インフラの整備に欠かせない建設業は慢性的な人手不足に陥っています。国土交通省の発表によると、建設業就業者数(令和2年平均)は492万人で、ピーク時(平成9年平均685万人)から約28%減少。この現状で期待したいことは、日本国外の労働力です。新型コロナウイルスの影響で2020年から約2年間続いた入国規制が緩和された2022年。今後は新たな海外人材の受け入れに期待したいところです。
そこでこの記事では特定技能【建設業】で従事できる業務内容、資格取得条件、雇用形態、受け入れ企業に求められる要件などについて解説します。なお、特定技能の採用や在留資格申請のご不明点は、[Linkus]がお答えします。ぜひご相談ください。
建設分野の現状について
国土交通省の発表では、建設業就業者数(令和2年平均)は492万人で、ピーク時(平成9年平均685万人)から約28%減少しています。また、厚生労働省が発表している一般職業紹介状況によると、東京オリンピックに向けた建設ラッシュ時(2019年)よりも、2021年の方が建設技術者の有効求人数が高くなっています。反対に有効求職者数は減少傾向にあり、人材供給が間に合わなくなっていく未来はそう遠くはないと考えられます。建設技能工(建設・採掘の職業)に関しても同様で、有効求人数は増加傾向、有効求職者数は減少傾向にあります。
宿泊業や外食業は新型コロナウイルス感染拡大の影響で売り上げ規模を縮小した事業者も多く、有効求人数が下がったことも影響し、一時は有効求職者数が増えた建設業。しかし、日本への新規外国人入国規制が緩和されたことでインバウンドが回復傾向にあります。今まで停滞していた宿泊業や外食業をはじめとする他業種へと、求職者が流れることを視野に入れると、建設業の人材供給は急速に減少する可能性も考えられます。
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人手不足に陥る原因とは
建設業の人材不足の原因として考えられるのは、業界技術者の高齢化及び若年層の労働力不足です。国土交通省の発表では、建設業就業者は55歳以上が約36%、29歳以下が約12%で、実数ベースでは建設業就業者数のうち令和元年と比較して55歳以上が約1万人増加しており、29歳以下は増減が見られなかったとのこと。
日本で現在に至るまで使用されてきたインフラが老朽化してきており、その整備を行わなければならないため、人材不足解消は早急に取り組まなければならない課題です。現在、案件があっても労働力の不足が原因で工事の遅延が発生し、新たな案件への着手がどんどん遅れてしまう、という悪循環も発生しています。
参考:
・厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年5月分)について」
・国土交通省「最近の建設業を巡る状況について【報告】」令和3年10月15日不動産・建設経済局
在留資格「特定技能」とは
特定技能とは、日本に合法的に滞在できる資格(在留資格)の1つであり、特定技能の資格を持つ外国人は日本国内での現業労働が認められています。特定技能は、中小企業・個人事業主を中心に広がる人材不足の課題を解決するために2019年4月に施行されました。国内人材の確保や生産性の向上といった施策でも人材を確保できない一部の職種について、一定の専門技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく、というのが特定技能創設の趣旨です。特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり(2022年8月時点)、建設業は「特定技能2号」に移行することが可能です。
特定技能1号と2号の違い
特定技能1号は在留期間は最大5年までとなっており、原則1年ごとの更新が必要です。受け入れる企業や登録支援機関などのサポートを受けられるものの、家族の帯同は基本的に認められません。特定技能2号は更新することで上限なく在留できる他、条件を満たせば家族の帯同が認められます。ただし、制限が緩和する一方、特定技能1号と比べて2号は人材に求められるレベルが高く、他の建設技能者を指導したり、工程を管理するというように、熟練した技能や経験が必要とされます。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
---|---|---|
対象分野 | 12 | 2 |
在留期間 | 最長5年 (1年、6ヶ月、4ヶ月 ごとの更新 ) | 上限なし (3年、1年、6ヶ月 ごとの更新) |
支援計画の 策定実施 | 必須 | 不要 |
家族の帯同 | 不可 | 条件を満たせば可 |
技能水準 | 相当程度の知識又は 経験を必要とする技能 | 熟練した技能 (各分野の技能試験 で確認) |
日本語能力水準 試験の有無 | 有 | 無 |
試験の実施状況 | 国内外で実施中 (2022年8月現在) | 2022年に新設予定 |
永住権申請 | 不可 | 可 |
▼特定技能に関する詳しい内容はこちら
特定技能「建設」について
特定技能は、設定された技能水準以上の技術や知識、業務や生活に必要な日本語能力を持った外国人を対象とした在留資格です。即戦力となりうる人材のための資格であり、さまざまな要件や申請時の書類が多いのも事実。各分野ごとに異なった事項も多いため、ここからは特定技能【建設業】について詳しく解説します。
任せられる業務
建設業において特定技能外国人に任せられる以下の業務は1号と2号に共通しますが、2号は現場で建設技能者を指導すること、作業工程を管理することも求められます。
・型枠施工
・左官
・コンクリート圧送
・トンネル推進工
・建設機械施工
・土工
・屋根ふき
・電気通信
・鉄筋施工
・鉄筋継手
・内装仕上げ/表装
・とび
・建築大工
・配管
・建築板金
・保温保冷
・吹付ウレタン断熱
・海洋土木工
参考:
・国土交通省 建設分野における外国人材の受入れ
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001481316.pdf
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk3_000001_00003.html
特定技能【建設業】1号の取得要件
特定技能【建設業】1号の取得要件は、日本語能力試験や技術評価試験で、決められた水準をクリアすることです。
◆日本語レベルN4以上の試験に合格すること:
日本語能力試験N4以上、もしくは国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要があります。N4レベルとは「基本的な語彙や漢字を使って書かれた身近な文章を読んで理解できる」「ややゆっくりと話される会話であれば内容がほぼ理解できる」状態です。
◆建設分野特定技能1号評価試験に合格すること:
評価試験は学科試験と実技試験があります。学科試験は30問60分の真偽法、または2〜4択式で、合格基準は合計点の65%以上です。実技試験は業種ごとに異なります。試験の申し込みは一般社団法人 建設技能人材機構のwebページから可能です。サンプル問題やテキストもあるので参考にしてみてください。
技能実習からの移行も可能
建設業分野の技能実習2号から特定技能【建設業】1号へ移行することができます。その際に必要とされる主な要件はこちらです。技能実習の2号を良好に修了した海外人材は試験を免除されます。
・技能実習2号を良好に修了
・技能実習での職種/作業内容と、特定技能1号の職種が一致
特定技能1号は最長5年間の就労が認められているため、技能実習1号・2号・3号を組み合わせることで最長10年間日本で働くことができます。さらに特定技能2号に移行すると就労制限がなくなります。
特定技能【建設業】2号の取得要件
まずは特定技能【建設業】1号の認定を受ける必要があります。加えて、現場での経験を積むこと、建設分野特定技能2号評価試験に合格することで、2号の特定技能【建設】を取得することができます。
特定技能所属機関に求められる要件と注意点
特定技能【建設業】を取得した海外人材を雇用する特定技能所属機関(受入れ企業)になるための要件や注意点について解説します。特定技能の他の業種とは違う点もあるのでご注意ください。
▼特定技能所属機関について詳しい内容はこちら
要件について
要件を満たしておらず、かつ外国人技術者が不法就労とみなされた場合、入管法第73条の2第1項の罪により、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が課せられる可能性もあるためご注意ください。
◆[JAC]への加入:
特定技能の在留資格申請前に、[一般社団法人建設技能人材機構(JAC)]への入会が必須です。[JAC]の役割は特定技能外国人の適切な雇用を守るために設立された団体で、雇用のために人材紹介を利用する際は[JAC]を通して行います。特定技能【建設業】の採用で認められているのは直接雇用のみです。
◆建設業許可(建設業法第3条)の取得:
特定技能所属機関は建設業法第3条の許可を受けていることが求められます。建設業許可番号を建設特定技能受入計画に記載するほか、有効期間内の建設業許可通知書(許可通知書又は許可証明書)の写しが必要です。
◆建設キャリアアップシステムの事業者登録:
建設業振興基金が運営している[建設キャリアアップシステム]への事業者登録を行ってください。現場ごとに特定技能外国人の在留資格・安全資格・社会保険加入状況の確認が可能となるため、不法就労を防ぐことができます。建設キャリアアップシステム事業所番号(事業者ID)は計画書に記載しておきます。
◆海外人材に対する適切な支援:
特定技能制度を活用して海外人材を雇用するためには、定められた支援を適切に行わなければいけません。受入れ企業でサポートしきれない場合は、登録支援機関に支援業務を委託することができます。
注意点について
◆給料水準の検討、雇用条件の整備:
特定技能外国人と日本人労働者で、国籍や言語を理由として給料に差をつけることはできません。特定技能外国人の給料を決定する際には以下のことに留意してください。また、会社として守ってほしいルール等がある場合ははっきりと提示するためにも、社内規則・ルールを整えておくのがいいでしょう。
・勤続年数3年目の日本人労働者と同等かそれ以上の給料水準
・各地方労働局が発表している平均賃金から大幅に低くかけ離れていないこと
・技能実習生であった時よりも給料水準が高いこと
◆受け入れ人数の上限:
出入国在留管理庁の調査によると、2022年4月時点で建設業に従事できる特定技能外国人を6,360人受け入れています。特定技能【建設業】の外国人受け入れ予定人数は2019年から5年間で4万人ですが、受入れ機関ごとに受け入れ可能な特定技能外国人の数に限りがあります。受入れ企業(特定技能所属機関)の常勤職員の総数が上限とされており、社員が10人であれば特定技能外国人の受け入れ人数も10名が上限です。受け入れの際は注意してください。
まとめ
現在の従事者の高齢化と若手の労働力不足という課題を抱え、人材不足が加速していくと予想されている建設業界。今後は老朽化したインフラの整備も増えると見込まれており、海外の人材を雇用できる特定技能制度を活用しない手はありません。海外人材を雇用する企業は今後どんどんと増えていくことでしょう。【建設業】の特定技能採用・雇用は、特定技能特化型のプラットフォーム[Linkus]がお手伝いいたします。ぜひご相談ください。