆円越えとなりました。この盛り上がりの一方で、人手不足や外国人採用に頭を悩ませている宿泊施設も多いことでしょう。
この記事ではホテルや旅館で外国人材を雇用する場合、どういった在留資格があるのか。また、どのような仕事内容を任せられるのかについて解説しています。なお、特定技能外国人採用に関する疑問点はなんでもLinkusや特定技能アドバイザーにお尋ねください。


宿泊業界の現状
まずは宿泊業界、特にインバウンド需要・市場規模についてと人手不足の現状について見ていきます。
インバウンド需要の状況
2024年6月の訪日外国人旅行者数は約314万人と、単月として過去最高を記録しました。

日本政府は「観光先進国」を目指し、2030年に6,000万人の訪日外国人旅行客の受け入れを目標に掲げています。宿泊業を含む観光業は、今後さらに盛り上がりを見せることでしょう。

宿泊業界での人手不足について
日本商工会議所・東京商工会議所によると、宿泊・飲食業において79.4%の企業が「人手不足である」と回答しています。

引用:「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」調査結果-日本商工会議所・東京商工会議所 2023年9月28日
この結果とは対比的に日本国内のインバウンド需要はコロナ禍後V字回復しており、人手不足はさらに深刻化していくと考えられます。しかしながら、少子高齢化が徐々に進んでいる日本国内だけで人材を確保することは困難な状況。そこで注目されているのが外国人雇用です。コロナ禍で海外からの渡航が減少していたものの、入国緩和措置により需要復活の兆しが見えてきました。特定技能等の制度の活用によって、若い働き手や日本語を活かして働きたいという若い人材の確保が期待されています。
特定技能外国人材採用の現状
2019年の特定技能制度発足当時、政府が想定した特定技能での5年間の合計受け入れ人数目標は最大34万5150人でした。出入国在留管理庁の発表では特定技能における在留外国人数は251,747人(2024年6月末時点)。業種別では飲食料品製造が70,202人(2024年6月時点 )と最も多く、宿泊業は492人(2024年6月時点 )でまだまだ伸び悩んでいる状況です。
宿泊業界で外国人材を雇用するメリット
外国人材の活用は単なる人手不足の解消にとどまらず、ホテル業界のサービス向上に大きな役割を果たしていくでしょう。
外国人材の採用による人材不足解消は質の高いサービス提供の土台となり、国内外の宿泊客に満足感を与えるだけでなく、日本の観光業全体を活性化させることにつながります。さらに、外国人材が持つ異なる視点や文化的背景は、ホテル業界に新たな視野をもたらし、国際的な競争力を高めることも期待できるのではないでしょうか。
外国人材雇用によるメリット具体例
◆人手不足解消:
従業員が不足している宿泊施設では、客室を満足に稼働させることは難しいでしょう。ホテルや旅館はただ眠るためだけの場所・滞在先ではなく、旅行者にとってくつろぎの場所となり得ます。客室内を整えておくこと、サービスを充実させることは空間作りの土台です。テクノロジーの進化によって予約管理やチェックアウト等が自動化できたとしても、利用者はスタッフによるサポートが必要な場面も多々あります。
◆インバウンド対策で売り上げUP:
人手不足という課題を解決し、客室を無駄なく稼働させ、館内の施設やイベント等を充実させることで売り上げアップが期待できます。そのためには人手不足に陥らないよう、しっかりと人員を確保する必要があります。
◆従業員のモチベーションUP:
日本へわざわざ働きにきている外国人材は、生活や母国に住む家族のために労働への意識が高い方も多いです。目の前の業務に打ち込む姿が他の従業員にも波及し、職場の雰囲気が良くなることも期待できるでしょう。また、外国人材を雇用する企業からは「日本以外の従業員との多文化交流も楽しい」という声もよく聞かれます。
各在留資格と任せられる業務について
ここからは外国人材に任せられる業務について在留資格別に解説します。
特定技能[宿泊]
フロント業務から予約管理対応、企画やPR、レストランサービス(ホテルが運営するレストランに限る)、客室清掃やベッドメイキングなど、全ての業務に従事することができます。フロント業務では、チェックイン・チェックアウトの対応や宿泊客の受付、観光案内を行い、レストランサービスでは配膳や接客、キッチン業務などを担当します。
特定技能[宿泊]について詳しくはこちらの記事も参考にしてみてください。

特定技能[ビルクリーニング]
ビルクリーニングの特定技能で従事できる業務は、ビルの内部の衛生環境や美観などを守るための清掃業務です。ホテルや旅館等のベッドメイクについてはビルクリーニング業者がホテルから業務を請け負い、実際の作業を特定技能外国人が行うことが可能です。
[ビルクリーニング]の分野において特定技能外国人を雇用するためには『建築物環境衛生総合管理業』への登録、および『ビルクリーニング分野特定技能協議会』の加入が求められます。特定技能[ビルクリーニング]について詳しくはこちらの記事も参考にしてみてください。

特定技能[外食]
ホテル敷地内のレストランで特定技能外国人を受け入れる場合、経営主体の業種が鍵となります。ホテルとレストランの経営主体が同じ場合(ホテル直営レストランの場合)、その業種は[宿泊]ということになります。この場合、特定技能[宿泊][外食]どちらの分野でも特定技能外国人の受け入れが可能です。ただし[外食]で雇用した場合は[宿泊]に該当するホテルのフロント業務等は任せられないので注意してください。
一方、飲食サービス業者などがテナントとしてレストランの敷地内で飲食店を経営している場合、経営主体は[外食]となります。この場合は特定技能[外食]でのみ受け入れが可能です。
特定技能[外食]について詳しくはこちらの記事も参考にしてみてください。

技能実習制度
技能実習は特定技能と比べて従事できる業務が異なります。技能実習制度では、実習計画に基づき業務内容が細かく設定されており、単一の単純作業ではなく一定の専門性を持つ複数の業務に携わることが求められます。宿泊業においては、主に客室清掃やレストランの補助業務や施設整備の業務に従事します。具体的には清掃作業やリネンの管理、調理補助や皿洗い、日常的なメンテナンスなどが該当します。
特定技能と技能実習の違いについて、詳しくはこちらの記事も参考にしてみてください。

技術・人文知識・国際業務
在留資格[技術・人文知識・国際業務]では 国際業務分野にあたる[通訳]としての在留資格で宿泊業に従事している外国人材が多いです。[通訳]の在留資格の場合、原則として通訳・翻訳 業務のみに従事することが求められており、基本的にはフロント業務における通訳対応や宿泊施設の案内・パンフレットの翻訳、外国語での接客マニュアルの作成・社内研修などに業務が限定されます。
まとめ
離職率の高い宿泊業界はインバウンド需要の高まりと共に、ますます深刻化していくと予想される人手不足。働き手が見つからず経営が困難になる前に、人材を確保して質の高いサービスを提供できるスキーム作りに取り掛かる宿泊施設が増えています。
[宿泊業]における人材確保の手段として、特定技能の活用を前向き検討してみてはいかがでしょうか。なお、特定技能採用は特定技能特化型のプラットフォーム『Linkus』が、自社支援に関する内容は『特定技能アドバイザー』がお手伝いいたします。ぜひご相談ください。